~プロローグ2~
子供の問いに対し老人は嬉しそうに言った
老人「ほっほっほ!! 勧誘しているとはいえ
この魔帝に対してそのような口を利くガキは久しぶりで面白いわい!
お前にはそう、今の勇者を上回る才能がある
技、魔力、ほかにもいろいろなスキルを覚えられる才能がある
超えられないものがない程にな。
わしの固有スキルである”天明眼”ですべて見えておる」
自分より年下の、年端のいかぬ子供に偉そうに問われた割に
嬉しそうに老人は蓄えている髭をさすりながら答える。
俺「本当に今の勇者様以上に才能があるのか? 俺に?」
老人の言葉に嬉しいような嘘を言われているような
なんとも言えない感情のまま俺は老人に聞き直した
老人「うむ、しかしお前がわしの元に来て修行するならば、の話ではあるがな」
ふふん、といわんばかりの姿勢で老人が俺に答える
俺としては正直半信半疑だ、いくら勇者パーティーだとしても
いま一緒にいる勇者様がいるのに俺に才能があるなんて、今ここにいる
勇者様に失礼だ。
それにもしついていくとしても俺だけじゃ決められない
俺「爺さん、俺の返答はいつまで待てる?」
老人「魔帝と言ったのにそれでもワシを爺さんと呼ぶとは本当に面白い坊主じゃっ!」
あっひゃっひゃっと笑いながら老人が言う
老人「明日の朝までじゃ。それまでに来なければこの話は無し、坊主も忘れろ」
一転真剣な目と声で俺に爺さんが答えた
俺「わかった・・・」
その迫力に少し押され俺もぐっと息をのんで答えた
その足で俺は家に向かって走り出した。
その時にはもう答えは決まっていた
だって誰もがなれる職業じゃなく、勇者になれるんだ
そんなの挑戦できるならやるしかないじゃないか!
息を切らしながら”若かりし頃”の俺は駆けていった
老人「ほほほ・・・・、あの程度でワシを信じるとは人間は本当に騙されやすいものだ
しかしまぁ、魔族にとっても、人間にとっても
”勇者”とはかけがえのないものさ、憎しみ合うにも殺しあうのにも
理由があればなんでもやっていいんじゃからな」
ふぅ・・・とため息交じりに不吉なことを言い放つ
老人「しかしまぁ、今の勇者より芽がなければ何にもならん。
その辺はワシも何も出来ん、努力次第じゃ。
小僧、いつかワシを殺しに来い、その時ちゃんと相手をしてやる
それだけの輝きをお前は持っておる」
その言葉を言ったのち老人から黒い霧が放たれた
老人「はて、ワシはなぜこんなところに・・・?」
魔王に憑依されたことに気づかないまま老人は目を覚ます
この後祭りは朝まで続いたがついぞこの場に魔王が現れたことに気づかなかった
そしてこれが、この時代最強の勇者と魔王の初めての会話だった
この7年後、この時の少年は魔王を討ち果たし、人間の世に平和をもたらしたのだった