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ネクストワールド  作者: 成瀬ケン
第四章
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磁場逆転

「そこにいるんだろ、電王」

 空を見上げる智。


「こうなると、分かってたのかよ。地震も津波も、全て予測してたのか?」

 そして言った。


 辺りがバチバチと放電する。


『当然だ』

 闇夜に電王の姿が浮かんだ。ビルひとつぐらいの大きな姿だ。

 おそらくだか電王自身、少しづつパワーアップしてるようだ。それだけ秘石の能力を使いこなしつつある。

 更には空に煌めく、秘石の影響もあるのかも知れない。



『この地球と、月とのバランスが、崩れたのだからな』


「どう言うことだ?」


『地球と月は、引力の関係でバランスを取っている。その月に衝撃を加えれば、地球の地軸に支障をきたす。いわゆる磁場逆転、ポールシフト、と云う事象だ。これにより地球は磁場が変わる。磁場が変わるということは、地球規模の地震が生じる。そうなれば津波はもとより、火山活動も活発化する。つまりこの腐った人間社会が、完膚なきまで叩き潰されるということだ』


 それは衝撃的な台詞だった。智は、ここまでの事態を予測などしていなかった。

 改めて自分の犯した罪を呪った。



『しかし安心しろ。この腐った文明は消滅するが、地球は消滅しない。もちろん人も滅びない』


「なぜ、そんなことが言えるんだ?」


『これぐらいの衝撃、地球からすれば些細なことだからだ。むしろこの衝撃で活性化する。強力な電気ショックをかけたようなものだ。地球を蝕んでいた、旧文明が滅びるのだから』


 まるで人間が、寄生虫のような言い草だ。



『これで新たなる、選ばれし人類が誕生するのだ。奴らによって隠されていた、秘石が復活したのだからな。我々選ばれし人類が、新しき世界を創り出すのだ』


 まるで支配者を気取ったような滑稽なもの。




 唯一判るのは、その後方に浮かぶ月の姿が幻想的だというくらい。


 爆発で生じた幾多の塵で、おぼろげな姿だが、かすかに赤く輝いている。

 多分それこそが、電王のいう、隠された秘石なんだろうと、智は感じていた。



 ……つまり電王は、月に隠された秘石をこの世界に復活させる為に、智に力を使わせたのだ。

 そしてこの情況になることも、最初から理解していた。



「騙したのか? こうなることは予測してた」

 智の混乱は、並大抵ではなかった。

 そしてその怒りの矛先は、自ずと電王に向けられる。


『騙した? 人聞きの悪いことを言うな。全ては貴様が下した決断、貴様が導き出した未来だ』


 確かにその通りだ。どんなに言い訳しようと、それを行ったのは智だ。もはや返す言葉もない。


『とにかく貴様も逃げるがいい、この場にいれば、貴様とてただではすまぬぞ』


 電王の興味は智にはなかった。ビルの真上にそそり立ち、赤い月を見入っている。




 既に智は、考える気力さえなくしていた。このまま死んでもいいと感じていた。


 その場にひざまずいたまま、静かに項垂れる。


 ……自分が守ろうとした、明日香はもうこの世にはいない。

 こんな悲しみだけしかない世界で、どうしてひとりで生きていけるのか……



 しかし自分の手に握る“それ”を見てハッとした。ゆっくりと目の前にかざした。



 それは砕けた秘石。夜空に鮮やかに輝く。



 ふと“あの夜”のことを思い出した。明日香と誓った、あの約束を思いだした。

 拳を握り締めて、ネックレスを胸元にかざす。



『ホント、いつまでたっても臆病だな。お前、男だろ?』



 その明日香が言った言葉が、脳裏に鮮烈に蘇った。

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