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第63話 8月26日(土)
・ペンション経営者の日記 朝
夏休み最後の週末だというのに、予約が入らない。
それどころか、キャンセルが相次いでいる。
「申し訳ありませんが、祢古町には行けなくなりました」
理由を聞いても、曖昧な返事ばかり。
町は静かだ。静かすぎる。
そして、この静けさが...心地いい。
外部から人が来ない方がいい。この調和を乱されたくない。
あれ?いつから私はこんな風に...
・新聞配達店の店主 午前
配達員が次々と辞めていく。
「朝、町を回るのが...なんか怖くて」
確かに、早朝の祢古町は異様だ。
多くの家で、人影が窓辺に立っている。
みんな、同じ方向を向いて。
「代わりはいますから」
残った配達員は平然と言う。
彼らの目も、少し変わってきた気がする。




