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リュビの嫁  作者: KI☆RARA
リュビの嫁~自覚編~
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第11話



 終わってほしくない、と唇を離すことにためらうベルに、ジェラールは確かめるように、唇を強く押し付け、さらに自身の唇でベルの下唇を挟んだ。

 唇に当たる肌は、少しざらざらする。

(おひげ‥‥ぜんぜんないように見えるのに、ざりざりするのね。不思議)

 王子の舌がベルの上唇をぺろりと舐めた。習うように、ベルも王子の唇を舐める。まるで子猫のようだと、内心おかしかった。

 ベルの心と連動して、唇もほころんでいく。

 そっと開いた唇の隙間に、ジェラールの舌が滑り込んだ。

 それに応えているうちに、やがて二人はお互いの唇を深く探り始めた。

 次第に口づけが激しくなっていき、ちゅっちゅっ、と音のしていたのが、ときおり、じゅる、じゅぱっという音も混じるようになった。

 頭と頭がぶつからないようにとか、鼻が当たってしまうとかは、もう何も考えられなかった。鼻と鼻をこすりつけ、唾液で唇が濡れても、二人は夢中で相手の感触をむさぼりあった。

(こんなに気持ち良いものだったなんて。)

 腰をかがめる姿勢がつらくなり、がくんと身体が落ちる直前、ジェラールがベルの腰を両手で捕まえて抱き上げ、自らの膝の上に置いた。

 そして再び口づけが始まる。

 ベルはたまらない気持ちになり、ぎゅっとジェラールの背に腕を回した。手のひらに感じるシャツ越しの筋肉。張りのある滑らかな筋肉に、手のひらを這わせた。

 女性と男性の身体が、こんなに違うものだとは。

目の覚めるような発見だった。

 ふとジェラールが頭を引いた。ジェラールが驚いたような目でベルの様子を確認したことには気付かず、ベルは離れてしまった唇を追った。すると逆に荒々しく唇をふさがれ、ジェラールの大きな手がベルの身体のラインに沿って動き出した。

 右手はベルの背中を支え、背中をさすっていた左手が首筋をくすぐり、耳たぶを確かめ、そして再び首、肩へと下がり、わき腹をとおって太ももを撫でた。

 夢中で身体を探り合った。

 ベルの身体は、一体ジェラールの手にどのような感触をもたらしているのだろうか。ベルがジェラールに対して感じているような心地よさを、彼も感じていてくれているのだろうか。

(もっと、探ってほしい。)

 ベルは身体をぎゅう、とジェラールに押し付けると、身体をくねらせた。

(わたしのことを、探って、知って、発見して。)

 そう思う一方で、じわじわと不安が湧き上がってくる。

 このまま続けると、どこまでいってしまうのだろう。

 未知の領域に足を踏み入れようとしていることは分かる。このまま行けば、二度と戻って来られなくなってしまいそうな気がする。


 強く抱きしめたい。

 思いっきり突っぱねたい。


 相反する衝動に翻弄され、ベルの動きが鈍り、手は押し返すようにジェラールの肩に置かれた。

 そのことに気付いたのか、ジェラールがそっと唇を離し、ベルを肩に額を乗せてベルを強く抱きしめた。

 ここまでだ。

 はっ、はぁ、と甘い余韻に浸りながらも、心のどこかでほっとしているベルがいた。




 それ以来、ジェラールの顔を見ても唇にばかり目がいってしまう。

 ベルは熱くなった頬に手を当てた。

 今日ジェラールが帰ってくるまでに、頭を冷やさなければ。


 視界に入った左手の赤い宝石から目をそらし、ベルは裁縫箱のふたを閉めた。




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