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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

知らぬ間に回避スキルが極まっていたら巨乳魔女に拉致られて、今……魔法学院にいます。

作者: 原雷火

「君、魔法の才能あるから明日から魔法学院な」


 森で薬草摘みをしていた僕に、巨乳赤毛の露出度高めな魔女は言う。

 早くに両親を亡くして親戚に引き取られたけど、毎日雑用でこき使われてた僕――アルナは「あ、いっすよ」と軽い気持ちで二つ返事。


 その場で転移魔法でいきなり学院までやってきた。

 ちょうど大広間で入学の儀式だとか。


 十三歳から入学するらしいんだけど、十七歳の僕だけ浮いてる。

 年下の子たちと一緒にどこの寮に入るか組み分けされる……はずだった。


 喋る魔法の帽子的なのを被って、質問に答えるっぽい。

 前の子が終わって僕の番だ。


 壇上にあがって帽子を被る。

 と、僕を拉致……もとい、学院につれてきた巨乳魔女がやってきた。


 帽子がブルッと震える。

 魔女は僕じゃなくて帽子に言う。


「おい、わかってんだろうな?」

「この子はどの寮にも向いておりませぬゆえ……レミーラ先生の私室ぅ!」

「ヨシ」


 魔女は僕の頭から帽子をとって投げ捨てた。


「って、ちょっと待ておばさん!」

「おばさんじゃない。レミーラ先生だ」


 今、ここで名前を初めて知った。この人ってレミーラって言うんだ。

 で、僕がこれから寝泊まりする寮はレミーラ先生の私室。


「おかしいでしょ? 私室って。僕だけ隔離されんの? なんか四つの寮のどれかに入る流れっぽいのに無視ですか?」

「しょうがないじゃん。私が気に入って拉致って……スカウトしてきたんだから」

「今、拉致って認めた!? おまわりさーん! この人です!」


 他の教職員に助けを求めてみたけれど、全員がそっと視線を僕とレミーラから外す。


「見て見ぬ振りが下手なのかなッ!? え、えっと……学院長さんとかいませんか?」


 しわしわの白髭眼鏡のじいさまが奥の席で僕に言う。


「ふぉっふぉっふぉ。わしが学園長じゃ」

「良かった。あの、拉致られてきたんでやっぱり元の村に返してください」

「ダメじゃ。レミーラ先生に逆ら……」


 レミーラが魔法使いの杖を手にした。学院長じいさまは咳払い。


「良いか少年。このレミーラ先生こそ、学院で一番の賢者にして教育者のかがみなのじゃよ」

「今、明らかに何かに屈しましたよね!? 見えない圧的なやつに!!」

「はてなんのことじゃ。ともかく今年の組み分けはこれにて終了! 解散!」


 学院生たちがぞろぞろと大広間を出る。

 各寮の寮長に引き連れられて、僕以外の新入生はこれから始まる魔法学院での生活に期待で目をキラキラさせていた。


 こっそり紛れてついていこう。

 どこの寮でもいいや。


 と、歩き出すと――


「束縛魔法!」


 レミーラの魔法で身動きを封じられた。


「ちょ! いきなりなにするんですか?」

「君さ、私から逃げられるとか思ってるの?」

「逃げるだなんて人聞きの悪い。ただ、ちょっと雲行きが怪しいんで戦術的撤退を決め込んだだけです」

「それを逃げるっていうんだよ。いいかな少年? 君は幸運だ。今日から24時間365日、この大魔法使いレミーラ様と修行できるのだから。喜べ!」

「はあ!? 魔法学べるのはいいけど、マンツーマンとか嫌なんですけど。お断りします」


 レミーラは杖を振るった。


「服従魔法!」


 僕の中で甘美な快感が芽生えて背筋がぞわぞわする。

 レミーラはにんまり笑った。


「なあ少年。私の愛弟子になって学ぶよなぁ?」

「は、はい。よろこんで」

「よろしい。魔法解除」

「ふざけないでください! 絶対に嫌で……」

「服従魔法!」

「師匠、先生、マスター、どうお呼びすればいいですか?」

「レミーラ先生でいいぞ。ところで少年、名前は?」

「アルナです」

「そうか。ではアルナよ。さっそく修行だ。中庭まで行くぞ」


 服従魔法を解除して赤毛の魔女は満足そうだ。

 何を言っても服従魔法で上書きされるので、僕は一旦諦めた。


 どこかで隙を突いて逃げるチャンスをうかがおう。

 今は従うフリだ。


「わかりました。中庭にはどっちに行けばいいんですか?」

「学院は迷路のように広いからな。転移魔法!」


 僕の肩に手を置いてレミーラは瞬間移動する魔法を使った。


 大広間から一転、中庭に出る。

 結構広い。

 他に誰もいないんで余計に広々してた。みんなそれぞれの寮に行ったみたいでうらやましい。


「で、こんな一面クソ緑な芝生の広場で何するんですか?」

「アルナ少年よ。魔法使いにとって一番重要な才能とはなんだと思う?」


 質問に質問で返さないで欲しい。

 けど、考えた事もなかった。人生において魔法や魔法使いなんて無縁だと思ってたし。


「やっぱり魔力とかですか?」

「違うな」

「じゃあ知識でしょうか?」

「全然雑魚い」

「でしたら経験?」

「そんなものは勝手に蓄積されるぞ」

「ならシンプルに才能?」

「正解だぞ少年」


 巨乳をぶるんと揺すって魔女は言う。


「で、君には才能がある」

「一般村人な僕に魔法の才能があるんですか!?」


 ちょっと嬉しくなった。けど、僕の死んだ両親は普通の人間だったし、親戚のおじさんも一般人だ。

 魔法の才能とは縁遠いのに、僕は一族では特別なのかもしれない。


 レミーラは杖の先端を僕の額に押し当てた。

 ジュッと灼ける音がする。

 額に熱を感じてつい、後方に転がるように飛び退いた。


っつ! いきなりなにするんですか!」

「君に魔法の才能はない」

「は?」

「ぶっちゃけ今年の新入生の中じゃダントツで雑魚い」

「な、なんでじゃあ僕を?」

「たまたま森で暇そうにしてたから」

「うわぁ……」


 他に言葉が思い浮かばない。

 目が合っただけで因縁つけられたレベルじゃないか。

 

「暇してません。ちゃんと薬草摘みしてたでしょ? あなたの目は節穴ですか?」

「あなたじゃなくてちゃんとレミーラ先生と呼べ」

「嫌です」

「服従魔法!」

「レミーラ先生好き好き大好き恩師です」


 最悪だよこの人。

 魔法を解除して「よろしい」と魔女は頷いた。

 よくないって。言わせてるじゃん。


 レミーラは続けた。


「こんなに私を敬愛してくれているとはな。つい、さっき出会ったばかりだというのに」

「…………」

「ツッコミはしてくれないのか」

「言わせてますよね?」

「うむ。その通りだ。君は筋がいい」


 ツッコミ褒められたよ。

 ともかく、僕を逃がすつもりはないっぽい。

 そうだな。決めた。


「わかりました。修行でもなんでもします」

「おお、服従魔法を抜きにしても言えたじゃないか! 格段の進歩だ! すばらしいアルナ君に100点加点」


 なんの得点? そのポイント溜めるとなんかいいことあるの?


「いらないんですけ……真顔で服従魔法のモーションやめてください」

「では私からの愛の100ポイントを受け取りたまえ」

「わーいやったーうれしーなー」


 おもっくそ棒読みで返したけど、レミーラは「よしよし可愛いやつめ」と目を細めた。

 なんで気に入られたのかわからんけど、彼女の魔の手から逃げるには道は一つしかない。


 失望させるんだ。


 幸い、僕には魔法の才能は無いらしいし、修行なんてまともにできっこない。


 レミーラは胸を張った。


「では修行を始めよう」

「はい先生。で、何をすればいいんですか?」

「前転だ」

「は?」

「この緑のフィールドの端から端まで前転で100往復。以上!」

「魔法使いなら杖使ったり箒で飛んだりするもんじゃないんですか?」

「バカかな君は。バカなのかな? 私がなんとなくふわっと君を拉致ったと思ってるのかい?」

「今、拉致したこと認めましたよね」

「おっと失礼。けど、一般ピープルな少年があの死の森で薬草摘みをしていたのを見て、ピンと来たのだよ」

「……?」

「ということで君がさぼらないように召喚魔法マジックベア!」


 レミーラは銀色の熊を呼び出した。熊は僕を標的にする。


「うわ! ちょっと! まっ!」


 熊の前腕がぶんとスイング。僕の前髪が何本かお亡くなりになられた。

 やばい。避けなきゃ死ぬ。


「じゃ、100往復終わったら消えるようにしといたんでがんばってね」


 レミーラはマジックバックから箒を取り出すと、またがって空を駆けていった。

 その間も僕は熊の攻撃を前転回避で避ける。避けて避けて避けまくる。


 できない自分をアピールするはずが、できなきゃ死ぬってコレ完全に詰んでるんですけど。


 100往復が終わった頃にはすっかり空は茜色に染まっていた。

 マジックベアの猛攻を避けきってそのまま芝生に倒れると、僕の意識は遠のいていった。


 ◆


 目覚めるとそこはベッドの上……じゃない。

 月夜だった。どこぞの丘の上でたき火がちろちろ燃えている。

 火の番をしていた巨乳魔女が気づいて笑う。


「目覚めたか少年」

「レミーラさん?」

「先生と呼びたまえ」

「レミーラ先生」


 杖の先端をこっちに向けたので、服従魔法される前に言い直す。


「うむ。ではこれから闇落ちした悪い魔法使いたちをこらしめにいく」

「はあ、そうですかがんばってください」

「手伝ってもらうぞ」

「頭おかしいんですか?」


 容赦なく服従魔法が飛んできた。


「レミーラ先生の偉業のお手伝いができるなんて光栄です!」

「わかってるじゃあないか少年! 私は嬉しい」


 言わせておいてなにが嬉しいんだよ。

 服従魔法を解いてレミーラは続ける。


「では、さっそく現場に移動しよう」


 巨乳魔女は立ち上がると、たき火やキャンプのセットをまるごとマジックバックに吸い込むように収納した。


 うわぁすごいなぁ先生……のマジックバック。もうそっちが本体なんじゃないの?


「飛ぶぞ少年!」


 僕を立たせて肩に手を置き転移魔法。

 景色が変わったと思ったら、どこぞの遺跡っぽいところに出た。

 ちょうど巨石柱の陰に隠れるような格好だ。


 奥の広間にいかにもって感じの黒マントに仮面をした男たちがたむろしている。

 見えるだけでも、ざっと十人ほどだ。奥の奥にはもっといるかもしれない。


 全員、魔法使いの短杖を手に武装している。


 僕は小声で訊いた。


「あの人たちなんでこんなところに?」

「今からドラゴンの卵の密売をするらしい。横取りすればいい金に……いや、少年。違うのだ。卵を保護し、しかるべき相手に引き渡せば悪用を未然に防ぐことができるのだ」


 さいですか。口の滑らせ方がわざとにしか思えないレベルだ。


「で、レミーラ先生。相手は二桁人数ですけど、どうするんですか?」

「むしろ君ならどうする?」

「逃げます」

「ではわざわざ来た意味がないだろう」

「じゃあええと、囲まれたら袋だたきにされるので、おびき出したり一人になったところを無力化して、各個撃破で削っていく感じですか?」

「それでは時間がかかりすぎる。すでに取引は始まっているからな」

「じゃあ、どうするんです?」

「まず、愛弟子に発光魔法を掛けます」


 急に丁寧語!? と、思った瞬間、僕の体が光に包まれた。かなりのまぶしさだ。

 奥で男の一人が気づいたっぽい。

 あ、やばいんじゃないかな。


 レミーラは続けた。


「次に愛弟子に……」

「ちょ、来てますよ人! 人!」

「落ち着け愛弟子。次に愛弟子に服従魔法を掛けます。で、私自身は隠蔽魔法で姿を消します。最後に愛弟子を敵陣の中心に走らせます」

「はい! よろこんで!」


 僕は全身を光らせたまま、黒ずくめに覆面の男たちがいる遺跡の広場に飛び出した。


「何者だ!」

「さては取引を嗅ぎつけてきたな!?」

「見られたからには生きては返さん!」


 ちょうど広場の真ん中に出たあたりでレミーラの服従魔法が解ける。

 同時に四方八方から赤い光弾が飛んできた。杖から発せられたそれは、明らかに僕めがけて放たれたものだ。


 たぶん、食らったら痛いじゃ済まないっぽい。


 広場に女の勇ましい声が響く。


「転がれ少年ッ!!」


 僕は飛んでくる光弾を前転で避けた。避けて避けて避けまくる。

 男たちが驚きの声を上げた。


「おい! なんで当たらない!?」

「まて女なんていなかっただろ!?」

「もう一人いるのか?」


 混乱する現場で光り輝き前転を繰り返す僕。

 だって他にできることないんだもの。

 体は光りっぱなしだ。


「あいつ不死身か!?」

「こっちの魔法がかすりもしねぇ!」

「撃て撃て数撃ちゃあた……ぐああああ!」


 男の悲鳴に一瞬だけちらっと見ると――


 黒ずくめの一人の体が真っ二つに裂けていた。グロッ。内臓飛び散ってんですけど。

 続けて男の一人がふわりと宙に浮かんだかと思うと、壁にぐしゃっと叩きつけられてトマトになる。

 別の男はその場で爆発した。木っ端微塵に砕け散る。

 と思えば、突然、男の前にキャベツが二玉転がってきた。真ん中からばっくりと割れると牙を剥いて男の頭を食いちぎった。

 石化するやつもいれば、岩をぶつけられて圧死したり、密閉空間なのに頭上から雷撃を落とされて黒焦げになったり。


「い、いやだ! いやだいやだいやだ死にたくなあああああい!」


 杖から短剣に持ち替えた男が、自分の首筋に剣の刃をあてゆっくりと引いていく。

 絶叫が響き渡った。


 次第に僕を狙った光弾はなくなり、静かになるまで三分もかからない。

 残るは一人――

 シルクハットにモノクルをした紳士風。ドラゴンの卵を大事そうに抱えた「買い手」が逃げようと転移魔法を使った。

 が、失敗。


「な、なぜだ!? なぜ転移魔法が使えん!?」

「私が封じてるからに決まってるでしょ」


 突然、目の前に巨乳魔女が姿を現した。


「き、貴様は闇魔法使い殺しのレミーラ!?」

「はい、じゃあドラゴンの卵こっちによこして」

「い、命だけは……どうか……お助けをッ!!」


 紳士風から虹色の殻の卵を受け取るとレミーラは微笑んだ。


「だ め ♥」


 次の瞬間――

 レミーラが杖を振る。先端から緑のビームが放たれた。

 紳士風の体を貫通する。


 男はバタリと倒れると動かなくなった。

 僕の体の発光も止まる。


 死屍累々だ。

 全部レミーラがやったんだ。


「れ、レミーラさんって……」

「先生プリーズ」

「レミーラ先生って……何者なんですか?」

「ん~シンプルに人殺しかな。ただし悪人限定だから、善良な愛弟子は安心していいぞ」


 良くない。こんなおっかない人のそばになんていられるか。僕は村に帰る。帰るんだ。


「すみません。今からでも入学拒否できませんか?」

「何を言ってるんだ君は。ほら、卵もって」


 僕は虹色のドラゴンの卵を持たされた。


「はへ?」

「君が囮になって取り返したんだ。学院長のとこにもっていけば、学費や制服代や教材費になるから」

「レミーラさ……先生は僕のために?」

「べ、別に愛弟子のために人殺ししてたわけじゃないんだからね! 趣味だし!」


 急にツンデレ化したーッ!? しかも人殺しを趣味って言っちゃったよ、この人。

 あんまり「ありがとうございます」って言いにくいな。

 悪人とはいえ、これだけ死んでるし。

 というか――


「下手したら僕も死んでましたよね?」

「まーその危険もあったけど、君には才能があるから大丈夫だと信じていた」

「はい?」

「君が薬草摘みをしていた森は、死の森だ。あそこで魔法も使えぬ一般人が、平然と生きて戻ってこられるというだけで、特別な危険回避能力がある証拠なのだよ」


 言われてみれば……。

 近場の森じゃ採れない薬草だと、お金になるんでついつい奥に行くようになったっけ。

 なんとなく、危ないって思ったら逃げるようにしてたんだけど。


 レミーラは続ける。


「自覚がないみたいだね少年。君の故郷の村で、幸運目薬の素材になるネコノミ草が格安で仕入れられるから、おかしいと思っていたんだ。君は叔父にずいぶんとレア薬草を買いたたかれていたようだ」

「もしかして、レミーラ先生と出会ったのって偶然じゃないんですか?」

「安心したまえ。君の叔父は悪人だが殺しはしていないから」

「先生が言うと安心できないんですけど」

「先生を……信じろ」


 澄んだ瞳で巨乳魔女は言う。

 そんな綺麗な目で何人の死を見てきたんだか。


「ともかくだ。金の卵を産む君を叔父から引き離しただけで、十分制裁にはなっただろう。ネコノミ草の市場流通価格もしばらくすれば元に戻る」

「僕のせいでご迷惑をおかけしてたみたいですみません」

「君が謝ることじゃない。ただ、悪い大人に利用されるのを見ているのは忍びなくてな」

「さっき僕の体を発光させて敵陣に単身突撃させた口で、何言ってるんです?」

「私は君を……信じた」


 綺麗な目やめろ。

 けど、実際無傷だった。転げ回って服は汚れたし全身バキバキ言ってるけど。


「というか、なんでみんな魔法を避けないんですか?」

「それが君の才能だ。普通、魔法使いは防御魔法で身を守る。が、この防御にも相性があって、防げない魔法というものが存在するのだよ」

「はぁ……」

「だから様々な殺し方のバリエーションが必要になる」

「さっきの殺戮ショーにはそんな意味があったんですか?」

「いや、ぜんぜん。こいつら程度なら何使ってもワンパンだぞ少年」


 レミーラは胸を張った。


「だが! 君の才能は素晴らしい。君は危険を感知し前転することで相手の魔法のターゲットを外す回避能力者のようだ」

「回避……能力者ですか?」

「うむ。百年に一人の逸材だな。古い書物にも残されている。歴史が動く時、この回避能力者が必ず現れると」


 なんか壮大なこと言い出したぞこの人。歴史とかどうでもいいよ。まったく。


「だからって、いきなり実戦にぶちこんで囮にしないでくださいよ!」

「使わなければ技は磨かれない。君の才能は死の森で薬草摘みに使うだけではもったいない。だから今日から私直属の弟子になってもらう。授業時間以外はずっと一緒だ」

「えええええッ!?」

「ヨシ! 風呂に行くぞ」


 レミーラは僕の肩に手を置いた。

 転移魔法で飛んだ先は学院内にあるという、特別な大浴場だ。一般の学院生は利用できない場所だった。

 泡風呂である。


「さあ服を脱げ少年!」

「ちょっといきなりお風呂って……あっ……はい」


 服従魔法使おうとするのやめてほしい。選択肢が「イエス」か「はい」の二択じゃないか。

 観念して服を脱ぎお風呂に入る。

 あったかくて気持ちいい。と、巨乳魔女もいつのまにか全裸になって飛び込んできた。

 ドラゴンの卵を抱えて。


「ほら少年。忘れ物だぞ」

「お風呂より先に卵を預けてくるべきだったんじゃ……」


 できるだけレミーラの方を見ないようにする。女の人の裸だ。黙っていれば美人な赤毛のお姉さんは、僕には刺激が強すぎる。


 最初におばさんとか言ってすみませんでした。


 と、背後に回り込まれた。

 なんかぷにっとしたものを背中に押しつけられる。


「ほら少年、卵だぞ」


 レミーラが腕を前に回して僕にドラゴンの卵を持たせると――


 ピキッ! と殻にヒビが入った。


「え、ええッ!? 割れちゃいましたよ!?」

「あらあらあらあらあーららー♪ しーらないんだしらないんだ♪ せんせーに言ってやろ」


 お前が先生やろがい。

 と、返す間もなく割れた卵の中から、青い鱗に覆われたミニドラゴンが産まれた。

 くりっとした愛くるしい瞳が僕をじっと見る。


「ドラゴンは最初に目が合った相手を親だと思うのだ。古文書にあった通り、この風呂の温度で羽化するみたいだ。やったな少年! ドラゴンマスターの称号を得たぞ!」

「う、うわああああああああああ! ちょ、ちょっと待って! 卵は僕の学費になるんじゃ……」


 ドラゴンが殻から出るとパタパタと羽を広げた。浮き上がり、僕の頭の上に乗っかると鳴く。


「ニャアアアアアアアアオン!」


 猫かよ! って、これ普通に懐かれてるよな。

 レミーラが背後から僕の前に、すいっとやってきた。


「これから楽しくなりそうだな、愛弟子よ」

「その愛弟子っていうのやめてください」

「ん~早くも反抗期でちゅかぁ? 服従魔法する?」

「っていうか、なんで服従魔法は避けられないんです?」

「君がまだまだ未熟だからだよ。私の魔の手から逃れたければ、今後も学院で学んで服従魔法をそのスキル、ジャストK(回避)ローリングで避けられるようになりたまえ!」

「おいやめろ! なんかそのスキル名はやばいですって!」


 こうして僕の魔法学院生活は始まった。

 正直、不安しかない。

なんかあのゲームの実況を見てたら書き終わってました。

ブクマや★★★★★よろしくおねがいします。大変はげみになります。

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