第26話:謎の魔導士ルーチェ
「き、君は?」
声を掛けてきた少女に僕は恐る恐る声を掛ける。
銀髪のセミロングに青い瞳をした眼。頭には黒いとんがり帽子を被り、背丈は僕らよりも低く見た感じ12~3歳くらいの容姿に見えるもどこか大人っぽい感じを放っている。・・・この子は誰なのだろう?見た感じ魔法使いの様だけど。
「誰だ?てめぇ」
カイは眉を寄せながら少女に尋ねる。
「通りすがりの魔導士よ。怪しいものじゃないわ。」
「全く知らねぇ奴がいきなり声をかけて来ると怪しむのは当然だろうがよ」
「あら、思ったより用心深いのね。嫌いじゃないわ。」
カイの言葉をあしらうかのように少女は微笑みを見せる。
「茶化すんじゃねぇ!要件を言え。」
「えぇ、用件はあるわ。今、私一人でこの船に乗っているんだけど個室が埋まっているらしくて宿泊できないの。だから申し訳ないけどご一緒出来たらなと思って・・・」
「あのなぁ?誰かも分からねぇアマを一緒にしてやるほどオレ達はバカじゃねぇ。馬鹿にするのも程々にしろよカス」
「カイ、そこまで言わなくてもいいんじゃない?」
相変わらず口が悪くなるカイを僕は宥めながら注意する。
「じゃあテメェは良いのかよ?」
「困っているなら助けるよ。僕は問題ないし」
「アタシも問題無いわよ。」
「お前らに危機感ってのは無いのか?」
少女と一緒に泊まることを承諾する僕とシルヴァにカイは冷や汗を流す。しかし、彼女の次に放たれた言葉に僕達の考えは覆った。
「優しいのね。流石、十二神騎のアレスと互角にやり合った聖剣使いね。」
「「ッ!?」」
少女がそう言った途端、僕らは思わず身構えた。なんでアレスと戦っていることを知っているんだ!?
「アンタ、アタシ達がアレスと戦ったことをなんで知ってるの?」
「てめぇ、やはり怪しいと思ったが・・・帝国のスパイか?」
シルヴァとカイは少女から距離を取って疑いをかける。しかし当の本人は表情一つ変えずに反論した。
「あら、すぐ疑うのは良くないと思うわ。私がいつ帝国のスパイって言ったかしら?」
「そ、それは・・・」
「簡単にそれを言う馬鹿が何処に居んだよ?」
「私は帝国のスパイでもないし、アレスとは面識があるけど知ってるくらいよ。それに・・・」
少女は懐から何かを取り出すと僕らにそれを投げ渡してきた。
「これは・・・新聞?」
「新聞がなんなのよ・・・?」
「やっぱり見てないのね。記事の見出しを見てみなさい。」
彼女にそう言われ、僕らは顔を見合わせながら新聞の見出しにデカデカと載っている文言へ目を向けたそこには『十二神騎兼ロワ帝国軍アレス准将率いる艦隊、アイル共和国への侵攻に失敗。阻止したのは騎士である聖剣を手にした一人の少年。ロワ帝国はこの少年に多額の懸賞金を懸けることを検討。』と記載が書かれていた。
「な、何よこれ!?」
「これって・・・僕らの事だよね!?」
「オレ達以外に誰が居るんだよ!?」
「それに・・・懸賞金!?」
新聞に書いてある内容を見て僕は冷や汗を流す。つまり帝国は僕に懸賞金を懸ける・・・お尋ね者にするという意味だった。
「安心しなさい。懸賞金を懸けているのはあくまでもロワ帝国だけ。情報も多分、向こうが敢えてワールドタイムズに情報を流したと思うわ。裏を返せば貴方は騎士として世間に認められたという事よ。」
新聞の内容を見て驚く僕達に少女はそう説明する。だとしても自分に懸賞金が付いているのは誰だって焦っちゃうよ。
「でも帝国はなんで僕に懸賞金なんか・・・」
「アイツらの事だ。今回の侵略作戦の失敗をお前のせいにしたいんだろうな。」
「どうしてそんなことするの?」
帝国の思惑に疑問を持つシルヴァに対して少女が答えてくれた。
「今回指揮をしたアレスは帝国軍准将の肩書を持っているけど彼は十二神騎。つまり帝国にとっては部外者となるわ。帝国は十二神騎からアレスを借りている立場にあるから治外法権で彼の責任には出来ないの。」
「でもそれならシエルも帝国の人間じゃないわよ?なんでシエルがお尋ね者になるのよ。」
「何故、シエル君に懸賞金を懸けたのかは恐らく”それ”を扱えるからね。」
少女はそっと僕の腰にある剣・・・エクスカリバーを指差した。
「エクスカリバーが・・・狙い?」
「厳密にはエクスカリバーとそれを扱える貴方を帝国が欲しているからよ。神の使徒である精霊の力なん
てもの・・・軍事国家の彼らからしたら欲しくないなんて無いんじゃないかしら?」
彼女の言葉を受け入れたくはないが帝国が相手なら腑に落ちる。
「確かに帝国はドラゴンやゴーレムまで手中に収めてる奴等だ・・・聖剣を扱えるシエルを狙うには納得いく理由だな。ケッ、相変わらずムカつくクソな連中だ。」
「私が貴方に声を理由はこの事を伝える為でもあったの。聖剣の事は魔法を研究するうちに知ったくらいだけどね。どう?それでも私を敵と疑うかしら?」
僕らは互いに顔を見合わせて少女を見る。確かに敵ならこんな事をわざわざ僕らに教えるメリットも無いし、仮に敵だとしたら帝国軍がダイダニック号を抑えてでもやってくる筈だ。まだ彼女の疑いが晴れるわけじゃないけど少なくとも今は敵じゃないだろう。
「分かった・・・信じるよ。」
「話が分かって助かるわ。なら互一緒していいかしら?」
「うん。疑ってごめんね。」
僕達は警戒しつつも少女に謝罪し、同席することを承諾した。
「あっ!自己紹介まだよね?アタシはシルヴァ。」
「改めて僕はシエル。宜しくね。」
「・・・カイだ。」
「ルーチェよ。宜しく頼むわね。頼もしい騎士さん。」
ルーチェと名乗った魔法使いの少女はとんがり帽子を脱いで微笑む。こうして僕らはダイダニック号にいる間、彼女と行動を共にすることになるのだった。




