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Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜  作者: JACK・OH・WANTAN
第四章:ダイダニック号
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第26話:謎の魔導士ルーチェ

「き、君は?」


声を掛けてきた少女に僕は恐る恐る声を掛ける。


銀髪のセミロングに青い瞳をした眼、頭には黒いとんがり帽子を被り、背丈は僕らよりも低く見た感じ12~3歳くらいの容姿に見えるもどこか大人っぽい感じを放っていた。身に着けている黒いローブは手触りがよさそうな素材をしており、手にしている杖を見るからに彼女が魔法使いであることを示していた。


・・・この子は誰なのだろう?


「誰だ?てめぇ」


カイは眉を寄せながら少女に尋ねる。


「通りすがりの魔導士よ。怪しいものじゃないわ。」

「全く知らねぇ奴がいきなり声をかけて来ると怪しむのは当然だろうがよ」

「あら、思ったより用心深いのね。嫌いじゃないわ。」

「茶化すんじゃねぇ!要件を言え。」

「えぇ、用件はあるわ。今、私一人でこの船に乗っているんだけど個室が埋まっているらしくて宿泊できないの。だから申し訳ないけどご一緒出来たらなと思って・・・」

「あのなぁ、誰かも分からねぇアマを一緒にしてやるほどオレ達はバカじゃねぇ。馬鹿にするのも程々にしろよカス」

「カイ、そこまで言わなくてもいいんじゃない?」


相変わらず口が悪くなるカイを僕は宥めながら注意する。


「じゃあテメェは良いのかよ?」

「困っているなら助けるよ。僕は問題ないし」

「アタシも問題無いわよ。」

「お前ら・・・危機感てのは無ぇのか?」


少女と一緒に泊まることを承諾する僕とシルヴァにカイは冷や汗を流す。


「優しいのね・・・流石、十二神騎のアレスと互角にやり合った聖剣使いね。」

「「ッ!?」」


彼女がそう言った途端、僕らに戦慄がはしり、思わず身構えた。


「ど、どうしてそれを知っているんだ!?」

「アンタ、アタシ達がアレスと戦ったことを知ってるの?」

「てめぇ、やはり怪しいと思ったが・・・帝国のスパイか?」

「あら、すぐ疑うのは良くないと思うわ。私がいつ帝国のスパイと言ったかしら?」

「そ、それは・・・」

「簡単にそれを言う馬鹿が何処に居んだよ?」

「私は帝国のスパイでもないし、アレスとは面識があるけど知ってるくらいよ。それに・・・」


少女は懐から何かを取り出すと僕らにそれを投げ渡してくる。


「これは・・・新聞?」

「新聞がなんなのよ・・・?」

「やっぱり見てないのね。記事の見出しを見てみなさい。」


彼女にそう言われ、僕らは新聞の見出しにデカデカと載っている文言へ目を向けた。


そこには『十二神騎兼ロワ帝国軍アレス准将率いる艦隊、アイル共和国への侵攻に失敗。阻止したのは騎士である聖剣を手にした一人の少年。ロワ帝国はこの少年に多額の懸賞金を懸けることを検討。』と記載が書かれていた。


「な、何よこれ!?」

「これって・・・僕らの事だよね!?」

「オレ達以外に誰が居るんだよ!?」

「それに・・・懸賞金!?」


新聞に書いてある内容を見て僕は冷や汗を流す。つまり帝国は僕に懸賞金を懸ける・・・お尋ね者にするという意味だった。


「安心しなさい。懸賞金を懸けているのはあくまでもロワ帝国だけ。情報も多分、向こうが敢えてワールドタイムズに情報を流したと思うわ。裏を返せば・・・貴方は騎士として世間に認められたという事よ。」

「でもなんで帝国は僕に懸賞金なんか・・・」

「アイツらの事だ。今回の侵略作戦をお前のせいにしたいんだろうな。」

「どうしてそんなことするの?」


帝国の思惑にシルヴァは首を傾げる。


「今回指揮をしたアレスは帝国軍准将の肩書を持っているけど彼は十二神騎・・・つまり帝国にとっては部外者となるわ。帝国は十二神騎からアレスを借りている立場にあるから治外法権で彼の責任には出来ないの。その代わり貴方達も戦った通り、彼らはかなりの実力を持つわ。」

「でもそれならシエルも帝国の人間じゃないわよ?なんでシエルがお尋ね者になるのよ。」

「帝国が貴方・・・シエル君に懸賞金を懸けたのは恐らく”それ”を扱えるからよ。」


少女はそう言うと僕の腰にある剣・・・エクスカリバーを指差した。


「エクスカリバーが・・・狙い?」

「厳密にはエクスカリバーとそれを扱える貴方を帝国が欲しているからよ。神の使徒である精霊の力なんてもの・・・軍事国家の彼らからしたら欲しくない訳無いんじゃないかしら?」

「確かに帝国はドラゴンやゴーレムまで手中に収めてる奴等だ・・・聖剣を扱えるシエルを狙うには納得いく理由だな。ケッ、相変わらずムカつくクソな連中だ。」

「私が貴方に声を掛けた理由・・・それはこの事を伝える為でもあったの。聖剣の事は魔法を研究するうちに知ったくらいだけどね。・・・どう?それでも私を敵と疑うかしら?」


彼女の言葉に僕らは顔を見合わせる。


確かにこの人が敵ならこんな事をわざわざ僕らに教えるメリットも無いし、仮に敵だとしたら帝国軍がダイダニック号を抑えてでもやってくる筈だ。まだ彼女の疑いが晴れるわけじゃないけど少なくとも今は敵じゃないと思う。


「分かった・・・信じるよ。」

「シエルが信じるならアタシも信じるよ。」

「まだオレは疑うが少なくとも今は敵じゃねぇと理解した。」

「話が分かって助かるわ。なら互一緒していいかしら?」

「勿論だよ!あっ!自己紹介まだよね?アタシはシルヴァ。」

「改めて僕はシエル。宜しくね。」

「・・・カイだ。」

「ルーチェよ。宜しく頼むわね。頼もしい騎士さん」


ルーチェと名乗った魔法使いの少女はとんがり帽子を脱いで微笑む。


こうして僕らはダイダニック号にいる間、彼女と行動を共にすることになるのだった。

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