第131話 11月5日(日)
日曜日の礼拝 午前
隣町の教会にて
日曜礼拝。 しかし、信者の様子がおかしい。
讃美歌の途中で、数名が歌詞を間違える。 「主よ」を「月よ」と。
そして、それが伝染する。 次第に、全員が「月よ」と歌い始める。
牧師も止められない。 自分も「月よ」と歌いそうになるから。
礼拝後、信者の一人が言った。 「祢古町の人たちは、先に召されたのかもしれません」 「私たちとは、違う形で」
子供たちの絵 午後
隣町の児童館にて
お絵かきの時間。
なぜか、全員が同じような絵を描く。 大きな穴と、その中に入っていく人々。 そして、底から昇ってくる金色の光。
「これ、何の絵?」 「祢古町」 「行ったことあるの?」 「ううん。でも、知ってる」
職員は、絵を回収した。 そして、なぜか保管せずに処分した。 理由は自分でもわからない。 ただ、「危険」だと感じたから。
隣町住民の手記
今日、地獄を見た。いや、天国かもしれない。もう、区別がつかない。
祢古町から、「それ」が来た。かつて隣人だった、佐藤さんだった。
四つ足で、でも服を着て。人間の顔で、でも獣の瞳で。
一番恐ろしかったのは、その表情。完璧に幸福そうだった。この上なく、満ち足りた顔。
でも、その幸福の奥に、もう人間はいなかった。佐藤さんという個人は、完全に消えていた。
美しい、空洞のような幸福。中身のない、でも完全な幸福。
「一緒に」そう言われた気がした。声ではなく、存在全体で。
逃げた。でも、あの幸福そうな顔が忘れられない。ああなることが、本当に不幸なのか?
わからなくなってきた。




