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「ひっ、ひーッ!」


 四郎は腰を抜かした。


 わけが分からない。


 見たこともない生き物だ。


 叫び声を発する(さい)に開く口中にズラリと並んだ牙が、恐ろしすぎる。


「出てきたぞ」


 鉄男が怪物たちを指す。


「お前の話と違う」


「え?」


 異常な状況にもかかわらず、四郎は引き戻された。


「あ、あの…あれは、いったい?」


「コンピューターウイルスじゃろ」


 鉄男が、四郎をにらむ。


「い、いえ! あれはコンピューターウイルスじゃあり」


 そこまで言いかけた四郎に、獣の1匹が飛びかかってきた。


 無数の牙で、噛み付いてくる。


「ギャーッ!」


 四郎は絶叫した。


 鉄男が、いつの間にか右手に持っていた(なた)で、獣の頭を割る。


 闇獣は庭に落ち、動かなくなった。


「いくらでも湧いてきて、面倒じゃ。お前は、もう大丈夫と言ったのに、どういうことじゃ!」


 こっちが訊きたい。


 その後も、家に入ろうとする獣を、鉄男が次々と鉈で片付けた。


 しかし、減った数を上回る新たな闇獣が、(さく)を越えて現れる。


「早く直せ」


 鉄男が苛立(いらだ)つ。


「ここ、こんなのコンピューターウイルスじゃありません!」


 四郎は叫んだ。


 逃げたいのだが、腰が抜けて立ち上がれない。


「何じゃ。仕事放棄か?」


 鉄男の両眉が吊り上がる。


「お前たちがサポートする言うから、スマホを買ったんじゃぞ。ああ、あれか。お前、詐欺師か?」


「ち、違います! これはっ、これはスマホとは関係ないんです!」


 鉄男は四郎には答えず、庭側を見た。


 美しい月を、にらんでいる。


 と、月の上に黒い点がポツポツと現れた。


 否、それは点ではない。


 獣たちと同じ、闇が翼を持ったものが、こちらに飛んでくるのだ。


 10匹、20匹。


 庭の上に到達した飛獣たちの羽ばたく音が響いた。


 闇獣たちが、飛獣たちの叫びに呼応して鳴きだす。


 なおさら、わけが分からない。


 あまりの恐怖に、四郎は凍りついた。


「おー、おー。また増えたぞ、コンピューターウイルス」


 鉄男が鉈の刃とは反対側を右肩にかけ、庭に唾をペッと吐いた。


「毎晩、毎晩、これじゃ。もう、ご(たく)はええから、(はよ)うコンピューターウイルスを消せ」


「み、三好さん! だから違うんです! こんなのは、スマホとは全然、関係なくて! コンピューターウイルスというのは、こんなものじゃ」


「おー?」


 鉄男が、首を傾げた。


 四郎を、じーっと見つめる。


 恐ろしく冷たい眼差しだった。


「さっきから、()()の四の五の言うばっかりで、話が通じんな。お前、さては」


 鉄男が、腰を抜かした四郎の前に、仁王立つ。


 その後ろでは、闇獣と飛獣たちが嫌な叫び声を上げ、うじゃうじゃと(うごめ)いていた。


「そうか、そうか! 分かった、分かった!」


 鉄男の表情が晴れる。


「え?」


 四郎は困惑した。


 何が分かったというのか。


 こちらは、むしろ、さっぱり分からないのだ。


「お前、あれじゃろ」


「あれ?」


「お前も、そうなんじゃろ?」


「どど、どういうことですか?」


 嫌な予感がした。


 冷や汗が、ドッと出てくる。


「お前もコンピューターウイルスなんじゃろ」


「ええー!? そそそ、そんなわけないでしょ! いくら何でも」


 そこまで言った四郎は、息を呑んだ。


 鉄男の瞳が。


 闇獣たちを見るのと同じ眼差しが。


 ただ、真っ直ぐに、こちらを見ていた。




 おわり





















 最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)


 大感謝でございます\(^o^)/

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