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Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜  作者: JACK・OH・WANTAN
第三章:海神の槍兵
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第23話:海神(わだつみ)の槍兵

「はああああああっ!!」


エクスカリバーを手にした僕は真っ先に駆け出して柄を両手で握り締めながら刃に蒼白い稲妻を纏って横殴りに振り上げる。


「ふん!」


アレスは緋色の剣でそれを防ぐと僕は彼と鍔迫り合いになって辺りが蒼い稲妻と真紅の炎に包まれる。


「ぐっ!」

「どうした?その程度か?」


暫く拮抗していたものの徐々に顔を顰めながら押されていく僕にアレスはそう声を掛けてくる。


「まだ・・・まだやれる!!」


それでも臆すること無くアレスを押し返すと彼の足が僅かに退くことに気付く。


「何!?」

「シエル!じっとしてろ!」

「カイ!」


すると隙を見たカイが空高く飛び上がってアレス目掛け薙刀を振り上げる。


「無駄だ!」

「ぐわっ!」


しかしアレスは僕を蹴り飛ばすとカイへ身体を向けて彼までも退けてみせた。


「うわぁぁぁっ!」


水の中で転がりながら倒れた僕とカイは直ぐに立ち上がって直ぐにアレスへと顔を向ける。


「そこっ!」


直後、シルヴァが弓を引いてアレスへ数本の矢を放つ。


「無駄だ!」


だが、アレスは飛んできた矢を全て斬り落とすと彼女へ炎の斬撃を放つ。


「"炎剣(えんけん)不知火(しらぬい)"」

「嘘っ!?」


半月型の真紅の炎は高速でシルヴァへと迫ると彼女は回避する暇もなく顔を青くしながら怯んでしまう。


「シルヴァ!」


考えるよりも身体が動いていた僕は火の精霊サラマンダーの力を解放すると刃に炎を纏いながら滑走し、間一髪シルヴァの前まで飛び込んでくると迫っていた炎の斬撃をエクスカリバーで受け止めた。


「ほう?」


見事、サラマンダーの炎で斬撃を相殺した僕にアレスは少し関心した声を上げる。


「やるな・・・しかし次はこうはいかんぞ!」

「うるせぇ!黙れや!」


カイはそう言うと再びアレスへと薙刀を振り上げて彼と刃を交える。


「威勢だけが良くては意味が無いと言ったはずだ!"炎剣焔緋"!」

「ぐっ!?」


アレスが放った炎の袈裟斬りを受けたカイは衝撃で吹き飛ばされると壁に身体を強く打ち付けてしまう。


「カイ!」

「ぐっ、ぐううぅ」


砂埃が起こる中、壁から出てきたカイはその場に跪くと息を切らしながらアレスを睨みつける。


「まだ・・・まだだ!舐めんなよクソが!たとえテメェが十二神騎だろうがオレは諦めねぇぞ!」


カイはそう言うと鳶色の瞳を光らせて薙刀を構えた瞬間、その刃が青白い稲妻を纏い始める。


「あれって・・・剣雷!?」

「うおおおおおおおおっ!!!」


雄叫びを上げながら蒼白い稲妻を纏う薙刀をカイは勢いよく振り落とすと半月型の斬撃が放たれてアレスへと迫る。


「ちっ」


舌打ちしたアレスはその斬撃を剣で受け止めると直ぐに相殺してみせ、彼もまた炎を纏った斬撃を放つ。


「"炎剣不知火"!!」

「やらせるかよッ!」


同時にカイも薙刀を横殴りに振り回しながら滑走し、アレスと刃を交える。


「カイ!」

「手ェ出すな!コイツは・・・オレが倒す!」


彼がそう決意に満ちた表情で言った時だった。


ザシュ


「なっ!?」


胴体を斬り裂く鈍い音が聞こえるとカイの身体から鮮血が吹き出し、アレスが自身の剣を地面まで振り落とす。


「「カイ!!」」

「ぐふっ」


口からも血を吐き出したカイはアレスの目の前で崩れ落ちると息を荒くしながら倒れてしまう。


「誰を倒すと言ったのだ?先に言ったはずだ。威勢だけでは勝てないとな。」

「お前・・・!!」


僕は手をわなわな震わせながらアレスを睨む。


「シエル、こうなったのも貴様の責任だ。お前が俺の元へ来ていればコイツは犠牲になる事は無かった。さあどうする?次はこの小娘を仕留めるが?」


アレスはそう言うとシルヴァへ剣の切っ先を向ける。


「シエル!アレスの言葉に乗ったらダメよ!アタシの事はいいから!」


シルヴァは僕へ顔を向けると脚を震わせながらも弓を構える。


「・・・うるせぇな。」

「カイ!?」


すると倒れていたカイが膝を付いて立ち上がり、アレスを見つめた。


「貴様、まだ動くのか?」

「この程度で死ぬと思ったのかよカスが。まだ死ねる訳がねぇだろ・・・オレは!オレはッ・・・!!」


カイは薙刀を地面に突き刺しながら立ち上がり、口元に付いた血を拭いながら口を開く。


「テメェらをぶっ殺すまで死なねぇぞ!アイルの為にもなァ!!」


そう、彼が大声で放った・・・次の瞬間。


突然、洞窟の奥から水しぶきが上がり天井まで伸び始めた。


「な、なんだ!?」

「水しぶき?」

「あれは・・・まさか!?」


水しぶきを見たアレスは目を見開いて驚愕する。


「あっ!」


同時にシルヴァの胸元が青く光り始め、神々しく輝き始める。


「ネックレスが・・・光ってる!?」


シルヴァは胸元からあのネックレスを取り出すとまるで海の様に青い光を放つと水しぶきは共鳴するかのように更に勢いを増していく。


やがて洞窟内に雨を降らせるほどの勢いを放った水しぶきは次第に小さくなっていくと中から青い光に包まれた人魚の姿をした小さな女性が現れ、閉ざされていた目をゆっくりと開いた。


『ふぁぁ・・・誰かしら?私を起こした方は?それに・・・私の寝床で何をしていらっしゃるの?』

「なんなんだあのアマは・・・」


人魚の女性を見たカイは息を呑みながら彼女を見つめる。


間違いない。彼女こそが・・・確信したかのように僕もまた人魚の女性に目を向ける。


『お初お目にかかりますわ。私はウンディーネ。神の使いにして水を司る精霊ですわ。』

「ウンディーネ・・・だと!?」


ウンディーネと名乗った人魚の女性を見てカイは驚愕する。


「冗談じゃねぇ・・・ウンディーネの話は御伽噺じゃ・・・」

「カイ、ウンディーネは存在していたよ。証拠に彼女が目の前に居るじゃないか。」


未だウンディーネの存在を疑うカイにそう声を掛ける。


「ウンディーネ・・・やはり現れたか。お前達をここへおびき寄せたのも奴を顕現させることが目的だった。」

「何?どういうつもりだ?」


アレスの言葉に僕は彼を睨む。


「ウンディーネが顕現するにはシエル。お前の持つ剣とお前自身が必要だからな。」

「どういうことだよ・・・」


僕の持つエクスカリバーを指差すアレスにカイは恐る恐るこちらへ顔を向ける。


『私は聖剣エクスカリバーを持つものに従う神の使徒。故にその者は私を従える権利があるのです。』

「シエルが・・・精霊を従える権利があるだと?本当なのか?」

「・・・本当だよ。現に僕は火の精霊サラマンダーと出会い、彼の力を得たんだ。」

『ほう?サラマンダーと会ったのですか・・・』

「ウンディーネ」


僕は彼女の前に出るとエクスカリバーを掲げる。


『承知しております。さあ、この我が身聖剣にお納め願います。そして・・・信徒に力を与えるのです。』

「ありがとう!ウンディーネ。それじゃあ・・・力を貸してもらうよ!」

『はい』


静かに頷いたウンディーネは青い光に包まれるとまるでエクスカリバーに吸収されるかのように呑み込まれていき、剣の中へと吸収されていき、僕の身体に彼女のものと思われる水の力が湧き上がってくるのを感じ取った。


「ウンディーネの力を手にしたか。」


アレスはそう呟くと剣の刃だけでなく自身の緋色の鎧にまで炎を纏い始め、洞窟内の水を全て蒸発させた。


「さあ!かかって来るがいい!水の精霊の力で俺を止めて見せろ!」

「上等だァ!次は負けねぇぞ!シエル!ウンディーネの力、本当に使えんだな?」

「勿論だよ。」


薙刀を構えるカイに僕は頷くとエクスカリバーの刃に荒れ狂う波の如く渦を巻く水を纏い始めるとその一部をカイの持つ薙刀の刃へ付与する。


「これは・・・」


ウンディーネの加護を受けたカイは青く光る自身の身体と得物を見て、笑みを浮かべる。


「力が漲って来やがる・・・面白ェ!」

「カイ、準備は出来てる?」

「クソが!言われなくても最初(ハナ)から出来てんぞ!」

「ア、アタシも出来てるよ!」


シルヴァもまた僕とカイに並び立つと業火を纏うアレスと相対する。


「シルヴァ!援護を!」


僕は瞬時にサラマンダーの力を解放すると彼女に火の精霊の力を付与し、カイと共に得物をゆっくり振り上げる。


「これで終わらせてやろう!"炎剣(えんけん)牛突猛進(ぎゅうとつもうしん)"!!」


アレスらこちらに左掌をかざすと彼の手から闘牛の形をした炎が物凄い勢いで突進してくる。


「させない!"業火(バーニング)(アロー)!!"」


サラマンダーの炎を纏った弓の弦を引いたシルヴァはそこから業火の矢を放ち、闘牛へぶつける。


聖なる炎を纏った矢と神の名を冠した騎士の炎は互いにぶつかり合うと爆発して相殺され、跡形もなく消え去ってしまう。


「今だ!!」

「分かってる!指図すんな!」


その隙を見た僕とカイは同時に掛け出すとアレスの左右へ回り込み、地面を蹴って跳躍する。


「何!?」


咄嗟の速さにアレスはこちらを交互に見ると僕とカイは上げていた得物を勢いよく彼へ振り落とした。


「これでトドメだ!"深海(ディプシー)斬撃(スラッシュ)"!!」

「"海刃(かいじん)叢雲斬(むらくもぎり)"!!」


水の精霊の力を纏った僕とカイの刃が交差するとアレスの身体にバツ印の斬り込みが入る。


「ぐわぁぁぁぁっ!!!!」


自身の炎を無効化され、ダメージを受けたアレスは仰け反るとその場に跪いて己の身体を抑えながら息を切らす。


「ぐっ・・・やるな。シエル・・・だが。」


しかし彼はすぐに立ち上がると平然とした様子を僕らに見せた。


「う、噓でしょ??」

「全然効いてねぇ・・・だと!?」


アレスの底知れぬ強さにシルヴァとカイは冷や汗を流す。


・・・これが十二神騎の実力なのか!?


「精霊の力だけは俺を倒すことは出来ない!だが、お前達のその度胸を見込んで退いてやるとしよう。だがシエル。お前は必ず、俺の元へ下って貰うぞ。これも・・・お前の為なのでな。」


そう、意味深な言葉を残したアレスはマントを翻すと炎に包まれて姿を消す。深紅の炎に包まれながら去るその姿を僕らはただ見つめることしかできないのであった。

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