第73話 9月4日(月)身体測定
保健室での測定 午前
養護教諭・山田の記録
身体測定週間の初日。
1年生から順番に測定。
異常なデータが出ている。
全員の身長が、4月から3cm以上伸びている
体重は標準だが、体脂肪率が異常に低い
握力が年齢平均の1.5倍
そして、測定中の子供たちの行動。
「次の人」と呼ぶ前に、自然に交代する。
まるで、順番がプログラムされているかのように。
2年生女子の視点
身長を測る。
「伸びたね」と山田先生が言う。
確かに、服がきつくなった。でも、それだけじゃない。
体が軽い。ジャンプすると、前より高く飛べる。
走ると、風みたいに速い。
「これ、普通かな」
隣の子に聞くと、「普通だよ」と答える。
みんな同じだから、普通。
でも、前の「普通」とは違う気がする。
職員室での会話 午後
3年担任・吉田の視点
「測定結果、見ました?」
山田先生が、データを見せてくれる。
確かに異常だ。でも、子供たちは健康そのもの。
「成長期ですから」
自分でも苦しい言い訳だとわかっている。
でも、他に説明のしようがない。
いや、説明する必要があるのか?
みんな健康で、みんな仲良し。
それでいいじゃないか。
教頭・山本の視点
職員の会話を聞いている。
みんな、異変に気づいている。でも、誰も深刻に捉えない。
それは、私たち自身も変わっているから。
鏡を見ると、耳の形が少し変わっている。
爪も、毎日切らないと伸びすぎる。
でも、不思議と違和感はない。
むしろ、これが本来の姿のような気がする。




