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ネクストワールド  作者: 成瀬ケン
第一章
6/30

文明が無ければ、平和になる


 こうしてアパートに帰った智。


 布団に潜り込んで寝ようとするが、熱帯夜のせいで寝入ることが出来なかった。



 風は皆無、ムンムンと籠もる熱気、額や背中から大量の汗が噴き出る。


 時折パトカーのサイレンや、バイクのエキゾーストが響き、耳にこびり付く。


 寝ようと思う程に、壁に掛けられた時計のコチコチとした音まで、気になっていた。



「ダメだ。…………酒でも飲むか」

 堪らずシーツを捲り上げ、冷蔵庫まで移動する。


 そして缶ビールを取り出した。

 缶ビールの冷たさが、握った手を介して伝わってくる。プルタブを開放し、一気に喉に流し込んだ。



 こうして束の間の涼を取った智、乱雑な室内を見回す。


 その日は満月の夜だった。外は青白い光に包み込まれていて、室内まで仄暗く照らしている。



 何気なしにテレビの電源を入れた。

 次々にチャンネルを変えるが、殆どは深夜のお笑い番組。今の心境じゃ、興味をそそられなかった。



「夢と理想か」

 そして智、漠然とパソコンに視線を向ける。


 明日香に話をしたことで、彼自身も登録してみようとする気になったのだ。


 万が一当選して、彼女にプレゼントすれば、自分の株も上がるだろう。

 明日香のあの時の話にもも、少しだけ興味を惹かれていた。


 こうしてテレビの電源を消し、パソコンから登録することにしたのだ。


「夢か……」

 漠然と呟き、文字を打ち込む智。


 打ち込んだ文字は『強くなること』。


 それは昔から感じていたことだった。強くなるといっても、力とか、精神力とかではない、誰かを守り抜く、些細な強さだ。


 優柔不断で、テキトーが本分の彼だが、本音ではそんな強さを求めていた。


 そして理想の未来は、『文明のない、平和な世界』。


 少しだけ世間に皮肉を籠めた文章だった。


 文明なんて、理不尽な世界さえなければ、誰もが平等で平和な世界といえるだろうから……



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