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この町のネコ、やっぱりおかしい ー市立祢古小学校記録集ー  作者: 大西さん
第三部:静かな違和感(2023年9月)
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第76話 9月7日(木)

朝の校内放送 朝8時15分


放送委員の児童の視点


朝の放送当番。


原稿を読む。でも、途中で詰まる。


「今日の給食は...」


言葉が出てこない。漢字が読めないわけじゃない。


ただ、言葉を使うのが...難しい。


代わりに、「にゃー」と言いそうになる。


マイクを切って、深呼吸。


もう一度試すが、やっぱり難しい。


結局、放送は途中で終了。


でも、誰も文句を言わない。


みんな、わかっているから。言葉の限界を。


音楽の時間 3時間目


音楽教諭・田村の視点


4年生の音楽。


歌の練習をするが、歌詞が変わっていく。


「山の音楽家」を歌っているはずが、いつの間にか...


「にゃんにゃんにゃにゃー、にゃんにゃんにゃー」


注意しようとして、気づく。


自分も同じように歌っていることに。


そして、その方が自然に感じることに。


楽譜を見る。音符は同じ。でも、歌詞が違って見える。


いや、歌詞なんて必要ない。


音だけで、気持ちは伝わる。


下校時 午後3時


見守り隊の視点


下校の見守り。


子供たちが、整然と並んで帰っていく。


おしゃべりはしない。でも、楽しそう。


時々、全員が同じタイミングで空を見上げる。


まだ青い空。月は見えない。


でも、子供たちには見えているのかもしれない。


「さようなら」


挨拶をすると、全員が振り返る。


そして、にっこり笑う。同じ表情で。


背筋が寒くなる。でも、温かい気持ちにもなる。


矛盾した感情を抱えながら、子供たちを見送る。

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