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この町のネコ、やっぱりおかしい ー市立祢古小学校記録集ー  作者: 大西さん
第三部:静かな違和感(2023年9月)
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第74話 9月5日(火)

給食時間 12時20分


給食当番の子供たちの視点


配膳の時間。


誰が何をするか、言わなくてもわかる。


ご飯を盛る子、おかずを配る子、牛乳を並べる子。


完璧な連携。5分で準備完了。


でも、牛乳は誰も飲まない。


みんな、同じように残す。


先生も何も言わない。先生も飲んでいないから。


栄養士・橋本の視点


各教室を回る。


全クラスで、同じ光景。


魚は完食。野菜も完食。でも、牛乳は手つかず。


「苦手?」と聞いても、首を振る。


「いらない」


それだけ。


残食の記録を取る。牛乳の廃棄率、100%。


来月から、メニューを変更しよう。


牛乳を減らして、魚を増やそう。


それが、みんなの望みなら。


放課後の職員会議 午後3時30分


校長・田中の視点


9月最初の職員会議。


議題は運動会について。


「今年のテーマは『一つになって』でどうでしょう」


誰が提案したのか。でも、全員が頷く。


プログラムの検討。


「全校ダンスを増やしましょう」 「徒競走は...必要ですか?」 「勝ち負けより、みんなで一緒に」


違和感を覚える自分がいる。


でも、その違和感を押し殺す自分もいる。


これでいい。みんなが望むなら。


新任・宮田の視点


初めての職員会議。


東京では考えられない進行。


反対意見が一つも出ない。議論がない。


でも、不思議と居心地は悪くない。


むしろ、この一体感が心地いい。


自分の意見を言おうとして、やめる。


みんなと同じでいい。それが楽だ。

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