雨宿り中の少年少女、血を吸われる
時期は初夏、灰色の空の下、水田には苗が植えられ水が張っており、街道の桜の木は花が全て散って瑞々しい新緑の葉を付けていた。田畑と林がモザイクのようにあり、ある林の側に廃屋があった。
廃屋の壁には穴が空き、一部抜けた床は地面に落ちていた。その奥には裏山で熊や鹿の生き血を吸う恐ろしい獣が潜み、今日のねぐらとしていた。幸いにして今は静かに眠っていた。
制服を着た少年と少女が学校からの帰り道、雨の中を走り、近くの廃屋の軒下へと避難した。端正な顔や立ち振る舞いが高貴な雰囲気を漂わせる2人で。雨樋は外れており、2人の前には屋根から水が延々と流れ落ちて檻のようになっていた。
「大丈夫かな…?」
「そのうち弱くなると思うよ。それまで雨宿りして待とう」
「強い日差しは苦手だけど雨もね…曇りくらいがいいのに…」
風雨が壁や屋根を叩き、トタン板がやかましい音を立てていた。
「クラスの子が話しててさ」
「うん」
少女は話を始め、少年が相槌を打って続けた。
「新しくできたハンバーガーの店が大繁盛しているんだって。ハンバーガーってどんな味なんだろう?」
「さあ…僕も知らないから」
「皆が求めるからには美味しいんだろうな。食べられるなんていいな」
少女は寂しそうな目で遠くを見た。
「皆が羨ましい。食べられないなんて人生損してるって思わない?」
「…思わないな。…うーん、例えば石好きには欲しくなるような特殊な石でも興味ない人からはただの石ころじゃないか。ただの石ころを手に入れられなくて損しているとは思わないだろ?」
「そっかー…」
「僕たちには僕たちの、クラスの皆が味わえないものがある」
突如、奥から目を覚ました獣が穴から飛び出し、前足を上げて2人へ襲い掛かった。少年が腕を突き出して掌底を獣の肩当てると、その衝撃で獣はバラバラの肉塊となって地面に散り、泥や雨水と混ざっていった。
「だったらハル、血、頂戴」
少女は少年に抱き着き、目を細めて首筋に嚙みついた。そして牙を抜き、傷穴に唇を当てて血を吸った。
少年は抱き着く少女の手を取り、牙を立てて小指球を噛み、目を閉じて傷穴から血を吸った。
廃屋の屋根を伝う雨が作る檻の奥、少年少女が互いの血を取り込み、深く繋がり心が満たされていった。
雨が上がり、寂しさを払拭した少女と、少女の笑顔を見て幸福に包まれた少年は再び帰路に就いた。
なんだったんだ今の?え?説明なし?という一発ネタを書いて見たかったので。あと吸血鬼同士も書きたかった。
補足すると、この作品では彼らは日光も水も肌がそれらに弱いから苦手程度の弱点で昼間に行動して学校に通ってます。基本的に人間の食事は体が受け付けず血が食料です。




