第24話 7月17日(月)
・職員会議 朝8時
「夏休みの宿題についてですが」 教頭の山本が資料を配る。
各学年の宿題一覧を見て、教師たちは顔を見合わせる。 どの学年も、似たような内容になっている。
1年生:「月の観察日記」 2年生:「身近な生き物の観察」 3年生:「夜の自然観察」 4年生:「動物の行動記録」 5年生:「月と生物の関係」 6年生:「集団行動の研究」
「偏ってませんか?」 若い教師が指摘する。
「そうかな?」 「自然観察は大切だし」 「子供たちも興味を持ってるみたいだし」
結局、このまま承認される。 反対する理由が、誰も見つけられない。
・2時間目 3年1組
「明日は何の日か知ってる?」 担任が聞く。
「給食最後の日」 全員が同時に答える。
「そうね。それから?」 「プールの水を入れる日」 また全員で。
「みんな、よく知ってるね」 担任が驚くと、子供たちは不思議そうな顔。 知っているのが当たり前、という表情。
「だって、分かるもん」 「うん、分かる」 「みんな知ってる」
その「分かる」という感覚が、 クラス全体で共有されている。
・給食時間 12時30分
今日のメニューは焼き魚定食。 子供たちの箸が進む。
魚の身を、骨から器用に外していく。 その手つきが、全員同じ。 まるで、作法を習ったかのように優雅。
そして、食べる順番も同じ。 魚の頭から尻尾に向かって、 規則正しく身を取っていく。
残った骨を見ると、 全員が同じように、きれいに身を取っている。 骨だけが美しく残されている。
・放課後 4時 用務員の発見
用務員の小林が、裏庭で奇妙なものを見つけた。 地面に、また円形の跡がある。
今度は、校庭ではなく裏庭。 人目につかない場所に。
よく見ると、円の中に足跡がある。 小さな足跡。子供のものだ。 でも、配置が奇妙だ。
中心から放射状に足跡が伸びている。 まるで、中心に何かがあって、 そこから子供たちが散っていったような。
写真を撮ろうとして、小林は手を止める。 なぜか、撮ってはいけない気がした。 これは、子供たちの秘密なのかもしれない。




