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Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜  作者: JACK・OH・WANTAN
第四章:ダイダニック号
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第29話:犯人探し

ルーカン卿殺害事件を受け、マグカップ船長から調査を依頼された僕らは現場を確認するチームと船内へ聞き込みに回るチームに別れ、早速行動に移した。


部屋を確認するチームとなった僕とカイは現場となった三階の娯楽室へ向かっていた。


「にしても・・・改めて見ると派手にやってくれてんな。」


部屋に入るや否や、カイは辺りを見渡してそう呟いた。部屋は事件が起こった状態のままとなっており、娯楽室は僕らや船員以外の出入りは禁止とされた。


「先ず何処を調べるかじゃねぇか?シエル。」

「うん、まずは・・・」


僕は下に顔を向けると未だ残されているルーカン卿の亡骸に目を移す。船に乗り込む前、この人に自分の素性を明かして説得したけど・・・まさかこんな事になるなんて。


「貴方を悪い様にはしない。失礼」


亡骸に届かぬ言葉を漏らすと僕はルーカン卿の倒れた姿勢、身につけているものやその周りの痕跡をくまなく見る。


せめて・・・何か手がかりがあれば良いんだけどな・・・うん?


ふと、ルーカン卿の右手を見た僕は眉を寄せる。この右手・・・なんで人差し指だけ伸ばしているんだ?あれ?指先に何か書かれている?


「なんだ?何か見つかったのか?」

「うん、この右手の人差し指の先なんだけど・・・床に何か書かれているんだ!」

「あぁ?どれどれ?」


カイはじっと青紫色のカーペットが敷かれた床に目を向けた。


「これは英文字だな・・・CA…T……N?字が薄れてて所々読めねぇがこれは所謂ダイイングメッセージって奴かもな。」

「ダイイングメッセージ?」

「あぁ、このマヌケ野郎は死に際に犯人の証拠を残す為に咄嗟に自分の血でコイツを書いたに違いねぇ。」

「でもCATNって何だろう?」

「人の名前じゃねぇか?この字だと"キャテン"と読めなくもねぇ。恐らくソイツが犯人だ。」


カイの推理に僕は納得する。つまりルーカン卿は犯人の名前を死に際に床に書いて残したのだ。


「でも、そうなると何故ルーカン卿は犯人の名前を知ったんだろう?少なくとも彼は単身で船に乗っていたし他の人と接することも無かった筈だよね?」

「知り合いのカスとたまたま会ってソイツとなんかあって殺られたんじゃねぇのか?」

「そう・・・なのかな?」

「あん?んだこれは?」


すると今度はカイが床に何か落ちているのに気付いてそれを拾い上げる。


「それって・・・ペン?」


彼が拾ったのは黒い塗装に金文字で"キャプテン"という文字が書かれた如何にも高そうなペンだった。


「無駄に高級な雰囲気を醸し出してんなぁ。多分、このカスの私物だろうよ。」

「じゃあそれは犯人に抵抗する時に滑り落ちたって事なのかな?」

「多分な。」

「他に手がかりは・・・無さそうだね。」


部屋を見渡しながらそう言うと娯楽室の扉がゆっくり開き、船員が一人入ってくる。


「あのう・・・どうでしょうか?」

「手がかりはこれ以上にねぇな。」

「そ、そうですか・・・」


カイの言葉に船員は肩を落とす。


「あのすみません。」

「はい何でしょうか?」


僕はふと船員にある事を尋ねた。


「船員さんの中に"キャテン"という方はいらっしゃいますか?」

「キャテン・・・ですか?いえ、そんな者は在籍しておりませんね。私は船長補佐のビルと申します。」


ビルと名乗った船員はキャテンという名の船員が居ないことを答える。


「そうですか・・・」

「と、なると床に書いてあった名前の奴は船員以外の奴って事だな。」

「後はシルヴァとルーチェの聞き込み次第かな?」

「顧客リストも確認するか?アイツらが持ってるらしいからな。」

「うん、じゃあ一旦この辺で部屋の確認は終わろう。」


こうして僕とカイは現場確認を終えるとシルヴァ、ルーチェの聞き込みチームと合流すべく乗務員室へ戻ることにするのだった。


◇◇◇


「それで?どうだった?」

「ええ、先ず貴方達のいうキャテンと言う名前だけどそんな客はいなかったわ。」

「そっか・・・」

「念には念をだ。まずは聞き込みの内容を聞こうじゃねぇか。」


乗務員室へ戻った僕とカイは聞き込みチームと合流し、彼女達に状況を尋ねると先ず、シルヴァが第一発見者である給仕担当の船員から聞き込んだ内容を話した。


「うん、先ずきゅーじ担当?のミラさんだけどこの人はルーカン卿からお酒とおつまみの注文を受けて二階の食糧庫に行ったんだって。」

「それは本人も言ってたな?んで?なんで言ってたんだ?」

「それから頼まれたものを持って行ったら・・・貴族のおじさんが倒れてたんだって・・・」

「つまりルーカン卿はその間に殺されたって事になるね。」


第一発見者である給仕担当のミラからの証言を聞いて僕はそう推測する。


「ってなるとコイツがあのカスを殺した確率は低そうだな。」

「そうね、あの時彼女の傍らには確かに赤ワインとつまみの入ったワゴンがあったから食糧庫へ行ってたのは間違いなさそうね。」


ルーチェも深く頷き、ミラが白である事に同意する。


「他に何か聞いてる?」

「後は無いわ。皆この時間は部屋に篭ってたらしいから。」

「そっか・・・」


首を横に振るルーチェに僕は肩を落とす。


「あ、あのさ・・・」


するとシルヴァが恐る恐る手を挙げながら口を開いた。


「これ、アタシが聞き込みしてた時に小耳に挟んだんだけど・・・」

「何でもいいよ。話して」


僕は微笑みながらシルヴァの話を聞く。


「船内に悲鳴が聞こえる前、誰かが一階にあるゴミ捨て場へ入っていくのを見たんだって。」

「ゴミ捨て場?」

「うん」

「恐らく一階にあるトラッシュルームの事ね。でもあそこは船員さんしか入れない場所だった筈よ。」

「ただゴミを捨てに行っただけじゃねぇのか?余計な時間取らせんじゃねぇよ。」

「そんなに言わなくたって良いでしょ!」

「でも、なんか引っかかるな。ちょっと見に行くだけでもいいんじゃない?」

「テメェがそこまで言うんなら行ってみる価値はあるな。」


僕の提案にカイ以外の二人もこくりと頷く。


「決まりだね。じゃあ一度見に行こうか?」


◇◇◇


ダイダニック号一階・・・トラッシュルーム。ここには船内で出た廃棄物を焼却する場所であるが関係者以外立ち入り禁止となっており、部屋の前にある鉄格子は固く閉ざされていた。


「んで?来たみたのはいいがただ焼却炉があんだけだぞ?」

「そうね、ここには何も手がかりはなさそうね。」

「やっぱ時間の無駄だったか?」


カイとルーチェがそう言った瞬間、僕は何かを見つけて彼らを呼び止める。


「待って!焼却炉の中に何かあるよ!」

「ああ?ゴミかなんかじゃないのか?」

「いや、でも・・・それにしては」


僕は鉄格子の隙間から中を覗き込むとそこには船員のものと思しき赤く染まった服が入っていた。


あの服・・・赤く染まってる?あれって・・・


「何?あれ・・・血の跡だよね?」

「どっからどう見てもそうだろうがよ・・・」


明らかに服を赤く染めているものは血痕であると分かり、シルヴァとカイの顔が青くなる。


「待って!服の胸元に何か付いているわ!」

「えっ?」


箱を指差すルーチェに僕は中にあるその服の胸元を目を細めながらじっと見つめた。


あの胸元・・・金色のバッジがあるぞ?何だろう英文字で何か描いてあるような・・・しかもこの文字って・・・


「ッ!?」


服の胸元に付いている金色のバッジの文字を見て僕は目を見開いて驚くと同時に今回の事件の犯人が彼であると確信した。


「どうしたのシエル君?」


戸惑う僕にルーチェが恐る恐る声を掛けてくる。


「・・・今回の事件の犯人が分かったかも知れない。」

「えっ!?」

「何?本当なのか!?シエル!」

「うん、まだ確証は持てなし信じたくはないけど・・・ルーチェ、君が言ったじゃないか?」

「えっ?」


キョトンとするルーチェを見て、僕はこう告げた。


「"人を見かけで判断しちゃいけない"って。」

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