創造主
遥か上空を、大型の戦闘機が飛空していた。
極秘任務を受けた、アメリカの軍用機だ。
上空に広がるのはコバルトブルーの銀河、眼下に広がるのは色とりどりの光の絨毯。
「今夜は最高に穏やかな夜だな。遠く水平線も、揺らめいてる」
「確かだ、こう穏やかだと、操縦もスムーズですしね」
「こんな穏やかなのに、日本上空を核兵器が飛んでるとは、日本の奴らも分からんだろうな」
「確かですな。非核三原則なんて騒いでるが、これが日常茶飯事だからな」
約束とは守る為にあるだろう。
だけどそれは、相手にバレなければいいだけだ。
約束など破る為に存在するも、同じことだから。
「お前、この任務が終わったら、基地内でバイトしてるまきちゃんと、デートの約束してるだろ?」
「ばれましたか? やっと約束を取り付けたんですよ」
コクピットで、操縦士が長閑な会話をしている。
目的地まではあと僅か、長旅の緊張も解ける瞬間だった。
だがその長閑な時間は、恐怖の始まりでしかなかったのだ。
「隊長、前方になにかの物体が!」
「嘘だろ? さっきまでそんなもの、存在してなかったぞ!」
声を荒げる二人。
眼前に未確認飛行物体が揺らめいている。
レーダーも反応し、緊急を告げるブザーが鳴り響いた。
「デカイ! 飛行機じゃないぞ!」
「避け切れません! どんどんデカくなる!」
それは突然、その空域に姿を現したのだ。
空気を媒介にして、あっという間に大きくなっていく。
既にその大きさは戦闘機の倍をいくもの。
……回避するのは不可能に近かった。
「ダメだ! ぶつかる!」
「どうして金魚なんかがぁ!」
恐怖の感情だけをその場に残し、機体は飛行物体に突撃する。
耳をつんざく衝撃音、赤い炎が、夜空を炎上させた。
この世の生きとし生ける者は、夢という概念を理解しているだろう。
それは寝ている間だけの幻の概念だ。けして現実ではない非現実世界。つまり想像の世界なのだ。
だがそれは、非現実の世界なのだろうか?
夢を画にすれば、姿は見える。見えると言うことは現実だ。
頭の中のビジョンが鮮明になれば、それは可能だろう。
なにが飛び出すか分からないオモチャ箱。
それこそが来たるべき世界の、楽しみのひとつなのだから。




