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#15:リスタート!

 久しぶりに学校に顔を見せた真結花。

さて、クラスメイト達の反応はいかに…

 さぁ! 今日から久しぶりに学校だぁー。

何かが、心の中で吹っ切れたのか? 珍しく、朝から気分や体調は、すこぶる快調だった。

 あの事故の後、初登校した日に学校で倒れた俺は、結局、精神科医の判断で二週間近くも学校を休んでしまい、学校生活初日から、完全に出鼻を挫かれてしまった。

この休みの間に、心の中でもやもやしていた気持ちの整理が少し出来たのか?

気持ち的にも少し余裕が出てきて、ちゃんと勉強して、学校生活も楽しむぞ! っていう

前向きな気持ちに満ち溢れていた。

 

「ほんと、久しぶりよねぇー、こうやって、真結花と一緒に登校するのも」

「そうだよねぇー。わたしが休んでる間、鮎美ちゃんは、ずっとひとりで登校してたの?」

「うぅうん。真結花が抜けた後も、今日のようにさぁー、麻弥ちゃんと、途中まで一緒だったのよねぇー」


 実は、麻弥ちゃんから家での真結花の様子、毎日、聞いてたのよねぇー。

真結花を気遣う麻弥ちゃんの姿を見てると、もう、いじらしくって。


「ふぅーん、そうだったのね。麻弥ってそういうこと、全然言ってなかったよ」


 そりゃ言うわけないでしょ。毎日、私に真結花のこと、相談してたなんてさぁ。

ったく、姉思いのカワイイ妹よねぇー。あぁ、私もそんな妹が欲しいっ!


「まっ、いいじゃん。おかげで麻弥ちゃんとも、今までよりずっと親密になれたことだし、もう半分は私の妹みたいな感じ? 妹、欲しかったのよねぇー。毎朝、麻弥ちゃんと話してると、もうカワイクってさぁー、マジで欲しくなっちゃった」


 ほんと、『そんなに頑張んなくていいのよー』って言って、

ぎゅっと抱きしめたくなっちゃったんだから。


「ダメっ! 麻弥はわたしの妹だもん。鮎美ちゃんにはあげないもんねぇー」


 だって、麻弥はほんと姉思いの優しい子で、可愛くってしょうがないもん。


「おっ、やけにムキになるじゃない。さては、『姉と妹、許されぬ禁断の愛の巻き』だったりして」

「もぉー、鮎美ちゃんって、小説や漫画の読み過ぎじゃない? そんなこと、現実にあるわけないじゃん」

「そっかなぁー、世の中、広いことだし、可能性がゼロってことはないでしょ?」

「もしかして、鮎美ちゃんって、そっちの気があるとか?」

「あったらどうするの? 真結花は」

「ええっ?」

「私の正体、見たわねぇー、赤ずきんちゃん。ふふっ、覚悟しな! ガぉー。たべちゃうぞっ!」

「きゃあー。ヤメテぇー、オオカミさん。たすけてぇ~」

「ぷっ、あっはははっ」

「あはははっ」


 うん、真結花、元気そうね。もう、だいじょーぶみたい。




「おはよう、木下さん」

「おはよぅー」

「おっはよ!」

「おはよぅー」

「よう、おはよう」

「おはよぅー」


 んっ? 二週間も学校休んでたのに…

なんだかみんな、変わらず気さくに挨拶してくれる、不思議だ。

そう思っていたら、


「おはよっー、まゆまゆぅー」

 杏菜ちゃんが、駆け寄って、俺の正面から急にぎゅっ! と抱きついてきた。

「おっ、おはよぅ」

 あいかわずというか、なんというか。

「杏菜! またそうやって抱きついて、真結花が困ってるじゃん」

 またしても、鮎美ちゃんが杏菜ちゃんを、俺から引き剥がしてくれた。

「だって! まゆまゆが、二週間も学校休んでたし、学校に戻って来てくれて、スッゴくうれしいんだもん」

「そりゃあ、わかるけどさぁ、私だって真結花に抱きつきたくなる衝動、じっとガマンしてるってのに、あんたってぇ」

「ええっ! そうなの?」

 俺は、少し驚きながら鮎美ちゃんを見た。鮎美ちゃんは、バツの悪そうな顔をしていた。


 すると、その様子を見ていた智絵ちゃんが、急に会話に入ってきて、

「ええ、そうよ。そう思うのは、あゆだけじゃないと思うわよ。まゆかちゃんって、急に変わったもの。以前のまゆかちゃんならそうゆうの、想像できないのよねぇ。今のまゆかちゃんって、まるで、か弱い妹みたいにさぁー、何か、こう、『守ってあげたい、守ってあげなきゃ!』って思っちゃうの。しかも、クラスには、男女問わず、急にまゆかちゃんファンが増えたみたいだしね」


 智絵ちゃんまで? えっ? 何それ、“まゆかちゃんファン”って?



「なぁ? 友田」

「なんだ? 喜多村」

「木下さん、ずいぶん休んでたけど、元気そうだな」

「そうだな」

「んっ? どうした? 友田。元気ないな。お前、話し掛けなくてもいいの? 木下さんに」

「あぁ、何か、以前のように、気軽に話しかけられる雰囲気じゃないんだよね。今の木下ってさぁ、こう、妙に女の子女の子してるオーラが出てるから、どうも、近寄りがたいというか、調子狂っちゃうっていうか。今は、話しかけるきっかけも、話題も無くてさぁ」

「そっかぁ。それは仕方ないな。木下さんに過去の記憶がない以上、以前と同じような雰囲気や話題で接するっていうのは、確かに難しいだろうなぁー。まっ、そう気落ちせずに、気長に待つってことも必要かもな。時間が解決するっていうことも、あるわけだし」

「あぁ、残念だけど、喜多村の言うように、今は暫く様子を見て、そっと、傍らから見守ってるしかないよなぁ」



 キン~コン~カン~コーン♪


 ガラッ。


「は~い。座った、座った」


 手を叩きながら、吉澤先生が入って来た。


「起立、礼、着席」

 智絵ちゃんが号令を掛ける。


 なんか、二週間前と全く変わらない、あの事故後の初登校日を思い出した。


「さてと、ホームルームだが、今日は特に連絡はない。来週から中間考査だから、今週、最後の追い込みをやっておけよ。それから、当然のことながら、各教科で赤点取ったら、それぞれ追試があるので覚悟しておくように。おっと、それと、先週から飯島、今日から木下が学校に出て来ているわけだけど、勉強、遅れてると思うから、回りの皆はフォローしてやってくれよ。ホームルームは以上だ」


 うん、相変わらず、吉澤先生も変わってないよね。


「ねぇ、鮎美ちゃん。飯島さんって、わたしが学校を休んでる間に、休んでたの?」

「ええ、そうよ。あの子、事情はよく知らないけど、病弱なのか、学校、休む事が多いみたい」

「そう」

「あの子のこと、気になるの?」

「うん、なんとなくね」

 

 飯島莉沙子。そう、眼鏡をかけた、小柄で、大人しそうな感じの可愛らしい少女。


「じゃあ、次の休み時間にでも、声、掛けてみたら? 私、ああゆう大人しそうな子って、どうも、苦手なんだよねぇー。どう、接したらいいのか、わかんなくって。智絵は、よく声掛けてるみたいだけどさぁ。さすが、学級委員って感じ?」

「わたし、莉沙子ちゃんに声、掛けてみるね」


 やっぱ、真結花って、本質は変わってないのかなぁ?

性格はずいぶん大人しくなって、変わっちゃったけど、困ってる子見ると、ほっとけないたちなのは、変わってないようね。

 真結花って、不思議と人を引き付けるようなオーラみたいなもの?

なんか、そうゆうものがあるっていうか、一緒に居るだけで気が落ち着くのよね。

今思えば、昔っからそうゆう雰囲気、持ってたんだけど、

当の本人は、それに全然気付いていないみたいね。




「莉沙子ちゃんって、小説が好きなの?」


 授業の合間の休み時間に一人、ぽつんと小説を読んでいる莉沙子ちゃんの事が気になって、

さっそく声を掛けてみた。


「うん。真結花さんは、小説、好き?」

「わたしの部屋にも、小説、沢山あるよ。」

「へぇー、そうなんだ。私の第一印象と少し違うね」

「えっ? そうなんだ? どう違うの?」

「うん。真結花さんって何となく、文系じゃないような気がしてたから」

「そうなの? 何か面白そうな小説があったら、今度貸してくれない? 私の持っているのも貸すし」

「うん、いいよ。今度、私のお勧めの小説持ってくるね」

「ありがとう。でっ、あのさぁー、お昼休みなんだけど、お昼一緒に食べない? 他にも騒がしいメンバーが3人もいるんだけど」

「えっ? いいの?」

「うん、人数多いほうが楽しいでしょ?」

「ありがとう。真結花さん」


 莉沙子ちゃんって、どことなく、なにか陰があるような子に見えちゃうんだよね。

なんだか、俺と似てて、放っておけないというか。




 お昼休み、いつもの? メンバーに莉沙子ちゃんを加えた5人で昼食をとっていると、鮎美ちゃんが切り出した。

「あのさぁー、智絵。来週からの中間考査なんだけど、一緒に試験勉強してくれない?」

 鮎美ちゃんが両手を合わせて頼み込んでいる。智絵ちゃんはかなり頭がいいらしい。

まっ、学級委員やってるくらいだから。

「うん、別にいいわよ」

「じゃあ、杏菜もお願いするのダぁ」

「ええ、いいわよ」

「真結花もどう? ガッコ休んでかなり勉強が遅れているみたいだしさ」

 鮎美ちゃんが誘ってきた。

「それじゃあ、わたしも参加しよっかな」


 休んでいる間は、鮎美ちゃんの届けてくれたノートのコピーを自分のノートに書き写して、授業に遅れないよう多少の勉強はしていた。

しかし、中間考査となると話はまた別だ。


「莉沙子ちゃんも一緒にやろうよ」

 俺は莉沙子ちゃんにも声を掛けた。

「いいの? 私も」

「もちろん、いいに決まってるじゃん、ねっ? 智絵」

 鮎美ちゃんが確認を入れる。

「ええ、どーんと来なさいよ!」

「おっ、頼もしいお言葉、さすが神様、智絵様」

「おだてても、何も出ないわよ、あゆ!」

「あゆあゆぅー、たまには杏菜もおだててよぅ!」

「それはナッシング! あんたおだてたら、付け上がる一方じゃん!」

「そんなぁー、やっぱ、りさりさもそう思う?」


 杏菜ちゃんが莉沙子ちゃんに顔を向けて、“りさりさ”っていう呼び名が、

ようやく自分のことだと気付いたようだ。


「えっ? ごめんなさい。私、余りみんなと喋ったことないから、よくわからなくて…」

 

 急に、杏菜ちゃんから振られた莉沙子ちゃんが困ってる、助け舟を出してあげないと。


「杏菜ちゃん。莉沙子ちゃんは、このメンバーに入ったばかりなんだら、もうちょっと、慣れてからイジッてあげてね」

「うん、わかったぁー。りさりさぁー、これから杏菜をよろしくね!」

「いえ、こちらこそ、よろしくおねがいします。杏菜さん。それと、みんなありがとう。私も誘ってくれて」

「気にしなくてもいいって、ねぇ? 智絵」

「そうそう、人数多い方が楽しいし」

「よし、決まりね。じゃあ、誰の家で試験勉強やるかなんだけど、智絵ん家はどう?」

 鮎美ちゃんが、まとめに掛る。

「かまわないわよ。別に」

「じゃあ、今度の土曜日に開催しますか、智絵先生勉強会!」

「だからぁー、おだてても、何も出ないからね」




 午後の美術を担当する戸田先生。

彼女は眼鏡をかけ、デキル女的なオーラのある30歳半ば? の女性教師だ。

結構美人なのに、未だに独身ということらしい。もったいないなぁ~。

担任の吉澤先生なんてどうですか? 姉さん女房になっちゃうけど。


「莉沙子ちゃん、一緒に描こうよ」

「うん。ありがとう」

 暫くの間、モデルになってくれている生徒のデッサンを黙々と描いていると、

「真結花さんって、絵が上手いのね」

「えっ! そう?」

 集中していた為、莉沙子ちゃんが後ろから俺の絵を覗いているのに気が付かなかった。

「ホント、真結花の以外な一面を見た気がするわ」

 鮎美ちゃんも気になったのか? 俺の絵を覗きにきた。

「ほほぅ、確かに。おぬし、やるのうぉ」

 杏菜ちゃんも、興味本位でからかいにきた。

「確かに絵が上手いわね、まゆかちゃん。今度、絵を教えてくれないかしら」

 智絵ちゃんまで。

「んっ? どーれ、どれ」

 おまけに、美術の戸田先生まで俺の絵を覗いていた。


「ねぇ、木下さん。美術部に入らない?」

「えっ? わたしが、ですか?」

「そっ! 木下さんって、帰宅部なんでしょ? 絵の才能がありそうだし、私が見たところ、伸びると思うんだけどなぁー」

「正確には、帰宅部じゃあないんですけど」

「ん? 習い事とか、塾にでも通っているの?」

「まぁ、そんなとこです」

「そっかー。もったいないなぁー。じゃあ、木下さんの空いている日だけの部活でいいから、美術部に入らない?」

 ううっ、そこまで言われちゃうと、断り辛いよなぁ。

「ねぇ、まゆかちゃん。一緒にやらない? 実は私、いちおう美術部の肩書になってるの。でも、忙しくて、殆ど幽霊部員になっちゃってるのよねぇー」

 突然、智絵ちゃんがそう切り出した。

「えっ? そうなの?」

「うん」

「じゃあ、真結花さんが美術部に入るんだったら、私も入ろっかな?」

 莉沙子ちゃんが、そう言いだした。

「じゃあ、美術部に入るってことでいいかしら? 木下さんと飯島さん?」

 戸田先生が、まとめに掛る。

「えっ? まぁ、別に問題は無いですけど…」

「私は、真結花さんが入部するんだったら、ぜひ」

「じゃあ、木下さんと飯島さんは、美術部入部ってことで決まりね。後で入部届け、渡すから」


 あぁ、断り辛くて、成り行きで美術部に入ってしまった。

まっ、いっか。美術部は時間の空いてる日だけってことで。

 ようやく、吹っ切れたのか、元気を取り戻した様子の真結花。

でも、まだ乗り越えなくてはいけない問題も、これから出てくるのでしょう。


 次回につづく。


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