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Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜  作者: JACK・OH・WANTAN
第四章:ダイダニック号
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第25話:ダイダニック号

これまでのあらすじ


シルヴァを仲間に加え、アイル共和国へ辿り着いたシエルは街中で水の精霊に纏わる話を聞く。


そんな中、ロワ帝国の兵士達と戦う僧兵カイと出会ったシエルは彼の自宅で帝国の野望を聞き、カイの祖母から彼の過去を聞かされる。


翌朝、帝国軍がアイルの街に襲撃を行い、現場に向かったシエルとカイは十二神騎の一人にしてロワ帝国准将でもあるアレスと邂逅する。


アレスはシエルの事を知っている素振りを見せた後、彼に水面の洞窟へ向かう様言い残し、その場を去っていった。


一度カイの自宅へ戻ったシエルは水面の洞窟が水の精霊がいる場所であると聞かされ、アイル共和国を帝国の侵略から守る為、アレスと決着を付ける事にする。


水面の洞窟でアレスと二度目の邂逅を果たしたシエルはアイル共和国を守りたいというカイの強い意志に呼応して顕現したウンディーネの力を得ると何とかアレスを退けることに成功し、帝国軍はアイル共和国から撤退して行った。


ロワ帝国軍が撤退した後、エクスカリバーの事をカイに話したシエルは全ての精霊と会うことを決意し、カイを二人目の仲間に加えると次なる目的地をローロッパ大陸にあるオラルド王国へ定めた。


更に時を同じくしてアイル共和国で起こったことを新聞で知ったシエルの恩師オーディンとラグナロク騎士団は彼の旅立ちを喜ぶ傍ら、急遽行き先をアフラン大陸へ移す・・・。


シエルの師匠との約束を果たす冒険・・・それはやがて全ての精霊と出会う為の旅へと変わっていくのだった。

 活気を取り戻しつつあるアイルの港町・・・喧騒が響く中を僕らは進み、船が停泊する港の方へ足を向けていた。


「あと少しで”オラルド王国”行きの船がある港へ着く。」


先頭を歩く薙刀を担いだ少年・・・カイは僕とシルヴァへ顔を向けながらそう伝える。


「港も結構栄えているんだな・・・それに貴族も多いような気がする。」

「オレ達が乗る船は貴族も利用する。まぁ、関わることは殆どねぇがな。」

「貴族って・・・国のお偉いさんとかだよね?なんでここの港の船を利用するのかしら?」


貴族が客船を利用することにシルヴァは首を傾げる。


「幾ら金持ちの貴族でも船までは簡単に入手出来ねぇ。それに手に入れたところで管理や整備もしねぇといけねぇからな。騎士団みたいに船を根城にしてるわけでもねぇしドケチあのクソ共はこうして客船も使うんだよ。」

「へぇえ~船を持つって大変なのね。」


シルヴァの疑問にカイは鋭い目を向けながら説明すると彼女は納得の表情を浮かべた。


船か・・・僕も師匠みたいに騎士団を率いるとなったらいずれは手に入れる必要があるよね・・・。客船ばかりで移動するのも効率が悪いし、便も限られてくる。


・・・仲間が増えてきたら考えないといけないな。


「着いたぞ。ここがオラルド行の船がある港だ。」


そうこうしている内に港へ到着するとカイは立ち止まって目の前に停泊する船を指差した。


「うわぁ・・・」

「凄い!おっきい!!」


船を見た途端、僕とシルヴァはその外観に圧倒されて目を輝かせながら釘付けになった。


まるで城と見間違えるような大きさと白い塗装、のびのびと出来そうな屋上施設、船の上には帆ではなく煙突が配置されており明らかに最先端技術を詰め込んだ外見をしていた。


す、すごい!!帆船しか見たことないから変わった形をしてる要に見えるけど凄く大きい!!まるでワース城が船になったみたいだ!!


「このバカでかい船は客船”ダイダニック号”。約六日かけてアイルとオラルドを往復する定期船だ。帆が無いのはオラルドの造船技術で作られた”石油”を燃料とする動力で動いている。」

「石油?なんなのよ?それ」

「テメェ石油も知らねぇのか??」


石油を知らないシルヴァにカイは困惑する。


無理もない、彼女はずっと火精の森で暮らしていたし外の世界をあまり知らないのだ。


「石油は近年見つけられた鉱物資源のことだよ。”産業革命”が起こったのをきっかけにアイルは貿易大国に名を馳せたって聞いたことあるけど・・・まさか石油が船に使われていたのはビックリしたよ。」

「これまでアイルの”燃料型船舶”は鯨の油を使って運用していたらしいが石油が採掘されたことで劇的に進化したらしい。今じゃ多くの大国は石油が採掘される”油田”って所を血眼になって探してるらしいからな。」

「ふうんそんな事が起こってるんだ。」

「・・・っとそろそろ時間だな。あの列に並ぶぞ。」


カイはそう言うと目の前に並ぶ行列を指差す。


「そうだね。船員さんから切符を買って乗り込めばいいんだよね。」

「あぁ、ここに並べば問題ねぇ。」


こうして僕らは乗船する列に並んで自分達の番を待つことにした・・・その時だった。


「おい!!何故、私を先に乗せんのだ!!」

「うん?なんだ?」


突然、列の先頭辺りから怒号が聞こえてくるとそこでは貴族らしき男が切符を販売している船員を怒鳴りつけていた。


「申し訳ございませんお客様。当船は貴族の方でも並ぶ決まりになっておりまして・・・」

「うるさい!!貴族が先に決まっているだろう!!船長を呼んで来い!」

「それは致しかねます」

「何?貴様、私に楯突く気か!?私はウェールズ王国の貴族だぞ!!無事にオラルドへ行かんというのに優先対応はしないのか!?んん??」

「誰であろうと並んでご乗船いただくことになります。」

「まだ言うのか貴様ァ!ウェールズのことは知っているだろう?貴様のせいでアイルに兵を向けることだって出来るのだぞ!!」


ウェールズ王国の貴族と名乗る男に船員は遂に困惑して言葉を失ってしまう。


あの服装・・・間違いなく彼はウェールズの貴族なんだろうが余りにも横暴すぎる。


「なんか・・・揉めてるの?」

「待ちくたびれた貴族が痺れを切らして船員にキレたみたいだな。これだから貴族はクソ共が多いんだ。」


貴族と船員のやり取りをみてシルヴァはハラハラし始めるとカイは彼らをじっと睨んで見守る。


刹那、僕は考えるよりも身体を先に動かして列の先頭まで歩き出した。


「あっ!ちょっとシエル!」

「アイツ・・・まさか!!」


二人の声を気にすることなく僕は貴族と船員の目の前までやってくる。


・・・ここであまり素性を明かしたくないがやむを得ないけど。今、彼を止められそうなのは僕しかいない!!


「うん?なんだね?貴様」


貴族は僕に顔を向けて眉を寄せる。


「お取込み中失礼します。先ほど貴方はウェールズ王国の貴族であると仰いましたが・・・ここで醜態を晒すのはどうかと思いますが??」

「何?貴様も私に楯突くのか!?私の一言で貴様に兵も差し向けられるのだぞ!」

「ならば私もこの件をワース王国国王を経由してガハムレト国王に伝えさせて頂きますが?」

「はっ!笑わせてくれるそんなこと出来る訳・・・ッ!?」


貴族は僕を見た瞬間、何かを思い出したかのように顔を青くする。


「そのお顔・・・まさか!?いや、何故ここに!?」


僕がワース王国の王子であると瞬時に分かった貴族は次第に先程の威勢を無くし、冷や汗を流し始めた。


「静かに!今私は訳あって国を離れている身です。この事を他言無用にして頂く代わりに今までの横行を咎めて頂きたいです。ここはウェールズではなくアイル共和国、それもアイルとオラルドの民間が運用している船・・・貴族ならば出先ではその身分に見合った行動をするべきではないですか?」

「うぐっ!?・・・た、確かに貴方の仰る通りだ。寧ろ貴方様もわざわざ旅人の格好をなされて並んでいる・・・明らかに私のしたことは我儘だ。」


自分のやったことに悔いの表情を浮かべた貴族は船員に顔を向けると深々と頭を下げた。


「先は失礼した。ここではウェールズ王国の代表として来ている自覚が薄れていた。それを咎め、私は最後尾に並びなおすとしよう。」

「い、いえ・・・とんでもございません。」


突然、謝罪の言葉を述べて最後尾に並び始めた貴族に並んでいた客達がざわめく


「おい、あの少年・・・ウェールズの貴族を説得したのか!?」

「一体、何者なの!?」


そんな声を無視してシルヴァとカイの元まで戻ってきた僕は何事もなかったかの様に列へ並びなおした。


「シエル凄い!貴族の人を黙らせるなんて!?」

「お前何者なんだ?貴族を黙らせるなんて王族位だぞ?」

「い、いや・・・知り合いに王族関係の人がいてね。その人の名前を出したらあっさり引き下がっただけだよ。」

「知り合いに王族関係の奴がいんのもおかしいだろ・・・」

「いやぁ~ちょっと知り合った位だよ。騎士になる前の話だけどね。」


二人には自分の素性を隠したままそうはぐらかす。彼女達にはまだ僕がワース王国の王子であることを伝えてない。寧ろ明かすつもりもないしこうして本来の立場を使うのもこれが最初で最後だろう。


そんな事をしている内にようやく僕らの番まで回ってくると船員から切符を購入して船内へ入る。


「わぁ!!広いし綺麗!!まるでお城みたい!!」


船内に入るや否やシャンデリアが吊るされた天井に宿泊部屋へ続く大きな階段、床に敷き詰められたレッドカーペットが僕らを出迎えた。


「広いな・・・シルヴァの言う通り本当に城みたいだ。なのに切符は意外と安い価格だった気がするような・・・」

「船に乗るくらいならそんなにかからねぇよ。ただ部屋を借りたり、飯を食う時はその都度金がかかる。」

「そうなんだ・・・宿泊部屋は何処で抑えられるの?」

「あのカウンターだ。」


カイは目の前にあるカウンターを指差す。


「分かった。先ず先に部屋を借りようか?」

「そうね、行きましょうか?」

「あぁ」


互いに頷き合い、先に宿泊する部屋を借りるためカウンターへ足を進める。


「そこの貴方達、ちょっといいかしら?」


すると後ろから声を掛けられ、僕らは足を止める。


「なんだ?」


声に呼び止められて振り返るとそこには黒いローブを身に纏った一人の少女が杖を片手に微笑みながら立っているのだった。

皆さんこんにちは。JACK・OH・WANTANです。約2週間程、突発で休載していましたが本日から連載を再開致します。(執筆が行き詰っていたなんて言えない)


徐々に調子は取り戻しつつありますのでどうぞ今後とも御贔屓の程、宜しくお願いいたします。

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