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ネクストワールド  作者: 成瀬ケン
第三章
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強さへの憧れ


 こうしてアパートに戻った智は、ひとり缶ビールを飲んでいた。



 明日香は多忙を極め、最近あまり会ってはいない。

 明日香の活動範囲が、都内を超え、近県まで及んでいたからだ。


 そんなに活躍して、体力は持つのだろうか。それでなくとも昼間は携帯ショップでの仕事もあるのに。そんな風に、智は彼女の体が心配だった。


 それにもうひとつ、心配というか疑問があった。



「どうして明日香ちゃんは、通り魔や事故を直前で防げたんだろ? ……あの通り魔事件って、横浜だよな」

 そんな疑問だ。


 事故ってのは、滅多にないから事故なのだ。

 最初からその場にいなければ、事故には出くわさない。


 たまたまその場に居たのなら、救出も出来るだろうが、確率はなきに等しい。しかもたまたま他県を訪れて、そこで救うというのは偶然過ぎる。



『そんなに不思議か?』

 突然パソコンが起動して、輝きと共に声が響いた。


「電王?」

 それは電王だった。あれ以来姿を見せなかった電王が、久々に現れたのだ。



『鳴門明日香が、未然に事件を防いでいるのは、“預託者”の存在だ』


 そしてその台詞で、智は耳を疑った。


「……預託者って、予言か?」


『そうだ我らの同志、後に起こるであろうことを、神から事前に知らされる者』

 電王の台詞は、堂々たるものだった。



「……つまり明日香ちゃんは、あんたらとしょっちゅうやり取りしてる。かなり仲がいいってことか」


 少しだけ悔しかった。明日香の頼れる存在は、自分ひとりと思っていたから。

 特別な存在と、感じて欲しかったから……



『当然だろう、我らは同志。能力を引き出したといっても、所詮は、いち個人だ。仲間の強力がなければ、世界は変えられない。鳴門明日香は冷静沈着な女だ。ひとりではなにも出来ぬという現実を受け入れ、我らにすがった。だから我らはその能力の使い方を教え、事件の起こる時刻と場所を伝えた』


「明日香ちゃんが、あそこまで能力を使いこなせるようになったのは、あんたらのお陰?」


『そうだ。どんな器だろうと、中身が伴わなければ、ダダのガラクタに過ぎんからな』


 電王の台詞は、智にとって核心を衝いていた。


 確かに能力を得ても、使い方が分からない。それどころか、どんな能力なのかも分からない。



 そして会話が途絶えた。


 電王の金色の光に照らされ、智の顔が明るく染まる。


 無言の時が過ぎる、互いに腹の内を探っていた。



「……だったら、俺にも教えてくれ。……破壊神の能力を、その使い方を」

 動いたのは智だった。


 恐れがあったのは事実だ。それでもそれを乗り越えなければ、明日香の助けにはならないと実感した。



『くっくくく、よかろう、教えよう。悪を射抜き、この世の邪悪を破壊する、最強戦士、破壊神の全てを』



 夢は色褪せて、くたくただ。現実は厳しくて泥のよう。

 それでも生きている。守りたいものはあった。


 それはちっぽけで、地面を這いずる芋虫みたいな存在だが、広大な空への憧れはあった。



 彼はこの時、ちょうになって、大空を飛翔する夢を描いたのだ。

 世界に平和と終焉をもたらす、破壊神という蝶になる夢を……

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