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ネクストワールド  作者: 成瀬ケン
第四章
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駆け引き


「お前だって、信長様に魅了されたから、こんな極秘任務に臨んだんだろ?」

 だがその俊平の問い掛けでハッとした。


「極秘任務?」


「いいんだよ隠さなくて。もう任務は、終わってるんだから。凄いよな、悪の組織に潜入して、悪の教祖を糾弾したんだから」


「……糾弾って、世界平和協会の伊集院をか?」


「だからもう、はぐらかさなくてもいいって。……まぁいいや。とにかくお前だけでも助けられたんだから」

 俊平はホッとした表情だ。

与えられた任務を確実に遂行した、そんな満足そうな表情。



「だけどホント、びっくりしたんだぜ。あのテレビ中継を見ながら信長様が、この二人を救い出せ、と命じたんだけど、それがお前なんだからな。ホント俺は鼻高々だよ。もうひとりを助けられなかったのは、残念だけどな」

 どうやら俊平は、こいつを助けろ、と言われただけで、それが智、つまり破壊神だとは知らなかった様子。 



 そして彼が言う、もうひとりとは明日香のこと。


 おそらく統治者も、破壊神の正体、智のことは知らない。テレビ中継を介して、初めて姿を確認したのだろう。


 ただひとりを除いては……



「だったら、あいつ」

 智は地上で雄姿を誇る、電王の姿を指さす。


「あいつのことを、信長様はなんていってるんだ?」


 呼応して視線を向ける俊平。


「あいつも信長様の配下なんだろ。相当なるハッカー。パソコンを駆使して、悪の組織を糾弾してる」


 その全ては捻じ曲げられた情報だ。電王、統治者、それらが真実を捻じ曲げている。



「なぁ、この上空に浮いてるバカでかいのはなんだ? 流石にデカすぎないか」


「さぁね。俺は本職の自衛官じゃないから。今だけの期間限定要員だから。……それに本職自衛官に訊いても、知らないって言ってたから。そもそも航空母艦なんて、世界のどこにも存在しないんだって。だから噂じゃ、アメリカが極秘で開発した代物だろうってさ。じゃなきゃ、単なる空想の産物、ってなっちまうって」



 その俊平とのやり取りを反芻して、智は選ばれし能力者の存在を、改めて考える。



 破壊神として、その中で見ていたから分からなかった。

 この能力者という連中、実はすべてがバラバラな思想の持ち主だと。


 時と場合によっては協力もするが、時には騙しあい、化かしあいをする連中なんだと。



 所詮能力者も、この世界ではひとりの人間だ。

 そう言った策を練らなければ、この世界では生きていけないのだろう。



 そして智の頼るべき存在は……


 赤い秘石を握った右掌を、グッと自分の胸元に添える。



 そして“あの夜”のことを思い出す。


 ……そう、俺はひとりじゃない……

 ここには確実に、“明日香”がいる。






 地鳴りはいつまでも響く、壁と化した濁流は荒れ狂う。



 バリバリと解き放たれた電王が、そそり立つ。


 塵で閉ざされた闇が、世界を覆い尽くした。



『グッハハハハ! 期は熟した、下らぬ足枷は外れた。今こそ我らの世界、ネクストワールドが始まるのだ!』


 それこそが電王の言う、新たなる世界の始まりだったんだ。



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