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この町のネコ、やっぱりおかしい ー市立祢古小学校記録集ー  作者: 大西さん
第一部 静かなる予兆(2023年7月)
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第22話 7月15日(土)土曜参観

・朝8時30分 保護者の来校


土曜参観の日。 保護者たちが、続々と学校にやってくる。


駐車場に車を停める動作、 校門をくぐるタイミング、 昇降口で会釈する角度。


なぜか、みんな似ている。 まるで、同じ教育を受けた人たちのように。


・1時間目 授業参観準備


各教室に、保護者たちが入っていく。 廊下での立ち位置、教室での座り方。 誰も指示していないのに、整然としている。


そして、不思議なことに気づく教師たち。 親子の動きがシンクロしている。


子供が振り返ると、親も振り返る。 子供が頷くと、親も頷く。 まるで、見えない糸で繋がっているかのように。


・2時間目 5年1組 理科


「今日は動物の生態について学習します」 渡辺教諭が、黒板に大きく書く。


「身近な動物といえば?」 質問した瞬間、全員の手が挙がった。 保護者たちも、その光景に息を呑む。


「はい、山田くん」

「猫です」

「他には?」

「猫の仲間」

「野良猫」

「月を見る猫」


答えが、すべて猫に関連している。 しかも、最後の答えは...月を見る猫?


・栗田周平の母親の日記 深夜


今夜、恐ろしいものを見てしまった。


トイレに起きて廊下に出ると、周平の部屋のドアが開いていた。覗くと、ベッドに周平はいない。


リビングに行くと、月明かりの中、周平が四つ足で歩いていた。手のひらと膝をついて...いや、違う。もっと自然な、獣のような歩き方で。


「周平?」


声をかけようとして、止めた。その横顔が、人間の子供のものではなかったから。


朝、周平は普通に起きてきた。「よく眠れた?」と聞くと、「うん、すごくいい夢見た」と笑った。


私は何も言えなかった。見なかったことにした。きっと、私の見間違いだ。そうに違いない。

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