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この町のネコ、やっぱりおかしい ー市立祢古小学校記録集ー  作者: 大西さん
第一部 静かなる予兆(2023年7月)
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第19話 7月12日(水)

・朝7時 プール掃除の日


6年生が朝早くから集まっている。 プール掃除は毎年恒例の行事だ。


「おはよう」 挨拶の声が、完璧に重なる。 30人の6年生の声が、一つになる。


掃除道具を取りに行く動きも統一されている。 デッキブラシを持つ子、バケツを運ぶ子、ホースを準備する子。 誰が指示したわけでもないのに、役割分担が自然にできている。


・朝7時30分 掃除開始


「じゃあ、始めようか」 担任の中村教諭が言う前に、子供たちは動き始めていた。


プールサイドから始める組、 排水溝を掃除する組、 プールの底を磨く組。


その動きは、まるで振り付けされたダンスのよう。 ブラシを動かすリズムも同じ。 シャッ、シャッ、シャッ... 30人分の音が、一つの音として響く。


・朝7時45分 異様な効率


「すごいな...」 中村教諭がつぶやく。


例年なら2時間かかる作業が、もう半分以上終わっている。 しかも、驚くほどきれいだ。


子供たちは無言で作業を続ける。 でも、それは重い沈黙ではない。 むしろ、言葉を必要としない一体感がある。


時々、誰かが顔を上げる。 すると、他の子たちも同じタイミングで顔を上げる。 視線を交わし、微かに頷き合う。 そして、また作業に戻る。


・朝8時 作業完了


「終わりました」 全員が同時に手を止め、中村教諭の方を向く。


プールは、新品のようにきれいになっている。 排水溝にゴミ一つない。 タイルの目地まで、丁寧に磨かれている。


「1時間もかからなかったね」 中村教諭が驚きを隠せない。


子供たちは満足そうに、でも驚いた様子もなく、 片付けを始める。 この効率の良さも、もはや当たり前のことのように。


・給食時間 12時25分 職員室


「6年生のプール掃除、もう終わったんですか?」 他の教師たちが驚いている。


「ええ、1時間で」 「1時間?」 「しかも、完璧にきれいに」


職員室がざわつく。 例年なら、午前中いっぱいかかる作業だ。


「最近の子は、本当によく働きますね」 誰かが言う。 でも、それは感心半分、不安半分の声だった。


・掃除の時間 午後1時15分


全校一斉の掃除時間。 校内のあちこちから、リズミカルな音が聞こえる。


ほうきの音、 雑巾を絞る音、 机を動かす音。


すべてが同じテンポで響いている。 まるで、学校全体が一つの楽器のように。


用務員の小林が廊下を歩きながら思う。 「機械みたいだ」 でも、それは悪い意味ではない。 むしろ、美しいとすら感じる。


・掃除の時間 午後1時25分


2年1組の教室。 子供たちが黙々と掃除をしている。


ほうき係の3人は、完全に同じ動きでほうきを動かす。 右から左へ、スッ、スッ、スッ。 3本のほうきが、1本のように動く。


雑巾係も同じ。 床を拭く手の動きが、シンクロしている。 前後、前後、ターンして、また前後。


「上手ね、みんな」 担任が褒めると、全員が同時に手を止めて振り返る。 「ありがとうございます」 また、声が一つになる。

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