科学者が作ったランドセル
ある科学者の男が画期的なランドセルを発明した。
そのランドセルは、容量が無制限で重さを感じることがない。
このランドセルが有れば子供達は重い荷物を背負うこともなく、両手一杯に物を持つことがないと男は喜んだ。
早速、男は自分の子どもに使用させ、使い心地を聞いた。
「どうだい。ランドセルの調子は。とても使いやすいだろう」
「うん。クラスのみんなに自慢したら、みんな欲しがってたよ」
男はこの言葉にとても満足した。
時間はかかったがクラス全員分のランドセルを作った。
そして、それをみんなに配った。
子供達はとても喜んだ。
男もそれを見て喜んだ。
配り終えて少し時間が経つと今度は別のクラスの子供達が次から次に欲しがった。
男は子供が求めるならと人を雇い、学校全員分のランドセルを作った。
それを全員に配った。
男はとても疲れたが、子供達の笑顔を見てやってよかったと思った。
しばらくすると今度は別の学校の子供達が欲しいと言い出した。
男は迷ったが、子供の笑顔が見れるならとランドセルを大量に作り、町のすべての学校に送った。
男の元にはその子たちの感謝の手紙が毎日のように届いた。
手紙が途切れ途切れになる頃、今度は親達がそのランドセルが欲しいと言い出した。
しかし、男は、ランドセルは子供達に作った物であり大人に作るつもりも大人用に改造するつもりもないと断った。
これを聞いた大人達は渋々ではあるが諦めた。
だが、聞き分けのいい大人ばかりではなかった。
お願いを断ってから少し後、親にランドセルを奪われたと手紙がくるようになった。
これに男は怒りその親達を注意して周った。
しかし、いつになってもランドセルを奪う親がいなくならなかったので科学者は仕方なく親達にランドセルを作ることにした。
ランドセルを作った親の中にはもっと別のデザインはないのかと苦情を言うものもいたが、男はランドセルではないと作らないと嘘をついた。
男なりの嫌がらせのつもりであった。
ランドセルを配り終えると今度は子供がいない大人達が欲しがるようになった。
男は願いを断って子供達がまた被害を受けるのだけは避けたかった。
男は町中の大人にランドセルを作った。
いつしか科学者が住む町は子供も大人もランドセルを背負う奇妙な町として有名になった。