表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Sweets Boy  作者: 矢沢零二
3/7

3話 フルチンの下痢男

歩いていると、チャルメラの音が聞こえた。携帯が鳴っている。

美藤さん。すぐに出た。喜んで。


「はい」

僕は言った。


「もう病院は出たの?」

美藤さんが言った。声が可愛い。

仕込みが終わっている証拠だ。


「出ましたよ」


「マサキさんが心配してるわ。トイレで。彼女と会えたのか?って」


「トイレ?また下痢ですか?」


「そうよ。ドアを開けたままね。もはや彼の特技と言えるわ」


「病院のみんなにバタークッキーを焼いて配ってたんです」


「それでこの時間?もうすぐ十六時よ」


「一人一人に配ったんで」


「ちょっと待ってて、マサキさんにそう伝えるわ」


「マサキさんにかわってもらえますか?」


「それが出来るんだったら、私が電話をしてないわ。彼は両手が使えないの。殺すなら今ね」


「なるほど」

僕は言った。電話の向こうで美藤さんの大きな声とマサキさんのか細い声が聞こえる。


「逃げ出したのかと思った、と必死に下痢男は言っているわ。フルチンで」


「逃げてませよ。新郎さんと会って、もうマンションの前にいますって、もうすぐちゃんと会うってフルチン下痢男に伝えて下さい」


「手ぶらじゃないだろうな?って下痢男は悲痛に心配しているわ」


「クッキーを持ってます」


「恩田くん、いったいクッキー何枚焼いたの?」


「四百枚ほど。昨日からずっと仕込んでたし、病院の厨房は大きかったから特に不便はありませんでした。栄養士のおばさんたちも手伝ってくれたし、仕事の勘も取り戻しましたよ。全てね」


「クッキー、私の分はあるの?」


「もちろん。下痢男の分もちゃんと」


「今夜はあなたの退院祝いよ。なんか食べたいのある?」


「いいですよ。そんな」


「私はあなたに助けられたわ。あなたは死ぬかもしれなかった。私が何を考えているかわかるかしら?」


「美藤さんの笑顔だけで僕は十分です」


「ふうん。そんなこと言うようになったのかー、恩田くんも。わかったわ。勝手に作っとく。そうだ。彼女は美人らしいじゃない。永作博美級の。あなたがちゃんと目を見て話せるか心配よ、私も」


「僕はいつも美藤さんと話しています。今もこうして。美人には慣れています。それに美藤さん以上なんていませんよ」


「その台詞を言わせたかったの。気が付いた?」


「ええ」


「早く帰ってくるのよ」


「Bタイムがはじまるまでには」


「私はまた腕を上げたわ」


「僕は知識が増えています。たっぷりと」


「いい喧嘩が出来そうね」


「僕はあなたに勝ってしまうかもしれない」


「私は手加減が出来ない」


「僕も同様に」


「ゾクゾクするわ。じゃぁね」


「では後ほど」

僕は言った。

目の前にブルー屋根のマンションがある。

見るからにお金持ちが住むマンションだ。

心配なんてご無用だ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ