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Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜  作者: JACK・OH・WANTAN
第七章:スコートの絶景編
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第51話:スコート共和自治体

前回までのあらすじ

造船の街マルケイルに到着したシエル一行は冒険の足となる船の入手しようと試みる。そんな中、嘗て原初の騎士団と呼ばれた”円卓の騎士団”が使用していた船エール・ブランシュ号を一人で修繕する獣人の船大工エルデと出会う。


シエル達は彼の悲願であるエール・ブランシュ完全修繕を手伝う事になるが帝国軍の諜報部ジョッキーの襲撃により一時戦闘状態となる。帝国側はゴーレムを投入し危機一髪と思われたその時。十二神騎の一人であるアテナことミネルバの援護によって事なきを得た。


その後、船工房が襲撃されてしまい工房長カークスが捕まったことを知ったシエル一行とエルデ、ミネルバは作戦を立てて奪還作戦を決行する。


オラルドの首相として暗躍していたロワ帝国軍大佐アヌビス麾下と戦うも彼の使用した魔石によってエルデが獣化してしまう。


シエルは懸命に彼を止めて正気を取り戻させようと奮闘した末、風の精霊シルフの顕現によりエルデは正気を取り戻すと見事アヌビスを倒すことに成功する。


アヌビス追放語・・・カークスら船工房の助けもありエール・ブランシュは嘗ての姿に近い姿へ修繕されると同時にシエル達の旗船となった。


こうして”白翼の騎士団”を立ち上げ、風の精霊とエルデを四人目の仲間に加えたシエルはエール・ブランシュをマルケイルから出航させるのだった。

 マルケイルを出航してから一晩経った朝。僕は自室で窓から差す陽の光に照らされて目を覚ました。


「ん・・・んん~!もう朝か・・・」


ベッドから半身を起こすとやや狭いながらも快適に過ごせそうな自室を見渡す。簡素な机と椅子、自分の荷物しか置いていないが改めて実感する。


「遂に始まったんだな!騎士団としての冒険が!!」


高鳴る思いを抑えつつ起床すると身支度をして自室を出るとそのまま厨房と併設されているリビングへ顔を出すとソファに座っている人物に声を掛けられた。


「あらシエル。早いのね。」

「おはよう。ルーチェ。」


読書をしていたルーチェに挨拶を返すといつもの黒いローブではなく華奢な白い脚が露出した部屋着姿にドキリとなりそうだった。直後、彼女は無言で微笑みながら「何?」と言わんばかりにこちらを見つめてくる。


「どうしたの?私の顔に何か付いてるかしら?」

「あ、い、いや・・・いつもと違う服装をしてたからちょっと驚いただけだよ。」

「あら?私には似合わなかったかしら?」


ジトっとした目を向けてくるルーチェに慌ててそう返す。


「あ、ううん!そんなこと無いよ!」

「うふふふふっ」


そんな僕に彼女はクスクスと笑い声を上げた。・・・なんなんだよ。すると甲板へ続くドアが開くとエルデが部屋に入室してきた。


「あっ!おはよう。エルデ。」

「あぁ」

「エルデ君も早いのね。」

「船の整備をしねぇといけねぇからな。それに操舵とか帆を上げたり降ろしたりして航路も変えねぇといけねぇ。」


エルデはそう言うと首に掛けているタオルで顔を拭きながら僕達に続けて言った。


「それより丁度良かった。二人に話してぇことがあったからな。」

「僕とルーチェに?」

「あぁ。今後の行き先についてだ。」


◇◇◇


「今後の行き先?」


場所を変えて厨房の前にある椅子に座る机に地図を広げてエルデを見た。


「先ず俺達はマルケイルを出航して今は”ノース・エリア”と呼ばれる海域を北上している。」


エルデは地図上で僕達の現在地を指す。


「この海域は”ヌルウェー海域”に近い海で更にこの先を進むと北極へぶつかっちまう。」

「つまりヌルウェー海域より北に進むと極寒の海に突入してしまって危険ということね。」

「確かに今も少し肌寒いけど・・・何が危険なの?」


この先が危険と言う二人に僕はそう尋ねる。


「北極圏内は氷点下になる極寒の地だ。下手をすりゃ凍えてお陀仏になる。それと・・・」


エルデはふと窓から見える海に目を向けた。僕もそちらに視線を向けるとそこには大きな氷の塊がエール・ブランシュの脇を素通りして海に流れていく様子が見えた。


「ええっ!?大きい!!今のって・・・氷?」

「氷塊だ。幸いあれは小さいから問題ねぇがデカいやつに当たればエール・ブランシュも無事じゃ済まねぇ。」

「つまり・・・最悪沈没する可能性があるということね?」


ルーチェの言葉に彼は深く頷いた。


「じゃあ。どうしたら・・・」

「安心しろ。策はある。」


エルデはそう言って二つの手段を提案した。


「一つはこのまま南へ引き返し、ロンデンへ向かう。或いはこのまま少し北に上り、”スコート共和自治体”を経由して南下するかだ。」

「”スコート共和自治体”って確かブリテン島の北にある?」

「そうだ」


ブリテン島。それは僕の故郷ワース王国と許嫁であるディナの国、ウェールズ王国。そしてカイの出身であるロンデン共和国の三つに分類される。しかし実はブリテン島にはこの三国とも一切交流がない地域が存在する。それがスコート共和自治体だ。


ここは国ではなく”地域”という位置づけであるものの何処の国にも属していない場所であり、ワースやロンデンは疎か戦闘に特化したウェールズすらも戦略的価値が無いと見なして併合していない。


「俺はどちらかと言うと後者の航路で進みたい。幾ら航海を始めたばかりとはいえ備えは十二分の方がいい。これを相談出来んのはお前ら二人だけだしな。」


確かに航路についてまともに話せる面子は今の所、僕とルーチェだけだろう。シルヴァは航路のことは疎か騎士の知識も分からないままだし、カイに関しては真剣に聞いてはくれるが戦いのことにしか関心がなさそうだ。


「私はエルデの意見に賛成ね。スコート共和自治体はブリテン三国と孤立こそしているものの平和主義と中立を掲げている国。騎士団の船の補給くらいなら受け入れてくれるわ。」

「分かった。二人が言うなら賛成だよ。備えは大いに越したことはないからね。」

「・・・決まりだな。」


満場一致の回答が出たことでエルデは椅子から立ち上がった。


「それじゃあ船をスコート共和自治体へ向ける。シルヴァとカイが起きたら伝えてくれ。」

「分かった!」


僕もまたエルデに頷きを返すと次なる目的地をスコート共和自治体に定め、上陸する準備を始めるのだった。


◇◇◇


 霧が深い正午の時間帯。うっすら空に見える太陽の下、僕らを乗せたエール・ブランシュ号はブリテン島北部に位置するスコート共和自治体に辿り着いた。


「ふぁぁ何?着いたの?」

「テメェが昼前まで眠り被ってる間に着いたわ!」


欠伸をしながら未だ眠たそうな顔をするシルヴァにカイはそう言った。船旅を始めてからシルヴァはいつもこんな調子だ。相変わらず朝に弱いみたい。


「にしても霧が少し深いな。」

「スコート共和自治体の周辺は一日中靄が立ち込めているわ。何故、そうなっているかは分からないけど一説ではヌルウェー海域方面の冷気とワース王国方面から流れてくる温暖な空気がぶつかって生じている・・・みたいだけど近年だとこの説は薄いとされているわ。」


ルーチェは霧がかった景色を見てそう説明する。


「どっちでもいい。とっとと補給して立ち去るぞ。ただ補給しに寄っただけだろ?」

「そうだけどせっかく寄ったらなら散策してみようよ。」

「ケッ、好きにしろ。オレは昼寝するだけだ。」


カイはめんどくさそうに手を挙げながら僕らに背を向けると甲板にかかっているハンモックに寝転がって昼寝してしまった。


「何よ。言うだけ言って・・・眠り被ってたのはアンタもじゃない!」

「そう言うな。アイツは好きにさせりゃいい。」


カイの言動に怒るシルヴァをエルデは軽く宥める。この二人、本当に喧嘩ばっかりするなぁ・・・まぁ、最近はエルデが仲裁してくれるから助かってるけど。


「俺は船のメンテナンスがてら補給もしてくる。時間はかかるが一人でもできる作業だ。シエル達は街に行ってみたらどうだ?船番は俺とカイでやるからよ。」

「分かった。じゃあお言葉に甘えて散策してくるよ。」


エルデの提案に僕は頷いてシルヴァ、ルーチェに向き直る。


「じゃあ僕達は街に行ってみようか?」

「そうね。」

「うん!行こっ!」


◇◇◇


「あの船・・・成程。ミネルバがオラルドへ向かっていたのはそう言う事ですか。」


その頃、停泊したエール・ブランシュ号を物陰からこっそり見つめていた人影がそう呟いた。


「もしあの船に陛下のお孫様が乗船されているなら・・・アレスが一戦交えた者が本当にそうなら・・・。私は説得しなければならない。」


人知れず意味深な発言をした人影はそのまま街の方へ姿を消していくとカイはそっと目を開けて人影が去っていくのを見届けるのだった。

皆さんこんばんはJACKです。本日よりChevalierの連載を再開致します!


待ち望んでおられた方大変長らくお待たせしました。


シエル達の新たな冒険がスタートします!


尚、連載再開に合わせ50話以前の投稿話の内容を修正致しました。シナリオは大きく変わっておらず誤字・脱字、一部の文章訂正を行っております。こちらも是非、ご確認ください。

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