第106話 10月7日(土)
休日の商店街 午前
八百屋・山本の視点
土曜日の朝市。
でも、野菜を買う客はもういない。
みんな、魚屋に流れている。
うちも、もう店じまいかな。
いや、違う。
私も、もう野菜を食べたいと思わない。
魚の方が、美味しい。
自然だ。
本来の食性に戻っただけ。
そう考えて、店のシャッターを下ろす。
来週から、私も魚屋を手伝おう。
美容院の店主の視点
土曜日は予約でいっぱいのはず。
でも、今日はキャンセルが相次いだ。
「髪を切る必要がなくなった」
そんな理由で。
確かに、最近来る客の髪質が変わっている。
もっと太く、もっと密度が高く。
そして、伸びが遅い。
毛皮のような髪。
ああ、そうか。
もう人間の髪じゃないんだ。
休日の学校 午後
通りかかった散歩者の視点
休日の学校は静かなはず。
でも、祢古小学校は違う。
校庭に、人影が見える。
子供たち?いや、大人も混じっている。
みんな、校庭で何かをしている。
遊んでいる?違う。
練習?それも違う。
ただ、集まって、動いている。
一定のリズムで、一定のパターンで。
まるで、本能的な動きを確認しているような。
近づこうとしたが、足が進まない。
あれは、部外者が入ってはいけない領域だ。




