第42話 8月5日(土)
・根岸かおりの視点 プールにて 午前11時
プールから帰ってきた。今日も楽しかった。
でも、ちょっと変なことがあった。
みんなで泳いでいたとき、誰も言わないのに、同じタイミングでプールから上がった。10人くらいいたのに、みんな一緒に。
「なんでみんな同じ時に上がったの?」って聞いたら、「なんとなく」って。
私も「なんとなく」上がりたくなったから、不思議。
お母さんに話したら、「仲がいいのね」って笑ってた。
でも、プールの監視員のお姉さんは、ちょっと驚いた顔してた。
・プール監視員(大学生アルバイト)の視点 午前11時
今日の当番は少し気味が悪かった。
小学生たちが10人ほど来ていた。賑やかになるかと思ったら、妙に静か。
泳ぎ方も変だった。バタフライやクロールじゃなくて、みんな平泳ぎ。しかも、その動きが...何というか、統一されている。
11時ちょうど、全員が同時にプールから上がった。誰も時計を見ていないのに。
「休憩時間?」と聞いたら、「うん」と全員が同じトーンで答えた。
子供って、もっとバラバラなはずなのに。
・栗田周平の母親の視点 夕方
周平が帰ってきた。プールは楽しかったようだ。
「みんなと一緒に泳いだ」と嬉しそう。
でも、髪を乾かしているときに気づいた。首筋に小さな引っかき傷。
「これ、どうしたの?」 「わからない。でも痛くないよ」
確かに、血も出ていない。もう治りかけている。
それより気になったのは、周平の食欲。最近、魚ばかり欲しがる。今日の夕飯も「サバの塩焼きがいい」と。
成長期だから、と思うことにした。




