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Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜  作者: JACK・OH・WANTAN
第五章:新天地 ローロッパ大陸上陸
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第38話:揺らぐ世界

 アフラン大陸からやや離れた赤道直下の海域・・・快晴の空と静かな海が広がる中、グングニル騎士団の船・・・『スレイプニル』の甲板にてオーディンが険しい表情で海を眺めていた。


「おい、オーディン」


そんな彼女にヘーニルが声を掛けると葉巻を口から離して白い煙を吐いた。


「なんだ?」

「派手にやってくれたな。あのゼウスのオッサンとたかだか剣を交えたせいで”世界連盟”加盟国はあたふたしてんぞ。」

「それはすまない・・・だが、結局奴とは決裂して終わったからな。」


オーディンはそう言うと申し訳なさそうにヘーニルを見る。


喜望峰にてゼウスと一戦交えたオーディンはあの後、両者決着を付けることなく物別れで終了した。しかし、一度刃を交えた事実は瞬く間に世界へ報じられ、やがて約20か国が加盟する国際組織”世界連盟”の耳にも届き、一時騒然となったのだ。


「んで?どうするんだ?アレスがロワ帝国に加担している以上、騎士の定義が揺らいじまうぜ?」

「十二神騎は元から特殊な存在だ。それをゼウスが意識しているからこそアレスを帝国に貸したのだろうな。」

「厄介なことになったなぁ・・・あんまり世界連盟を刺激するなよ?あれにはワースも加盟してるんだからな。」

「あぁ・・・分かっている。だが、それよりも・・・」


オーディンは空を見上げると眉を寄せて何かを感じとる。


「ゼウスや帝国より無視できない存在が現れたようだな・・・。」

「ねぇ、それって大丈夫なの?」


そんな彼女の言葉を聞いてヨルズが酒瓶を片手に現れる。


「臭っ!?おま、また酒吞んでるのか!?」

「そんなこと今はどーでもいいでしょ?それより!シエルちゃんが心配だよ!」

「・・・確かにそうだが。」


シエルを心配するヨルズにヘーニルも口ごもる。


「彼なら大丈夫だろう。今はその脅威に目を向ける必要がある。ヘーニル、針路を変えるぞ。フリッグにも海図の変更を伝えておけ。」

「あいよ。兎に角やべぇことになりそうなのは変わりねぇな。」

「よーし!アタシも頑張るよ!」


オーディンに頷いたヘーニルとヨルズは早速、動き出すと団員達に指示を送りだす。そんな中、彼女は再び海と空を無言で眺めると直ぐに船内へその姿を消していくのだった。


◇◇◇


その頃、喜望峰にある十二神騎本拠地、”ゼウスの城”では・・・


「ふむ、厄介な奴が・・・出てきたみてぇだな。」


十二神騎総長ゼウスもまたオーディンと同じく何かを感じ取ると玉座に座りながら険しい顔をする。


「あなた・・・」

「あぁ、ヘラ。おめぇも感じ取ったか。」


彼の伴侶であるヘラもまた何かを感じ取り険しい表情をする。


「ゼウス様、ヘラ様・・・私も何かを感じ取っていますゆえお気持ちは身中お察し致します。」


そんな二人の前に立つ山羊座を模した緑色の鎧を着た白髪の老人がそう呟く。


「ヘルメス、今は余計な詮索はやめましょう。」

「承知しております。しかし、これからどうなさいますかな?お集まりになりましたよ。一部を除いて・・・」


ヘルメスと呼ばれた緑の騎士は彼らの前にある長いテーブルを指すとそこには十個の椅子に座る様々な色と星座を模した騎士・・・十二神騎の面々が五人、甲で顔を隠しながら腰掛けていた。


「”ミネルバ”と”アレス”、”ヘスティア”に”ユピテル”以外の面々は揃いましたね。」

「お母様、ユピテル兄様の話は禁句ですわよ?」


ヘラの呼んだメンバーの一人に対して双子座を模した黄色の鎧を着た女騎士・・・アルテミスは赤い瞳を大きくしてそう彼女に告げた。


「ダイアナ、兄貴の事はお袋も心配してんだ!今は居なくても仕方ねぇだろ!」


アルテミスに対して蟹座を模した朱色の鎧を着た屈強な体格の騎士・・・ウルカヌスは机を叩きながらそう反論する。


「ではヘヴァイ兄様はユピテル兄様のことを擁護するのですか?魚座の青い鎧と”ネプチューン”の名を授かったのに我々を裏切った男を・・・」

「ダイアナちゃん。今はその話をしてる暇じゃないわ。」


静かに怒るアルテミスを獅子座を模した橙色の鎧を着た屈強な騎士・・・アポロンは女性の様な口調で彼女を宥める。


「それよりゼウス様・・・我らが集められた理由をお聞かせ願いましょうか?」


蠍座を模した黒い鎧を着た騎士・・・ハデスがまるで老婆の様な声でゼウスに集められたことを尋ねた。


「そうだな、残りのメンバーは来れねぇ都合もある。そろそろ話すとするか。」


ゼウスは深く頷くと十二神騎メンバーを集めた理由を告げる。


「お前達、周知している奴らも居ると思うが・・・最近になって”聖剣エクスカリバー”を扱う奴が現れた。」

「確か帝国に居るアレスが直接会った・・・と伺っておりますが・・・」

「そうだダイアナ。今の所アレスが接触している。」

「聖剣なんて代物・・・何処で手に入れたか知らねぇがまさか本当にあるなんてな。」


ウルカヌスはそう呟きながら大きい手で拳をつくった。


「ねぇねぇ!聖剣を扱ってる人ってアタシと同じ年の男の子なんだよね?会ってみたいなぁ~」

「ヴィーナまさか・・・ソイツに興味があるのか!?」

「大丈夫!お兄ちゃんも大好きだよっ!」

「おぉ~流石は俺の可愛い妹~」


乙女座を模した桃色の鎧を着る少女・・・アプロディアにウルカヌスは嬉しそうな声を上げた。


「あら、アプちゃんも男の子に興味を持つ時期が来たのねぇ~」

「カカカカカカカカッ、ヴィーナお嬢様が生まれた時はまだあんなに小さかったのに・・・今では我と同じ身長にまでなって・・・」

「アポロもゼウスお婆ちゃんも大げさだよ。」


ウルカヌスに乗じて喜ばしい雰囲気になるアポロンとハデスにアプロディアはそう答えた。


「兎に角だ」


ゼウスの声で一同は静かになると彼に顔を向け直す。


「最近になって嫌な気配も感じ始めた。アレスからは聖剣を扱っている少年の名が何なのか返答は来ていないが・・・俺達は”保護”する権利がある。・・・彼は神に選ばれた”親王みこ”だからな・・・。」

「はいはーい!その子、アタシが保護したーい!そして結婚するの!」

「けっ・・・結婚だと!?正気か!?ヴィーナ!!」

「いや、その話だが待ってくれねぇか?ヴィーナ」


真っ先に手を挙げたアプロディアにゼウスはそう伝える。


「今、ミネルバが親王の行きそうな”マルケイル”に自分の騎士団を率いて向かっている。親王がこれから向かう可能性は高いからな。それを待つとしよう。」

「はぁーい」


ゼウスの指示にアプロディアは残念そうに返事をする。


「・・・てぇことで話は終わりだ!解散!」


こうしてやや短い十二神騎の集会は終了すると各々離席してその場を去っていく。残ったゼウスとヘラは暫く沈黙を貫くとようやくヘラが口を開いた。


「あなた、親王は・・・私達に付いてきてくれるのでしょうか?」

「分からん。それも気になるが今はこの不穏な感覚を放ってる奴の正体だ。ヘルメスが各地の情報を集めているがこれといった情報はねぇな。」

「えぇ、耳に入ってくるのはアレスの所属する帝国の艦がアイルを襲撃したこととウェールズ貴族がアルステルへ向かう途中に殺害されたこと・・・あとは”ウェールズ王女との結婚前夜に行方を眩ませた王子”の話題くらいですわね。」

「まぁ、もう少し様子を見るとしようぜ・・・まだ、見定める時だ。」


ゼウスはそう言うと王座から立ち上がり、黄昏の空に包まれている喜望峰の景色を窓から見つめるのだった。

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