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シンコウ  作者: わらうクジラ
フール諸島国編
16/19

☆捕虜救出・オリヴィア視点、マニ視点前編☆

敵将が握っている武器は暗いこの世界によく映える。

 ていうか、"非殺傷封印"とか言ってたな。もしかしたらこの世界ではスキルにその封印をかけるのが決まりなのかも。

 それ良いな。それがあったらスツェーナ大陸でそれを義務にできたのに。

 仕方ない、私も敵兵がスキルを使うまでは我慢しよう。


「どいつもこいつも使えねぇな! 皆俺の活躍を邪魔する!!」


敵将はそう叫んだ。なんなんだ、こいつ。

 ヴェレーノは『赤鬼』で最後の一兵を倒す。たぶん洞窟内にも残兵は居ないはずだ。居ても問題はないが。


毅漸(スキル) 主様に永遠の誓いを(ベンメルケズジ)!」


氷の槍が空から降り注ぐ。そのすべてが美しいくらいに透明だ。


「ふざけんな!」


そう叫んだのはギャチだ。

 そうか、他の人はスキルの対処をあまり知らないのかもしれない。

 

灰化能力(スキル) 黒・料理屋(ヤーガダ・メゼ)


私は冷たい炎で氷を叩き割る。

 

「助かりましたわ」


小泡(シャオ・パオ)がそう言ってくれた。


「やるな、お前! ワッハッハ! おら、俄然やる気がわいてきたぞ!!」


リートはハンマーを握って空に浮く。

 そのまま重力を利用して急降下するが、敵将はそれを既で避けた。ズドンッと大きな音と衝撃が走る。


獣力(スキル) (リーチ・)・焰刃(アフェクション)


ヴェレーノがそう唱えると、仲間の武器から白い炎がエンチャントされた。


「ありがとうございますわ」


小泡(シャオ・パオ)は白く燃える武器で一気に詰め寄る。それに逃げる敵兵はちょこちょこ無詠唱の氷の礫で邪魔をしている。

 リートもハンマーを持って飛んで追いかけているが、少し速度が足りてない。

 ボーリャは炎の剣で攻撃を繰り返している。

 ギャチは私のところに来て、


「俺とコイツで先洞窟入ってるわ」


と言ってヴェレーノを連れて行った。

 私はどうしようかな。もう少し敵のスキルを見ておきたい気もする。

 一つのスキルに一人の神が居るらしいから、知っておいて損はないだろうし。

 でも、尊敬されたいな。なんか気分が乗ってきた。

 っていうか、さっきの攻撃スキルだよな。よし、コレで私はコイツをスキルで殺せるというわけだ。


「最後くらいは半神(カミ)の尊い力で逝くと良い。神ノ恵技(スキル) 掃除屋」 


右手に呼んだ風のタネを息で吹き飛ばす。敵将にある程度近づいた時にそれは破裂して散り散りに飛ぶ。


毅漸(スキル) 主様に永遠の誓いを(ベンメルケズジ)!!」


スキルで対抗してきたが、私のものには及ばない。

 小泡(シャオ・パオ)の一撃で完全に勝利したのだった。

 ホクホク顔で私は鎌を手にする。

 うむ、とてもかっこいい。武器なんてあればあるほど良いからね。

 ほかの人にはあげない。今までの人生のなかで鎌はずっと私の手元に訪れなかった。

 ふふ、"悪魔の子 オリヴィア"ここに見参、である。


(愉しそうねぇ、オリちゃん)

(うん、楽しい!)


さすがに鎌は扱いが難しいから早速使うことはできないが、帰ったら早速練習しよう。


「かぁーっ! はっはっは!! 嬢ちゃんロックはずれてんじゃねぇか!! そのままで良い、面白いヤツは多けりゃ多いほうが良いからな!! 良ぅし、早速洞窟行こうぜ!」


ハンマーを担いで、リートは洞窟へ歩き始めた。


阿莉(アー・リー)、行きましょう」


そう言われて私は振り向いて、


「ボーリャ、あなたも」


そう呼ぶ。すると彼は剣をしまい微笑んだ。


「そうしましょう」


大人臭い彼は本当はもっと幼い。だから彼は、カミに弱いんだ。




真っ暗な洞窟の中はボーリャのスキルに照らされて不穏な明るさを帯びる。

 

「洞窟は初めてだぜ! 冒険者みてぇでわくわくするな!! はっはっは!!」


リートの笑い声が不気味に響き渡る。

 

「声大きいよ」


ボーリャが少し震えた声でリートを注意した。

 だが、リートの大きい手のひらでボーリャは背中を叩かれている。 


「おら達が居るんだ、ドンと構えろ!! はっはっは!」

「だから……」


呆れたボーリャは諦めて、少しずつ前に進むことに集注する。


「私が前行こうか?」


そわそわしてきてそう提案してみると、


「オリヴィアは後ろにいると良い。女子供を守る騎士だからな!!」

「分かったから」

「おぉ? つれないなぁ!! はっはっは!」


鬱陶しくなってきたのか、適当な返事をしているボーリャに絡みまくるリートは心底楽しそうだ。


阿莉(アー・リー)、近いですわ」


小泡(シャオ・パオ)がそう言ったから私は一応警戒モードに入っておく。

 

「……て……けて……助けて……助けて〜!」


その声はヴェレーノだな。何やってんだ?


「ヴェレーノさんの声ですね。急ぎましょう」


ボーリャの提案と同時に駆け足になる。

 すぐに見つけた。罠の底に。


「──助けなくて良いんじゃない?」

「そんな蔑んだ目で見ないでよ〜! 飼い主(オリヴィア)様!」


私はしゃがんでのぞき込む。

 底の深い落し穴だ。さっき地面にあからさまなボタンがあったからそれを踏んだみたいだ。


「俺からも頼む!! 助けてぇ……」

  

底に白い炎が見えるおかげでまだ分かるがこれ降りるのめんどくさ。


「私が助けたら貸し5つね」


今の瞬間のヴェレーノの表情は想像するに容易い。


「おらには無理だ!! オリヴィアに頼むんだな!! はっはっは!」


さっきて見た感じ、彼のような重い体を浮かせるには助走と段差がいるみたいだ。


「息留めてね。いくよ、神ノ恵技(スキル) 掃除屋」 


透明な水を喚んで穴を一瞬満たす。

 二人して浮かんでくる。


「ゲホッゲホッ……。ちょ、水量が……」


ビショビショの2人は水を飲んでしまったようだ。


「これ終わったら六人でご飯食べに行こうか。もちろんギャチの奢りね。その後の宿泊費はヴェレーノが負担するわ」

「はっはっは! 恐ろしい嬢ちゃんだぜ! 気を付けないとな!!」

「けほっ……これって貸し何個分でしょうか……」


ギャチが身を震わせながらそう聞いてきた。恐怖ではないだろう、寒さだ。間違いない。


「1個分にカウントしてあげる。ほら行くよ」


肩を落としたギャチを置いて洞窟を進んでいく。


「助けが来たぞ!!」


直ぐにその声といっしょに檻が見えた。かなり杜撰な出来の檻だが、電気が流れているようだ。


「離れて」


私はそう警告して直ぐにスキルで檻を分解する。


「ゆっくり逃げてね」


私はスキルでゲートを開く。

 捕まっていたのは大体15人くらいだ。1人を除いて子どもを含めた全員が衰弱していた。

 リートはその大柄な身体で一度に三人運ぶという器用さを見せつけ、私以外はみな二人ずつ運んでいった。

 

「あ……りがとう……」

「無理しなくていい」


私は少し蹌踉めきながらおじいさんを背負う。

 私にもお祖父ちゃんがいたらこんな感じなのだろうか。

 そんな淡い感情のまま洞窟の捕虜の救出劇は幕を閉じたのだった。




──マニ視点──




集合場所にいる、只者ではない人が一人。名簿を見た感じ、彼女の名前は、高波(たかは) 氷茉(ひま)さんだ。

 異質な服装と、不思議な名前。いや、その服は一度見た。

 祭りの時だ。『隊蟹祭』のときにファーニンが来ていた服と酷似している、気がする。

 少し長い袖と、歩くたびに乾いた音が鳴る靴が証拠だろう。木でできている履きにくそうな靴。

 となると、ルナトの人かな。

 咳払いをして、話しかけてみる。


「こんばんは……。氷茉さん、ですよね?」


すると彼女は振り返る。


「そう、我が氷茉。何用だ、マニューバ?」


サラサラの黒い髪の毛が暗い世界によく映える。名前を全員分覚えているのか、すごいな。

 私は今回の人数全員分暗記するのは諦めた。

 

(暗記、ですか)


カオスが疑問を呈してきたが無視させて頂く。


「あれ、出てきたんだ」

「やはりバレてたのか。いつからだ」

「んー、もみじちゃんが浴衣を送ってくれたでしょう? その時くらいから」


ファーニンと氷茉が会話を重ねていく。


「大方、もみじのお節介でしょう?」

「あの方は貴方を守りたくお思いだ。残念ながら、我はあの方のご命令(お願い)を果たすまでは帰れぬ」


ファーニンがそう言うと頷いた氷茉はそう言った。

 っていうか、その腰に刺しているのは片刃剣だろうか。

 私が持っているものとにている気がする。


「会話に割って入っちゃって申し訳ないんだけど、その武器って……」


私は『青鬼』を喚んで見せる。

 やはり格好いい剣だ。お姉ちゃんとお揃いなのが特に良い。だって、武器の上では同じだから、比べやすいもの。


「『青鬼』……」

「知っているの?」

「ああ、『青鬼』というのは怒りと憎しみの化身でな。よく似ておる」

「はぁ!? どういうこと!!」


私は詰め寄る。失礼しちゃうわ、この女。


「しかし、()い鬼だ。安心しろ」

「憎しみの化身が善いわけないでしょ!」

「ふっ、元気なやつだ。考えてもみよ、憎しみは最も純粋な感情だ。故に人を狂わせる。だから善いのだ」


何を言っているんだ、こいつは。


「そう言えば、オリヴィアとやらは()らんのか? アヤツが宿す堕霊(サタン)に興味があるのだが」

「お姉ちゃんなら向こうのチームだよ」


そう言うと彼女は少し残念そうな表情をした。


「残念だ、主様が堕霊(サタン)の研究をしたいと仰っていた故、お役に立てるかと思ったのだが」


そう呟いて、前を向く。私たちに反応するような間はなかった。


「作戦会議が始まるようだ。君たちには必要だろう。行ってくるといい」


そう言うと氷茉は濃い煙とともに消えてしまった。


「変な人だったね……」


黙っていたへーレがそう言った。

 その返事はしないことにする。盗み聞かれてそうだったから。




虹牙(こうき)冥誉(めいよ)

武器種:サイス


派遣軍の軍将、マタナの得物。漆黒の鎌は、傾け方によって虹色に見え、とても美しい。

 興毅官(こうきかん)の部下であったマタナは傲慢で、恐怖による指揮で統率していた。

 最後の慈悲と、世界からの批判を背負わせるために解除されたことに慢心し死んだ。

 もしかすると、私にも似合わないのかもしれない。それでも良い。復讐に燃えている私でも愛してくれた仲間がいるのなら。




葬舞刀(そうまとう)

武器種:カタナ


冬の月の守り手である、双刀剣士氷茉の得物。冷たい炎の刀身を持つ。

 芸術の国、ルナトで生まれた彼女は満霧(みちぎり)家の剣士から殺しの術を学んだ。

 強き者を倒すこと、それは相手の集中力を早く削いだことだ。そのためには相手を惑わせればいい。

 だから彼女は美を磨く。そんな彼女の人間性ゆえに強い。

 私が気にかけることのできないことを、気にかけているから。



 

浄夜刀(じょうやとう)

武器種:カタナ


冬の月の守り手である、双刀剣士氷茉のもう一方の得物。淡い赤の刀身を持つ。

 秋月家に仕えていた彼女は主様を助けた少女を助けることを命じられて歌国にやってきた。

 (つぼみ)、私の代わりに恩人を助けてきて。

 そう命じられた彼女は健気に主様の恩人を助ける機会をうかがっていた。

 その機会はもう訪れることはない。私がいる限り。

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