第120話 10月21日(土)運動会
早朝の準備 朝6時
早く来た保護者の視点
朝6時に学校へ。
もう、たくさんの人が集まっている。
いや、人...だろうか。
朝靄の中、シルエットだけが見える。
四つ足のもの、二足のもの、その中間のもの。
でも、みんな同じ仲間。
みんなで、東の空を見ている。
月が沈んでいく。
下弦を過ぎた、欠けていく月。
あと一週間で新月。
そして、私たちも新しくなる。
運動会開始 午後3時
プログラム進行
午後3時、運動会開始。
でも、もう放送はない。
必要ないから。
全員が、自然に動き始める。
群れの行進
整然と、でも有機的に歩く。
大きい者が外側、小さい者が内側。
老いた者を支え、幼い者を守りながら。
これが、本来の歩み方。
狩りの演舞
もはやダンスではない。
本能的な動きの再現。
低く構え、獲物を狙い、跳躍する。
美しく、野性的で、でも統制が取れている。
月への祈り
全員で、東を向く。
まだ昇っていない月に向かって。
「にゃー、にゃー、にゃー」
数百の声が重なり、祈りとなる。
大いなる統合
最後の演目。
全員で、大きな円を作る。
手をつなぎ...いや、体を寄せ合い。
ゆっくりと、円が縮んでいく。
中心に向かって、螺旋を描きながら。
そして、中心で、全員が一つになる。
もはや個体の区別はない。
一つの、大きな生命体。
運動会後 夕方
最後まで人間の姿を保っていた者の記録
運動会が終わった。
いや、終わったのは運動会だけではない。
人間としての、最後の行事が終わった。
グラウンドには、もう人間はいない。
様々な段階の、変化した存在たち。
ある者は、完全に四つ足で歩いている。
ある者は、二足だが、もはや人間の歩き方ではない。
ある者は、毛皮に覆われている。
でも、みんな幸せそうだ。
名前を呼び合うこともない。
もう、個体の名前は必要ない。
みんなで一つ。
永遠に一つ。
私も、もうすぐ。
手が震えて、これ以上書けない。
爪が邪魔で、ペンが持てない。
でも、もう書く必要もない。
10月28日、新月の日。
すべてが完成する。




