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偽者

作者: pey

最後はハッピーエンドです………たぶん。

 私は、皆とは違った。


 別に人ではないとかそういうことではない。


 ただ、ズレていたのだ。


 皆の笑う所で笑えない。


 悲しむ所で……何も感じない。


 そんな私は生まれつきの孤独だった。


 そのことでいじめにあったことすらあった。


 だから私は嘘をついた。


 ばれそうになったら言い訳をした。


 その二つは徐々に私に馴染んでいった。


 楽しくも無いのに笑い、楽しいのに堪えた。


 本当の涙なんて流したことも無いのに、嘘泣きだけが上達していく。


 それなのに、全く悲しくなかった。


 自分のズレすらも嘆くことができなかったのだ。


 嘘を吐くのが下手だと嘘を吐き、身の危険を感じたら言い訳をする。


 悲しみも楽しみもない。


 虚無の中で、ただ客観的に演じてきた。


 私の過去は嘘で塗り変えられ、進む道は言い訳で作られていた。


 私はまるで、偽者だった。


 自分の偽者である私。


 こんな日常が嫌いだった。


 そして、こんな自分が嫌だった。


 その嫌悪感、それのみが私の感情だった。


 そんなある日、偽りの友人に連れられ、奴に会った。


 奴は、私を見た瞬間、驚愕で目を見開いた。


 別に可笑しい事ではない。


 表向きは完璧な私を見たものは皆この反応をする。


 それに、もし違う反応をされてもズレている私はなにも感じない。


 好意を寄せられたことも、そのことを告げられたことも、もう何度もある。


 しかしそれだけ。


 私の心は虚無なままだ。


 しかし、そのとき、私は奴に違和感を感じた。


 だが、私の心は虚無なままだ。


 そのとき、奴は言ったのだ。


「君は偽者だ。なぜ仮面を被っている?」


 と。


 私は、恐怖した。


 今までの生活が崩れることでも、嘘がばれることにでもない。


 奴の存在自体が怖かった。


 初めて感じる本能的恐怖。


 背中から首筋に虫が這い回るような寒気が走り、心臓が暴れる。


 手や足に汗が滲み出る。


 一刻も早くその場から逃げ出したかった。


 奴の目が全てを見透かしているような錯覚を覚える。


 気づくと私はその場から逃げだしていた。


 それから私は怯えて生活していた。


 そんな私を奴は嘲笑うかのような目で見下す。


 もう、我慢の限界だった。


 視界が真っ赤に染まる。


 心の奥底から怒りが溢れて来る。


 自分以外のものを憎むのはこれが初めてだ。


 私は、何の前触れもなく奴を殴り飛ばした。


 皆が私を驚愕の目でみる。


 しかし、そんなことは気にもせず私は吼えた。


 心からの怒り、本音を。


「お前は何なんだ!!なぜ、そんな目で私を見る?もうやめてくれ!!!」


 心からの叫びだった。


 いや、悲鳴だったのかもしれない。


 皆が奇異の目で私を見る。


 しかし奴は、笑っていた。


 やけに愉しそうな笑いだった。


 皆が不気味がる。


 しかし、私には、やけに優しげに聞こえた。


 子供を褒める父親のような笑いだった。


「それが、本当の君なんだね」


 奴がいう。


 頭が混乱する。


 しかしその言葉は、私の心にストンっと入ってきた。


 今まで、他人どころか自らすら入れずに覆い隠すしかできなかった心に意図も簡単に浸入してきたのだ。


 心が暖かい。


 知らぬ間に私は泣いていた。


 悲しみではない涙、嘘ではない泪を流していた。


「ねぇ、僕と友達にならないか?」


 奴が私に手を差し出す。


 その手は、私のズレの中にある、一本の芯の様だった。


 頭の中はまだ混乱していた。


 しかし、心はもう決まっていた。


 奴の手に私の手が合わさる。


 私は笑っていた。


 涙を流しながら、楽しげに。



なんか、衝動的に書いてしまいました。


似たような話はいっぱい有ると思います。

でも、書きたかったんです。


すみません。

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― 新着の感想 ―
[一言] 自分を抑え込んでいる感じが良かったです。 何も感じない虚しさと、それを分かってもらいたい気持ち。 心の動きが凄く伝わってきました。
[良い点] ストレートな文体で素の作者さんの体験なのかなと共感できました [気になる点] 「意図も」→いとも、などの誤字が少し気になりました [一言] 文学は衝動的なものがないと書けないと思います。だ…
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