統治者
それから数日が経った。
街並みは穏やかだ。いつもと変わらぬ風景が広がっている。まさに平和な光景。
だがそれは、うわべだけの世界であるのも真実だ。
光があれば、影が刺すのも真実……
「さぁ、吹き飛べ!」
「この狂った世界、我らが統一してくれるわ!」
通りを挟んだ路地裏では、激しい乱闘が展開されていた。
近辺を統べる荒くれ十人程と、五人の謎の集団だ。
謎の集団の出で立ちは、異様だった。無骨な兜に胸当て。鮮やかな陣羽織を羽織って、腰には刀を携えている。
要するに侍の格好だ。
荒くれ達も、ケンカには自信があったが、侍達の前には歯が立たない。
成す術なく、討ち果てていくだけだ。
「な、なんなんだよ、あんたら? ただのコスプレ集団じゃねーのかよ?」
荒くれを仕切る、リーダーらしき金髪の男が叫ぶ。
「ふん、日の本も変わり果てたものよ。こんな南蛮にかぶれるとは」
侍が刀を引き抜く。
そして躊躇いもなく振り払った。
「…………」
金髪の顔面が蒼白になる。
ガクガクと震えて、へたり込んだ。
その覚束ない視線が捉えるのは、宙に舞う切り裂かれた髪の毛だった。
「蘭丸、殺しだけは止めておけ。きゃつとの約束だからな」
その侍を仕切る、大将らしき人物が投げ掛けた。
一際荘厳な兜をかぶる、黒いマントの男だ。鋭い眼光と、整えた口ひげが特徴的だった。
「はっ!」
その台詞に、深く頷く侍。
「我々の目的は、この国の統一だ。……おとなしく従えば、命までは獲らずにおこう」
静かで、重みのある台詞だった。
この世の生きとし生ける者は、限られた空間の中で存在している。
それはつまり時間だ。時間の概念により、人間誰もが、それに繋がれ、規則正しく生きている。
時間は束縛であり、支配だ。
……その束縛を打ち破った時、来たるべき世界は広がりだすのだ。