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Chevalier『シュバリエ』〜約束の騎士達の物語〜  作者: JACK・OH・WANTAN
第零章 騎士と王子
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第0話:邂逅

皆さんこんばんはJACK・OH・WANTANです。今週から私の三作目となる小説の投稿を開始します。


このシナリオは私が小説を初めて描いた際に考えたものでそれを再編したものになります。


いつものように誤字脱字等が多いかもしれませんがそちらを了承の上でご覧下さい。



〜プロローグ〜


騎士、それは国に忠誠を誓い、国の為に戦う者達・・・なのだが世の中にはどの国にも属さない自由なる騎士達も存在する。自ら船団を立ち上げ、世界を旅する騎士達を人々はいつしか『騎士(シュバリエ)』と呼ぶ様になった。


これから語られる物語は一人の女騎士ととある一国の王子である少年の約束の物語・・・彼女との出会いをきっかけに少年は世界を見る事を望み、やがて騎士となり旅する事を夢見る。


彼の進むべきその世界に果たして何が待ち受けているのか?

満月の光に照らされた真っ暗な海・・・その上を一隻の黒い帆船が進む。波の音が静かに響く中、船の甲板では船員達が作業を行っていた。


「ふむ・・・。」


船員達が行き来する中、迷彩柄の軍服を着こなした茶髪の男が甲板で地図を片手に咥えていた葉巻の煙を一吹きする。


「・・・後少しで目的地に到着ってとこだな。おいオーディン!そろそろ到着するぞ!眠り被ってねぇでとっとと準備したらどうだ?」


彼の声に呼応するかの様に船内のドアが開くと一人の女性が二振りの剣を腰に現れた。


"ラグナロク騎士団"団長 オーディン。数少ない女性の騎士シュバリエであり、若きながらも世界に名を轟かせており、その実力は「彼女に戦いを挑む者は無謀」「彼女が護衛する商船を襲うのは自殺行為」と悪名高い賊達に言わしめる程であった。


彼女は甲板に出ると羽織っていた襟付きの黒いマントを風に靡かせながら自身を呼んだ男の前まで歩み寄る。


「ヘーニル、そろそろ時間か?」

「あぁ、そろそろ見えてきた。あと少しで”ワース王国”に到着するぜ。」

「ありがとう。流石は我が団の航海士だな。」

「あのなオーディン。俺は別に航海士の腕をどうこう言われようが勝手だがなんでまたこんな偏狭な国にやって来たんだ?」


ヘーニルと呼ばれた男は地図にある今回の目的地を指して彼女に来訪目的を尋ねた。


「ちょっとした羽伸ばしだ。私は田舎でも賑やかな街でも無い場所が好きだからな。」

「相変わらずお前の感性は分かんねぇぜ・・・まぁいい。それで?どれくらい居るつもりなんだ?」

「うーん。半年・・・かな?」

「はぁ!?」


オーディンから放たれた滞在期間にヘーニルは思わず咥えていた葉巻を口から落として驚いてしまった。


「お前、正気かよ!?なんでこんな所に半年も!?」

「良いじゃないか。そんな事よりほら!見えてきたぞ!」


驚くヘーニルにそう返したオーディンは見えてきた景色を指差すと靄に包まれた街並みが彼女達を出迎えた。


「やれやれ。つぐつぐお前の考えることは分からねぇが。確かにここだとのんびり出来そうだな!野郎共!目的地到達だ!錨を下ろす準備をしておけ!」

「「はい!」」


彼の指示に船員達は直ぐ様、錨を用意して上陸準備を始め、城が一望出来る桟橋へ停泊すると船員達によって錨が下ろされ、上陸を完了する。


「よっと!」


オーディンは停泊した船から飛び降りると着地した桟橋からワース王国の城下町を見渡した。


「いい景色だ。噂には聞いていたがのどかでいい所だな。」

「中々いい所じゃねぇか。俺は嫌いじゃねぇな。」


彼女に続いて船から降りたヘーニルは胸元のポケットから葉巻を一本取り出して咥え、それに火を付けた。


「そうだろう?一度、来てみたかったんだ。そういえばヨルズやフリッグ、バルドルはまだなのか?」

「フリッグとバルドルは部屋に篭って航海術と医術をガリ勉中だ。ヨルズは言わなくても分かるだろ。まぁ、時期に降りてくるから良いだろうよ。」

「そうだな。ここに居る時くらいはアイツらにも羽を伸ばしてやりたいものだが好きにしてやるか。」


オーディンはそう言うと一歩踏み出して海岸を見渡した時だった・・・


「うん?」

「どうした?」


一点を見つめ、動かなくなった彼女を見て、ヘーニルは葉巻の煙を吐きながら声を掛けた。


「あの少年・・・」

「少年?少年がどうしたよ?」


ヘーニルもまた彼女が向いている方向へ自分も顔を向けるとそこにはまだ薄暗い海岸の岩肌で黙々と木剣を打ち付けている少年の姿があった。


少年はオーディンらの視線に気づくことなく息を切らしながら懸命に木剣を振り続け、辺りに木と岩がぶつかる乾いた音を響かせていた。彼女はこの時、とてつもない違和感を感じると同時に彼の剣の振りを見ていた。


「ガキが朝早く一人で剣の鍛錬か?」

「いや、あの子はただの子供じゃない。」

「は?」

「・・・服装を見ろ。」


オーディンの言葉にヘーニルはもう一度少年へ顔を向けると彼の服装はなんとこの王国の王族である事を示す貴族服を身に着けていたのだ。


「なっ!?あ、ありゃ・・・まさか、ワース王国の!?」

「ああ、まだ十歳にも満たない子供だが恐らくワース国王の第一王子だろう。」

「見たところ護衛の兵とかは居ねぇぞ!?なんでまたそんなガキが一人で!?」


護衛の兵士が誰一人も居ない状況を見て、ヘーニルは驚きの声を上げる。幾ら魔物や賊が殆ど出ない城の近くとはいえ、二桁にも満たない国の王子が一人で海岸に居るのは明らかに異常だ。


オーディンはまだ幼い王子がたった独りで剣を振っているという違和感に気付いていたのだ。だが、彼女が見ていたのはそれだけではない。


「あっ!おい!オーディン!」


彼女は無言で歩き出し、迷いなく木剣を振る少年の元へと歩み寄っていく。木剣の音がけたたましく響く中、少年の傍までやって来ると迷うことなく彼に声を掛けた。


「姿勢が少し高いな。もう少し腰を下げるといい。そうすれば剣の威力も上がる。」


その声に少年は木剣を動かしていた手を止めると端麗な顔立ちと光が入っていない蒼い瞳を彼女に見せた。


「お姉さん・・・だあれ?」


力無い声で少年はオーディンへ尋ねる。その青い眼の奥には幼い少年が持つにはあまりにも辛く大きな悲しみと焦りが秘められていた。


なんて綺麗な眼・・・そんな眼を持っていながら君は何故、そんな感情を抱えているのだ?


オーディンは凛とした声で少年に答えると共に問いかける。


「通りすがりの旅の者だ。それより何故、王子である君がここに一人で居るんだ?」

「・・・強く、なりたいんだ。強くなって皆を見返したいんだ。」


少年の言葉を聞いたオーディンは少し考えた様子を見せてから口を開いた。


「強くなって見返したい・・・か。そこまでして強くなる意味はあるのか?」

「お姉さんに僕の何が分かるの?」


少年は自身の瞳にオーディンの姿を映し出すと彼女は瞬時に彼の抱いている"心の闇"に気付く。


護衛も付けずに黙々とここで剣を振っていた理由・・・それは王子として生まれた環境にあるのではないか?


それが彼に剣を持たせる理由になったのだろう。その場に膝を付いて座り込んだオーディンは彼と同じ目線になると優しく肩に手を置いた。


「私に君の辛さは分からない。だが君が本当に強くなりたいと願い、培ったその力を善意の為に振るうのなら教えてあげよう。強くなる意味を・・・」

「お姉さん・・・誰なの?」


名前を尋ねられたオーディンは彼に優しく微笑んだ。


「私はオーディン。世界を旅する騎士だ。」

「騎士・・・?」

「私で良ければ君の力になろう。だからもう心配は要らない。自分に自信を持つんだ!」


その言葉に少年は目を見開くと地平線から差してきた朝日と共に瞳から光を灯し始めた。・・・いい眼をしている。彼を支えねばならない。彼女は続けて少年に尋ねる。


「君の名前を教えてくれ。王子・・・いや、少年。」

「シエル・・・シエル・ワース。」

「ならばシエル、私が君に剣を教えよう。」

「・・・うん。」


差し出されたオーディンの手を少年は握り締めると互いに固い握手を交わした。


こうして出会った一人の女騎士と少年・・・この邂逅が少年にとって約束の物語の始まりとなるのであった。

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