POMの助、相方を得る
〈繰り返し晩秋の目醒め惻々と 涙次〉
【ⅰ】
君繪とそのボーイフレンド(?)、三笑亭POMの助との對話。
(POMちやん、テレビはまだ決まつてないの?)-(ボク、キューチャン)-(ネタに逃げるところを見ると、まだなのね)-(君繪ちやん、だつて仕様がないよ。僕の藝は余りに刺激的過ぎるつて、某局某プロデューサーが。師匠が木久扇師匠みたいに、藝能プロやつてるなら兎も角)林家木久扇師がその所属事務所・トヨタアートなる藝能プロダクションを自ら經営してゐるのは有名な話。(あらわたしの予知能力では、相方付けて漫才やつてるPOMちやんが見えるけど。テレビで)-(本当? 夢太夫師匠に提案してみてよ。僕から云つたんぢやまともに取り合つて貰へない)
【ⅱ】
と云ふ事で、カンテラ經由でその話、夢太夫に傅はつたのだが。「落語家が色物かあ。まあPOMの助らしいかな」-「師匠、相方だうするんだ?」-「夢雀がいゝだらう。奴もわざわざ大阪から出て來て、上方弁で江戸前の落語演るつて一時評判だつたけど、その後一向に芽が出ない」
【ⅲ】
と云ふ譯で、「三笑亭夢雀・POMの助」なるコンビが結成された。勿論ツッコミに夢雀、ボケはPOMの助。まづは寄席の前坐から-「こんちは。三笑亭夢雀でーす」-「ボク、キューチャン」-「のつけから九官鳥かい。けつたいなやつちやな。こいつ本当はPOMの助云ひまんねん。鸚鵡の噺家。よし、九官鳥で何かやつてみろ」-「ボク、キューチャン。オヂーチャン、オバーチャン、まざあふあつかー!」客・ざわざわ-「あ、それ駄目や云ふたろ。師匠にまたどやされるで」-「夢太夫、まざあふあつかー!」客・げらげら-「頭痛た。こいつこれでもテレビ-『笑点』出たい云ひますのや。よし、POMの助、大喜利を想定して、謎掛けやつてみろ。お題『鳥』な」-「鳥と掛けて、今どき珍しいぼつとん便所と解く」-「汚つたないな、もう。で、その心は?」-「どちらもハネ(羽根、跳ね)があります」客・げらげら‐
※※※※
〈思ひ出よターンテーブルに蘇れ僕はいつでも靑二才の儘 平手みき〉
【ⅳ】
とまあ、ウケるにはウケたが、テレビ出演には結び付きさうにない。当面、寄席で修業、と云ふ事に- なつたかと思ひきや、或る藝能プロダクションから思はぬ申し出があつた。「惡魔商會」なる新興プロが、夢雀・POMの助に聲を掛けて來たのだ。テレビ出てみないか‐ と。「惡魔商會」は、その名の通り、惡役俳優や毒舌藝人、惡役女子プロレスラー、惡魔を名乘るロックバンドなど、「魔的キャラ」で賣る者らを集めたプロダクションだと云ふ。結構大規模である。「良かつたやないか、POM」と相方は云ふが、君繪から【魔】の事は訊いてゐたPOMの助には、素直に喜べない。師匠・夢太夫も澁い顔。「こゝは一つ、カンさんに調査を依頼するか」
【ⅴ】
「テオ、データではだうだい?」-「バックにさる魔界の大物がゐますね。魔道プロパガンダ流布の為の、テレビ對策つて云ふか」-「やつぱね。POMの助の藝は【魔】好み過ぎる」-「だうしますか。斬る?」-「さる魔界の大物つてのが氣になるなあ。結局『シュー・シャイン』頼りか今回も」
【ⅵ】
「シュー・シャイン」は直ぐに話の出どころをピックして來た。「ルシフェル」である。さう云へば、冥府で大天使として束の間過ごしたルシフェルを、* 元の魔王に戻してしまつたのは、POMの助の「魔性のネタ」なのだ。
* 当該シリーズ第143話參照。
ルシフェルは「愛玩品」として、POMの助を手許に置いて置きたい、に違ひない...
【ⅶ】
夢太夫「殘念だが今回はなかつた事に、だな」-POMの助「はい。ホント、殘念なんですが」-夢雀「え、だう云ふ事」-P「僕らは本物の惡魔に魅入られたつて事さ」-雀「え゙、怖ワ」
だが君繪は、「コンビでテレビ出演」の予知をしてゐる。焦る事はない。ぢつくり時の滿ちるのを待つのだ。
「ルシフェルもマスコミ對策を早くも練つて來た」カンテラ。じろさん「こちらも氣を張つて行かないと、つて事だな」。依頼料は無論、夢太夫から出た。ことPOMの助の賣り込みの事となると、少々の出費は厭はない夢太夫であつた。
※※※※
〈秋もこゝ迄來て戰意喪失かな 涙次〉
【ⅷ】
「戰意喪失」、どころではないのだよ、涙次くん。これから闘ひが始まるのだ。そこんとこ宜しく。ではでは。
 




