第44話 8月7日(月)8日(火)
・役場の夜間警備員の記録 深夜2時
巡回中、町を見下ろす展望台に立つ。
真夜中だというのに、あちこちの家に明かりが灯っている。
それも、同じような明かり方。カーテンの隙間から漏れる、薄い光。
まるで、みんな同じことをしているような...
双眼鏡で覗いてみた。すぐに後悔した。
どの家も、人影が窓辺に立っている。全員、同じ方向を向いて。
月を見ているのか?今夜は三日月なのに。
■8月8日(火)
・散髪屋の店主 午前
今日3人目の子供客。
みんな同じ注文。「短くしてください」
でも、切っていて気づく。髪質が変わっている。
前はもっと柔らかかったはずなのに、今は...硬い?いや、密度が濃い?
そして、首筋の産毛が濃くなっている。子供なのに。
「最近、毛深くなった?」
冗談めかして聞いてみたが、子供は首を傾げるだけ。
でも、その仕草が妙に大人びていた。
・駐在所の巡査の報告書 夕方
本日も、事件・事故なし。
むしろ、静かすぎる。
7月までは、夏休みになると必ず自転車の接触事故や、子供同士の小競り合いがあったのに。
見回りをしていても、子供たちは整然としている。
信号を守り、列を乱さず、大声を出さない。
理想的な光景のはずなのに、なぜか背筋が寒くなる。
子供は、もっと...子供らしくあるべきでは?




