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Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜  作者: JACK・OH・WANTAN
第二章:少女と精霊
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第12話:サラマ村

翌朝。村長宅一室のベッドで眠っていた僕はカーテンから差す朝の日差しで目を覚ました。


「んんっー!・・・もう、朝か。」


ベッドから半身を起こし、背伸びをするとカーテンを開いて新たな一日がやってきた村の景色を見やる。


「明るくなったらやっぱりごく普通の村なんだな。」


窓から見える村は何処にでもある普通の村と変わらず民家の前で近所の人と談笑したり、近くの畑を皆で耕したり、井戸の前では幼い子供達が無邪気にはしゃいで水遊びを楽しんでいたりと見る景色はどれも普通の村と変わり無かった。


「凄いな、森の中で当たり前な日常を過ごせるなんて・・・」

「おはよ」


すると挨拶をしてくる声が聞こえ、そちらに顔を向けるとドアにもたれかかりながら僕を見ているシルヴァの姿があった。


「おはよう。シルヴァ。」

「その様子だとゆっくり休めたみたいね。」

「うん、お陰様でね。」


シルヴァに頷いてベッドから出ると彼女の元まで歩み寄る。


「にしても・・・いい所だね。」

「そう?気に入って貰って少し嬉しいわね。」


少し顔を赤くしたシルヴァはまるで自分の事の様に嬉しさを浮かべた。


「騎士になるまで色んな村を見た機会があったんだけどサラマ村は凄く平和そうだって感じたよ。村の人達も生き生きしてるし!」

「・・・平和ね。本当にそうだと私も思いたいけど。」


僕の言葉に彼女はどこか暗い表情になりながら言った。


「シルヴァ?」

「何でもないわ。」


しかし、シルヴァは直ぐに首を振って笑顔を取り戻す。


「それより朝食作ったの。食べるでしょ?」

「いいの?ご飯までご馳走になって。」

「いいわよそれくらい。外の人がこの村に来たのは久しぶりなんだから。」


シルヴァはそう言うと部屋を出てリビングの方へ向かう。そんな彼女の背中を見て先程言っていたこと思い返す。


"・・・平和ね。本当にそうだと私も思いたいけど”


どういう意味だろう?見た感じ何の変哲もない村だけど。眉を寄せながらシルヴァの背中を見やる。今は考えるはよそう。


しかし、後にこの言葉の意味を理解する事になる。彼女と村の背後に哀しさと恐怖渦巻く影が差していることを・・・


◇◇◇


身支度を済ませ、宿泊部屋を出た僕はリビングへとやってくる。


「やっと来たわね。」

「ごめん、支度にちょっと時間が経って・・・あれ?」


ふと辺りを見渡し、彼女へ顔を向けた。


「シルヴァ、村長さんは何処に行ったの?」

「パパなら狩りに出かけたわ。村の人達を連れて森の方へ行ってるわ。それより座りなさいよ。」


村長の行方を答えたシルヴァは微笑みを浮かべたまま僕を座らせるとテーブルに林檎と野菜が入ったサラダに肉とレタスを挟んだサンドイッチ、そして昨晩頂いたものと同じ林檎ジュースが用意された。


「ありがとう。頂くよ。」


礼を言って出された朝食を口へ運んでいく。


「美味しい!野菜と林檎が凄く新鮮だ!!」

「当たり前でしょ?今朝採れたばかりのものを使ってるんだから。」


向かい側に座りながら自慢げに笑みを浮かべてそう言ってくる。


「この森の土はね。植物が育つのに必要な肥料の成分が揃っているから作物が美味しく育つのよ。森の中にも自生してるのもあって動物や魔物がそれを食べ、それをアタシ達が狩って肉として食べるの。」

「森の土壌を活かして作物まで育てるなんて・・・凄いな。」


朝食に舌鼓しながら村の暮らしに関心する。環境、場所、交流・・・それらを上手く使っているからこそこんなご馳走を頂けるのだろう。


「それにしてもこの森の土が作物が育ちやすいもので出来ているなんて思いもしなかったよ。」

「色々特別なのよこの森は。」

「特別か・・・」


特別と聞いて僕はふと考える。この森と村は特別な力が働いている?そういうことなのだろか?だとしたらそれは何なのだろう?それに村の至る所に松明が置いてあるのも気になる。あれは明らかに何かを信仰している様だったし・・・何なのだろう?


そう、独りで詮索ししていた時だった。外からまるで雷鳴の様に轟く銃声が聞こえてきた。


「ッ!?今のは・・・銃声!?」


聞こえてきた平穏とは無縁の音に慌てて外に顔を向ける。結構近かったぞ!それに明らかに村の関係者が放ったものじゃない!


「あの銃声・・・まさか・・・また!」


するとシルヴァは途端に顔色を変えて立ち上がると弓矢を手にして一目散に外へ飛び出してしまう。


「あっ、ちょシルヴァ!待てよ!くそっ・・・まずいだろ!あれ!」


急に外へ飛び出したシルヴァを案じ、僕もまた剣を手に急いで銃声が聞こえてきた方へ向かうのだった。


◇◇◇


サラマ村の広場・・・先程まで平穏に包まれていたこの場は一つの銃声によって不穏な空気が流れていた。


銃声に気付いた村の男達は狩りに出掛けた村長達が不在の中、女や子供を避難させて現れた人影達に相対する。その対応はまるで以前にも同じことがあったのかと思う程、早いものだった。


「邪魔するぜ!」


やがて村の入口から先程放った銃を懐に入れた男が人相の悪いならず者達を連れて入ってくる。


「またお前達か!」

「くそっ!また村長が居ない間に・・・!」


男達が現れるや否や村人達は彼らを睨み付けて農具や弓矢を手に一斉に身構えた。


「ガハハハハ!無駄な足掻きだぜテメェら!この俺盗賊"イノクマ"様と相手しようってのか?あァ?」


イノクマと名乗った男は抵抗しようとする村人達を嘲笑う。


「いいじゃねぇか!お前ら。そろそろ教えろよ?俺はこの為に調べ上げて来たんだ!"精霊サラマンダー"を信仰するこの村とソイツが住んでいるこの森をな!」

「何度も言わせるな!お前の様な乱暴者に村の事を話す筋合いはない!」

「ほう?何年も前に見せしめにあった奴がいるってのにまだそのクチを撮るのか?お前ら。」


ギロリと睨みながら脅してくるイノクマに村人達は怯み始める。


「俺はあまり人を殺したくねぇタチなんだ。だが、教えてくれねぇなら仕方ねぇ・・・おい!やれ!」

「へい!」


イノクマが部下に指示を出すとならず者の彼らは一斉に作物のなる畑や村人達の民家へ向かった。


「ま、待て!」

「作物に触るな!俺達が何ヶ月もかけて・・・」


作物や物品の略奪を始めたならず者達を村人達が止めようとした瞬間・・・


「うわぁぁぁぁっ!!」


銃声が再び児玉すると村人の一人が右脚を庇って倒れてしまう。


「黙れよ。俺の言う事を聞かねぇ連中に抵抗する権利があんのか?あァ?」


銃口から白煙を出させて睨みつけるイノクマに村人達はとうとう抵抗する勇気を失い、ただ目の前で奪われていく自分達の物品や作物を見ることしか出来なくなる。


「さて、抵抗した罰だ!誰か一人、金になって貰わねぇとな!!」

「ひっ!?」


そして彼は更なる見せしめとして村人の誰かを連れ去ろうとした時だった。何処からともかく風のような速さで矢が飛んでくるとイノクマの左肩に命中する。


「ぐわぁぁぁぁっ!」

「お、お頭ッ!!」

「チッ、どっからの攻撃だ!」


射られた左肩を庇って蹲るイノクマを部下達が囲みながら矢を放った人物を探った。


「待ちなさい!」


刹那、村人達を退くようにして弓矢を手にしながら鋭い眼光を放つシルヴァの姿がイノクマ達の前に現われるのだった。

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