#10.5:届かないキモチ。
あぁ、真結花様ぁー。もぉー、何で私をそうムシするわけ?
今日こそはと思って、つい、ああ言っちゃたけどさぁー、
あんな事があったから、まだ許してもらえないのかなぁ。
でも、そうゆう冷たい真結花様も好きっ。私ってMなのかなぁ?
冷たくされても、まだ、好きなのよね~。諦められないのよ。
そう、あれは、入学式の時だったわ。
体育館前に貼り出されたクラス分けを見ようとした時、初めて真結花様に出会ったのよね。
「う~ん。男の子が多くて、よく見えないなぁ」
ドン!
「イッタぁ~い」
「ねぇ、あなた、大丈夫?」
「うん、ありがとう」
そう言って彼女は、尻もちをついた私に手を差し伸べてくれたんだっけ。
これが、真結花様との運命の出会いだったのよ。
「ちょっと、そこの君! 女の子にぶつかっておいてムシすんの?」
「そりゃ悪かったな。ワザとじゃない」
「そんなの、わかってる。まず、謝るべきじゃないの?」
「あぁ? だから、謝ってるだろ?」
「女の子は男の子と違って、デリケートなんだから、今度から気をつけてよ!」
「ったく、ちっちぇくせして、うぜぇ女」
「なによっー! だれがちっさいって? 失礼じゃない。謝りなさいよ!」
「ちぇっ、聞こえてたのかよ。あぁ、俺が悪かったよ。これでいいんだろ? じゃあな」
「ったく、何よ!あの子。最近の男の子って、ああゆう子が多いのかなぁ?」
「ありがとう。私、早坂友美茄っていうの。あなたは?」
「わたし、木下真結花。あっ、せっかくのおニューの制服、お尻、汚れちゃったね」
そう言って、彼女はハンカチを取り出して、やさしく拭いてくれたんだよね。
「あっ、そんなの、自分でやるのにぃ」
「だって、せっかくの入学式なのに、お尻、汚れたままじゃあ、笑われちゃうよ」
そう、この時よ。ずっキューンって来たのよ!
まさに、ハートを打ち抜かれたって感じ?
彼女、一見、か弱な感じで、大人しそうに見えるんだけど、堂々としてて、やさしくて、
スッゴく芯が強そうな感じ。
その可愛らしい顔からは、とても想像できない、その男の子っぽい性格とのギャップに萌えたの!
「真結花さんは、何組なの?」
「わたしは、B組。あなたは?」
「えっと、あっ、あった。残念、あなたと同じクラスじゃないみたい」
「そう。これも何かの縁だし、まっ、クラスが違っても、気軽に声掛けてよ」
「うん、ありがとう。またね」
「じゃあね」
あの後、私の中で次第に彼女への想いが募っていったわ。
毎日、彼女の顔が忘れられなかったの。
そして、出会ってから数日経った放課後、思いきって手紙で呼び出したのよね。
「あなたは、確か、入学式の時の早坂さん?」
「覚えてくれてたんだ? うれしいな」
「でっ、今日はどうしたの? こんな所にわたしを呼び出してたりして」
「うん、実は、こんな事言ってもいいのかな? 真結花さんに」
「どうしたの? 何か悩み事? 言って」
「絶対、私の事、嫌わないって約束してくれる?」
「うん、いいよ」
「じゃあ、言うね」
「うん」
「実は、私… 真結花さんこと… 好きなの!」
「えっ? なに? それって、友達になりたいってこと? それなら、別にかまわないよ?」
「だから、友達としてじゃなくて、恋人として付き合ってくれないかな?」
「えぇーっ! それって、どうゆう意味?」
「どういう意味って、そのままの意味よ。女の子が女の子を好きになっちゃあ、ダメなの?」
「ごめん。わたし、そっちの気は全然ないの。早坂さんのわたしへの好意は純粋だし、素直に嬉しいけど、その想いは受けられないわ」
「どうしてもダメなの? 真結花さん」
「ごめんなさい、早坂さん。わたし、普通のお友達としてなら…」
「そんなのダメ! 私、耐えられないもの!」
「早坂さん、泣いてるの?」
「ごっ、ごめんなさい、私、真結花さんに迷惑掛けるつもりはないわ」
「あっ、まってー、早坂さーん」
そう、あの後、学校で真結花様とすれ違っても、気まずいのか?
ムシされて続けて、暫く立ち直れなかったわ。
でも、今日、思い切って真結花様に声掛けたら、私って、ひねくれてるから、
ああゆう結果になっちゃったのよねぇ。
やっぱ、以前にあんな事言っちゃったから、まだ嫌われてる? 許してくれないよね?
でもいつか、きっと許してくれるって、私は信じてる。
報われない恋って、わかってるけど、私は密かに想っているわ。
もう贅沢は言わない。普通の友達でもいいの。
えっ? 過去に、こんな出来事があったんですね?
それにしても彼女、これからどうするつもりなんですかね?
次回につづく。