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Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜  作者: JACK・OH・WANTAN
第七章:スコートの絶景編
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第53話:青の騎士

現われた騎士を見て僕は警戒する。この異様な気迫と青い鎧・・・待て!この特徴は既視感がある!・・・まさか!


「十二神騎か?」


青の騎士に恐る恐る尋ねると彼は甲を脱いで顎に髭を生やした素顔を顕わにして言った。


「よく分かりましたね。私は十二神騎のネプチューン。本名はユピテルと申します。」

「ユピテル?」


ネプチューンと名乗った青の騎士の本名に眉を寄せる。ユピテルって名前、何処かで聞いた覚えがあるぞ?騎士になる前・・・ワース王国に居た時にだったかな?誰だったっけ?


「それで貴方は僕に何の用ですか?ミネルバさんはアレス以外の十二神騎は僕に危害を加えないと言ってました。」

「えぇ。それは間違いありません。貴方がシエル・・・君でしょう?」

「そう・・・ですけど。」


妙に間を置きながら話したネプチューンを見る。なんで僕の名前を言った後に悩みながら君付けしたんだ?


「まぁ立ち話はこれまでにして良ければ休んでいきませんか?私、この辺に住んでいるのです。」

「住んでる!?十二神騎なんですよね?」

「今は訳あって他の面子とは会っていないのです。さあ、こちらです。」


ネプチューンに手招きされ僕は仕方なく彼に付いていく。訳あって他の面子とは会っていない・・・という事はミネルバやアレスとも一切会ってないが連絡は取り合っているということだろう。そうでないと僕の事は知らない筈だし。


「ミネルバの事を知っているという事は何処かで彼女と会ったのですか?」

「はい。オラルド王国のマルケイルで。」

「そうでしたか。彼女は私の妹でね。ああ見えて少しお茶目な面があるんですよ。」


ネプチューンは歩きながらミネルバとの関係を明かす。ミネルバと兄妹なのか・・・それにしては全然似てないな。まぁ、年齢が離れているってこともあるかもしれない。ミネルバはあの容姿だと20代後半~30代前半くらい。彼はその一回りも年上っぽいし


「着きました。ここが私の家です。」


するとネプチューンはやや大き目な山小屋の前で足を止めて僕に振り返った。


「夜も更けています。町に帰るのは明日が良いでしょう。」

「あ、ありがとうございます。お邪魔します。」


快く家に入れてくれたネプチューンに礼を言って家の中に入る。部屋はベッド、机、椅子が一つずつと様々な釣り竿が置いてあるシンプルな間取りだった。


「冷えてきたでしょう?今、珈琲を淹れますね。」


彼は僕を椅子に座らせると慣れた手つきで珈琲を淹れて割賦を机の上に置いた。


「ありがとうございます。頂きます。」


割賦を手に温かい珈琲を口に注ぐ。癖のある苦みと芳醇な香り・・・かなり品のいい豆を使っている様だ。


「ネプチューンさんはどうして一人でこんな所に居るんですか?」


ふと僕は彼にそんなことを尋ねる。十二神騎と言えば世界で最強ともいえる騎士の集まりだ。アレスの様に軍の将軍になったりミネルバみたいに独自の団を持って旅に出るのが当たり前だと思ったけどこの人は違う。


常に単独で行動してそうだし何より辺境ともいえるスコート共和自治体の山中に住んでいる。明らかに異質だ。


「何故、私が此処に居るのか気になりますか?そうですね・・・簡単に言うなら戦う目的を無くしたと言っておきましょうか。」

「戦う目的を無くした?」


やや悲しげな表情で天井を見上げるネプチューンを見る。


「私は一時期、とある国で王の側近をしておりました。もう15年以上も前の話です。王はとても寛大で余所者の私を重宝してくれました。ですが王が崩御されてから国を離れたんです。」

「素晴らしい国王だったんですね。」

「えぇ、素晴らしい方でした。なんせ・・・」


ネプチューンはそう言って僕に顔を向けた途端・・・驚くべきことを言い放った。


「貴方の御祖父おじい様でしたから。」

「ッ!?」


その言葉に戦慄がはしる。僕の・・・御祖父さん!?まさか!不意に彼の本名であるユピテルを何処で聞いたか思い出す。


僕の祖父である先王オセオン・ワース16世が遺していた文献だ!将軍に就任したときに一度だけ見せてもらったことがある。


そうだこの人は・・・先王の側近だった男!


「会えて光栄ですよ。シエル様。」

「僕の素性を知ったうえで接触したんですか?」


僕は椅子から立ち上がるとネプチューンことユピテルにそう尋ねる。


「それもあります。現に貴方と貴方の仲間を引き離す為に水流を起こしたくらいですので。」

「貴方の仕業だったんですか?それよりもそうまでして此処に連れてきた目的は?」

「目的はただ一つ。貴方には騎士を辞めて頂き、ワース王国へ帰って欲しいのです。」


ユピテルの目的を聞いて僕は驚く。


「貴方は騎士に収まっていい器ではありません。国に戻り、王として君臨し、ワース王国に安寧を齎すべきです。私はその為にここに居る。そして貴方が王となった暁にはもう一度側近として私を使って欲しいのです。」

「ユピテル・・・」

「シエル様。お願いです!」


彼は頭を下げると大声で懇願した。


「どうか国にお戻りください!ワース国内では貴方が行方不明となってから混乱している!私はもう見ていられない!だから国へ戻り、王になってください!私は先王の恩返しがしたい!武に長け、貴族にも靡かない先王と似た人柄の貴方ならば・・・」

「ごめん。それはできない。」


しかし、彼の要望に僕は首を横に振った。


「僕にはオーディンと会って騎士として強くなった自分を見せる夢と約束がある。黙って国を出て行ったのは申し訳ないと思ってます。でも!僕は地位を無視してでも果たさないといけない約束なんです!」

「・・・貴方は間違っている!」


ユピテルは僕の答えに眉を寄せ、剣を手にした。


「外へ出なさい!本当に騎士としてこの先を旅できるのかを試します。それが出来ないようなら私は力づくでも連れて帰る!」


甲を被って十二神騎ネプチューンとして立ちはだかると僕もまた静かにエクスカリバーを手にして叫んだ。


「・・・望むところだッ!」

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