第74話 9月5日(火)
給食時間 12時20分
給食当番の子供たちの視点
配膳の時間。
誰が何をするか、言わなくてもわかる。
ご飯を盛る子、おかずを配る子、牛乳を並べる子。
完璧な連携。5分で準備完了。
でも、牛乳は誰も飲まない。
みんな、同じように残す。
先生も何も言わない。先生も飲んでいないから。
栄養士・橋本の視点
各教室を回る。
全クラスで、同じ光景。
魚は完食。野菜も完食。でも、牛乳は手つかず。
「苦手?」と聞いても、首を振る。
「いらない」
それだけ。
残食の記録を取る。牛乳の廃棄率、100%。
来月から、メニューを変更しよう。
牛乳を減らして、魚を増やそう。
それが、みんなの望みなら。
放課後の職員会議 午後3時30分
校長・田中の視点
9月最初の職員会議。
議題は運動会について。
「今年のテーマは『一つになって』でどうでしょう」
誰が提案したのか。でも、全員が頷く。
プログラムの検討。
「全校ダンスを増やしましょう」 「徒競走は...必要ですか?」 「勝ち負けより、みんなで一緒に」
違和感を覚える自分がいる。
でも、その違和感を押し殺す自分もいる。
これでいい。みんなが望むなら。
新任・宮田の視点
初めての職員会議。
東京では考えられない進行。
反対意見が一つも出ない。議論がない。
でも、不思議と居心地は悪くない。
むしろ、この一体感が心地いい。
自分の意見を言おうとして、やめる。
みんなと同じでいい。それが楽だ。




