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この町のネコ、やっぱりおかしい ー市立祢古小学校記録集ー  作者: 大西さん
第一部 静かなる予兆(2023年7月)
33/169

第33話 7月27日(木)

・朝4時30分 さらなる早起き


町全体が、また30分早く目覚めた。 4時30分。 まだ真っ暗な時間。


でも、誰も二度寝しない。 むしろ、待ちきれないという様子で起き出す。 何を待ちきれないのか、本人たちも説明できないまま。


・朝5時30分 栗田周平の新発見


『観察日記 7日目 重大な発見』


今日は曇り。でも猫たちは平常通り集まった。 雨が降りそうな空でも、全く気にしていない。


そして、ついに「会話」を理解した。 鳴き声じゃない。もっと複雑なコミュニケーション。


耳の角度

しっぽの振り方

体の微妙な傾き

ひげの動き


これらの組み合わせで、複雑な意味を伝えている。


今日解読できた内容:

黒猫→茶トラ:「地下、準備進む」

茶トラ→三毛:「子供たち、順調」

三毛→全員:「あと2日」


地下?何の準備? でも、なぜか不安は感じない。 むしろ、期待感が湧いてくる。


・朝7時 異常な朝食風景


栗田家の朝食。 いつもと同じメニューのはずなのに、食べ方が変わっている。


父親が箸を持つ。 母親も同時に箸を持つ。 周平も同時に。


三人が同時に魚に箸をつける。 同時に口に運ぶ。 同時に噛む。


「あ...」 母親が気づいて箸を止める。 でも、すぐにまた同じリズムに戻ってしまう。


抗えない。 いや、抗う必要を感じない。 家族で同じリズムで食事をすることが、とても自然に感じる。


・午前10時 学校プール


今日はさらに人数が増えた。 40人以上。


そして、新しい現象が起きた。 子供たちが、水中で「整列」し始めたのだ。


プールの底に沈んで、 等間隔に並んで、 じっと上を見上げている。


息継ぎのタイミングも同じ。 30秒間潜って、浮上して息を吸い、また潜る。


監視員は止めようとして、できなかった。 危険はない。 むしろ、これほど統制の取れた行動は見たことがない。


・午後2時 緊急町内会


公民館に、町内会の役員が集まった。

議題は「最近の異常現象について」。


しかし...


「異常って言っても、実害はないんですよね」

「むしろ、町が平和になった」

「子供たちも健康的」

「犯罪もゼロ」


否定的な意見を言おうとしても、 なぜか言葉が出てこない。 むしろ、これでいいという気持ちが強い。


会議は、何も決まらないまま終わった。 いや、「何もしない」ということが決まった。


・午後4時 公園の異変


中央公園の芝生に、また新しい「跡」ができていた。 今度は、もっと大規模。


直径20メートルほどの円。 その中に、複雑な幾何学模様。 まるで、巨大なミステリーサークル。


でも、誰も騒がない。 むしろ、「美しい」と感じる人が多い。


子供たちは、その模様の上を歩きたがる。 特定のルートを辿るように、慎重に足を運ぶ。 まるで、見えない道筋があるかのように。


・夜8時 町全体の静寂


この時間、普段なら家々からテレビの音が聞こえるはず。 でも今夜は、異様に静か。


どの家も、電気はついている。 でも、テレビの光は見えない。


代わりに、窓辺に人影。 全員が、同じ方向を向いて立っている。 東の空を見上げて。


月が昇る。 半月を少し過ぎたくらい。 でも、異常に明るく感じる。


そして、町中から低い唸り声のような音が響く。 人間の声とも、動物の声ともつかない。 でも、確実に「歌」だった。

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