第78話 9月9日(土)
PTAの集まり 午前10時
PTA会長の視点
2学期最初のPTA会議。
出席率が異常に高い。ほぼ100%。
そして、会議の進行が異様にスムーズ。
提案すると、全員が頷く。
反対意見なし。質問なし。
「運動会のお手伝い、お願いできますか?」
全員が同時に手を挙げる。
まるで、打ち合わせしたかのように。
いや、打ち合わせなんて必要ない。
みんな、同じことを考えているから。
参加した保護者の視点
会議に参加する。
周りを見ると、みんな同じような服装。
地味な色。動きやすい形。
偶然?いや、違う。
朝、クローゼットを開けたとき、自然にこれを選んだ。
みんなも同じだったんだ。
議題について、意見を言おうとして、やめる。
みんなと同じでいい。
波風を立てる必要はない。
休日の図書館 午後
司書の視点
土曜日の午後。
いつもなら、親子連れで賑わう時間。
今日も人は多い。でも、音がしない。
本のページをめくる音さえ、聞こえない。
みんな、同じペースで読んでいるから。
返却カウンターに、一組の親子。
「ありがとうございました」
二人の声が、完全に重なる。
親子で同じ本を借りていく。
『月の満ち欠け』『猫の生態』
もう、驚かない。
これが、この町の普通になった。




