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シンコウ  作者: わらうクジラ
フール諸島国編
7/12

☆アスワン☆

あけましておめでとうございます!


今週は日曜日も投稿します!

祭りも終わり、浮かれた心のままギルドの戸を思いっきり開けた。

 外れたドアが地面に倒れ込む。

 私は知らない。たまたまだ。経年劣化かもしれない。

 

「こんにちはー!」


大きく手を振りながらギルドマスターの部屋に入る。

 

「う、びっくりした……」

「イヤだなぁ。私が来るときはいつも突然だよ」


頭を抱えていたギルドマスターはクマのできた顔を私の方に向けた。


「それで? 何用ですか?」

「いいですよ、敬語なんて使わなくて。怖いです。……何用かって言われたらそれは遠征願いですよ」

「どこに?」


彼は机の上の埃をかぶった紙を引っ張り出した。


「あなた方への信頼はほぼ最大……と言いますか、あなた方を敵に回せないんですよね。ですので、国の重要遺跡である『泡歌砦』に出向いてほしいのです。私たちの信用の結果だと思ってください」

「いいよ、受ける。壊さなきゃいいんでしょ?」

「できる限り……。ですが、少しならず者が住み着いているようですのでその戦闘の際の損傷は大丈夫です」


ふ〜ん、と相槌を打つ。そこで思い出した。


「あ、そうだ。ワープポイントを作りたいんだ。ここで良い?」

「いいですよ、魔法陣とか────」


黒き炎が一瞬で空間を凍らせる。


「コレで良し」

「"良し"じゃないですよ!! どうなってんですか!?」

「開く前のワープ門だよ。私以外は壊せない」


混乱するギルドマスターを尻目に私は部屋から出た。




泡歌島。1週間も経ってない……はずだ。いかんせん太陽が無いせいで日付の経過が分かりづらい。

 ファーニンが言うには微妙に変わってるそうだが、まだ感じられてない。

 そう言えばあまり時計を見つけないのは"時間に縛られることがないから"なのかもしれない。

 

「アレ、また会ったね」


後ろから語りかけてきたのはシャウムだった。


「僕と会いたくなった? 泡ちゃんも居るんだね!」

「──泡ちゃん?」

「うん、そこの子のことだよ」


マニを指差してそう言った。


「これよりぴったりなあだ名ないと思うけど」


ケラケラ笑いながらシャウムはそう言った。 


「好きに呼べばいいよ。私は他者の評価に興味ないの」

 

マニは私に笑いかけてそういった。


「ふ〜ん、残念だ」


マニに対する興味を失ったのか私に視線をずらし、


「今回は何用で?」

「あぁ、泡歌砦に」


私がそう言うと驚いたのか少し固まって、顎に手を当て考え始めたようだ。

 そして少し経った後、小さく頷き、


「僕も行く」


泡ちゃんのこと知りたいし、と呟いたのを私の耳は聞き逃さなかった。

 およよ? もしかして!?

 姉として嬉しい限りである。そして再び8人の短く長い旅路が始まる。




石造りの堅固な砦の門は衛兵によって守られていた。


「僕だよ、僕。調査に来たの」


シャウムが門衛にそう言うと、門衛は槍の持ち手で地面を2回叩いた。すると2枚の大扉が開き出入りできるようになる。

 おぉ、と声が漏れた。


「お入りください」


小さく右手を上げて砦の門内に入っていく。私は小走りでシャウムに追いつき、問うてみる。 


「あなたすごい権力なのね?」

「まあ、泡歌島の担当長だからね。ほら行くよ」


シャウムは私の手を有無を言わさず引っ張って、さっさと砦の中に入っていく。

 砦の中は適度に人の手が入っていながらも少し古びた感じが残っている。

 もう一枚の門をシャウムの権限で解錠してするりと抜け、砦の建物内に足を踏み入れる。

 

「おうおう、おれらの縄張りに入ってくるなんてまた痛い目を見なきゃ気が済まんかぁ?」


なんだ、こいつ? 


「だからあたしたちをここに呼んだんですね……」


ザキルが呆れ顔でそう言った。

 

「え、じゃあ頼む相手間違ってないの?」


マニは『青鬼』を取り出して不敵に笑う。


()れ」


ならず者の言葉に反応して私たちの後ろから奇襲攻撃を仕掛けるならず者の部下たち。


「私、あなたにしか興味無いの」


朱色の雷を纏った短刀は無慈悲にも部下たちを殺めた。当の本人であるマリはせせら笑う。


「僕の見せ場は〜?」

「フザけるな。まだ居るぞ、姉ちゃんを返せ」


シャウムの言葉に重ねるように叫んだならず者は指が数本無いようだ。

 この国に来てから少し"黒き炎"の権能がなぜか増えたし、今ならコイツを飛ばすくらいならできる。

 

「いいよ、私、話聞こうか?」

「うるさい!」


ならず者の頬を掠るように空を殴り、空間の破片が飛び散る。勢いでならず者を空間に押し込んでそのまま穴を閉じる。シャウムの驚きの声は最後まで聞こえず途絶えた。

 思ったよりうまくできた。

 この場所は知らないけどまあ良いだろう。


「なにを、した」

「おもしろいね、君。実は私、気になってることがあってさ」


どこかの屋根上みたいだ。見下ろすと吸い込まれるような景色が広がっている。


「私、何人殺したのか覚えてないけど、初めてターゲットに興味を覚えた気がするんだ」


なるべく人のいい笑みを浮かべる。

 あとは私の演技次第。いつからか残り続ける胸のつっかえを誤魔化す。


「喋らないなら殺す。おいしくない食材には食欲がわかないもの」


炎を喚び脅す。


「────俺等は孤児院育ちだ。出たあともいろいろあってそんで……」


頭を掻きむしってから語り始めた。

 

「もういいや、帰りな」


私はそう言い残してまた砦に戻る。

 もう話の通じる奴は居なさそう……もとい、もう口を開ける状況の奴が居ない。

 

「だから言ったろ!? オリが自ら飛び込んだの!」


完全に理解した。私が拉致されたと勘違いしたのだろう。

 一つの死体が握る武器になぜか惹かれてその手から奪い取る。しゃがんだ姿勢から立ち上がって、

 

「……上行こう」


と言って返事も確認せずに階段を駆け上ったが、特に何もなかった。


「え、コイツラどうやって生きてたの?」


とマニが最もな質問をすると、


「泡の中にある程度の栄養素が入ってるから、食べるのは娯楽なの」


とファーニンが教えてくれた。私たちは思ったよりも成果に恵まれないまま帰路についたのだった。




ギルドに報告に行き、ある噂を耳にした。


「──泡替祭で革命派が一発かますそうだ!」

「声が大きい……! ほら、こっち見てるぞ、あいつ」


私のことかと驚いたが他の人のことだった。良かった、魔力感知の視覚を探知されたかと思ったぞ。


「何はともあれ」


パチ、と手を叩いて声が大きい方の男が会話は再開させた。


「俺ぁ今回の"泡替祭"は最後になると思うぜ」

「思っても俺以外に言うなよ? ったく、いつ政府の奴ら(イヌ)がみてるか分かったもんじゃねぇ」


面白い話を聞いた。

 

「祭り、参加しよう。私、すごい興味が湧いてきた」


一番分かってくれるであろうマリにそう言うと、簡単にその気になってくれて、彼女は祭りの料理のことを考え続けているようだ。


(──ん、んっ! 聞こえてますかぁ?)

(久しぶりだね、聞こえてるよ)


私がそう言うと魔力通話をしてきた堕霊(サタン)のサヴダシクが、


(ようやく繋がりました。魔力だと阻害されて繋がらないみたいなんで『黒き炎』で繋げました)


そんな事も出来るのか。


(そんなのはどうでもよくて、えっと、あれ、なんだっけ? あ〜、あ! 思い出しました。私も行こうと思ってたのです。連れて行っていただけないでしょうか?)


彼女はそういうなり勝手に私の中から飛び出してきた。

 

「あれ、昇格試験の時の子?」


ファーニンは私を盾にしながらそう言ってきた。


「そうだったね。そうだ、うん、一緒に行こう。護衛は任せるね」

「もちろんです。身勝手な願いをお聞き入れくださりありがとうございます」


サヴダシクは深々と頭を下げた。


「前回の祭りは呼ばなかったもんね。今回は面白い祭りではなさそうだけど」


サヴダシクという思いがけないお供を連れて祭りに参戦することになった。




「おかえりなさいませ、バス様」


家の執事が私に向かってそういった。

 ニヤニヤとしたその目つき遠くに見え隠れしているバカにした感情。

 飾られた花瓶の前で固まってコソコソしているメイドたちも、全部私をイライラさせる。


「それとも、今度こそ、お風呂にしますか?」


────その言葉に慌てて起きる。またこの夢だ。

 窓の外は真っ暗でも夕どきなはずだ。そろそろ祭りが始まる。

 荒くなった息を整えようと水を飲むが噎せてしまって全部口から漏れる。でもそれ以外の無音がただ、うるさくて。

 乾いた咳が口から飛び出す。やっぱりこの世界でも私は疎外される。

 手の甲で口を拭い、重い体をベッドから追い出す。

 泡のスリッパを履いて台所に向かう。台所の鏡に映る私を一瞬警戒して、スキルで水をかけてしまった。

 それを慌ててタオルで擦り取る。真っ黒な水を吸い取ったタオルはもう使い物にならなくなってしまった。

 ため息をついて蛇口から水を出し、顔を洗う。冷たいスキルの水が顔を一瞬覆って滑り落ちて、それでも諦めの悪い水滴が顎に掴まる。

 それをタオルで拭き取り、頬を一発叩く。少し赤くなって、ヒリヒリして、そのまま視線を落とす。

 年齢に合わないお気に入りの服にイラッとしてしまう。


「どうしたんだろ」


その独り言はマリが聞いていた。


「疲れてるんだよ。……武器をベッドに置くから」


彼女の手には私の『黒鬼』が静かに横たわっていた。


「あ……」

「はい、どうぞ」


マリは『黒鬼』を手渡して私の耳に口を近づける。かつて私が誰かにそうしたように。


「オリ、恥ずかしがらないで」


え、という音は颯爽と去っていったマリには届かなかった。




清歌の剣盤(アスワン)


重く、大きく、湾曲した剣の武器。東夢器の一つ。

 剣を振るう度に美しい音が響き、人を裂く時に血を食らう生きた武器。

 アスワンは神の墓場の国の一つである『秘匿の国』に住まうそうだ。

 一人の鍛冶師は『妖器』を作り出し、なお飽き足らず鍵を作った。

 気味の悪い夜だって、二人でいれば怖くない。だから私は忘れない。

今日も元気に!────泡を伝達する者 スプーマ



真実という空気を内包してる────泡の実 ヘーレ

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