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【6万PV感謝!】ドラゴンLOVER  作者: eXciter
第一章:葬星の竜-Dragon of the destiny-
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第九話


 振り上げた左腕で弧を描くと、空中に巨大な純白の(アーチ)が出現し、怪物の頭をまとめて両断した。

右手は大きく開き、叩きつけるように掌を突き出す。円形の壁が怪物数頭に激突し、頭部を潰した。


 炎でもない。稲妻、風、水、土でもない。パルのような身体強化でもない。

敢えて言うなら、質量を持った光。それも極めて高い殺傷能力と効果範囲を誇る。

初めて見る魔術だった。驚愕し、パルとパッフは顔を見合わせた。

続けてアニィを乗せたドラゴンが空中で方向転換し、合わせてアニィが別の怪物に向けて指先を伸ばし、指先で小さな円を描いた。

直後、空中に白い線が発生し、怪物の体が頭部、頸部、そして胴体の三つに分割される。


 更に、白いドラゴンが広げた翼が輝き、村一帯を照らした。

光を浴びた怪物がいきなり動きを止め、全身を痙攣させている。白いドラゴンの光で無理やり動きを止めさせられたらしい。

その間に地に落ちたドラゴン達が動き出す。怪物の牙や爪による傷が、白い光を浴びた途端に再生を始めていた。

ドラゴン達は学校前にかたまり、白いドラゴンことプリスを、その背に乗るアニィを見上げていた。

 そこでパルは先刻受け取った腕輪を思い出し、バッグから取り出すとアニィに投げ渡した。

アニィが腕輪を受け取ると、パルが説明する。


 「それ、先生から! 力を跳ね返す、魔術の盾を作るんだって!」

 「…わかった!」


 アニィは、パルの言葉からすぐに気づいた。センティと子供達は、これを作っていたのだ。

恐らく、アニィが旅に出る時に渡すつもりだったのだろう。

アニィが腕輪を自らの左手首にはめこむと、プリスの翼の光が止み、怪物が再び動き出した。

怪物たちの敵意は、学校…あるいは学校にある何かではなく、アニィとプリスに向けられていた。

空中で、あるいは地上から、まがまがしい無数の視線がふたりに突き刺さる。

何をさておいても殺害すべき、この場において最も恐るべき存在。

それが怪物たちの、アニィとプリスに対する認識であった。

アニィはプリスの首元に触れ、作戦を伝えた。


 「怪物はわたし達を狙ってる。全員引き付けて一気にやろう」

 《賛成。一番手間がかかりませんしね》

 「うん。プリス、お願い!」


 アニィとプリスが正面の群れの真っただ中に突っ込む。同時に怪物たちがふたりに襲い掛かる。

が、ふたりは群れを突き破り、真上へと飛び出す。群がった怪物たちは激突し、空中で体勢を崩した。

アニィとプリスは怪物の群れから一度距離を取り、空中で真後ろに方向を転換。

迫ってくる怪物たちに対し、アニィは腕輪をはめた左の手をかざした。

空中に純白の巨大な円形が出現。高速飛行していた怪物たちは、停まることもできずに円形の盾に激突していく。

激突の威力が怪物自身に帰り、頭部、胴体、翼が粉微塵に砕け、空中で消失した。

ただ防ぐだけではなく、防御がそのまま攻撃に転換される盾だ。


 「すごい!」

 《へえ、作った人間はなかなかの腕前をお持ちのようで》

 「…先生が作ってくれたんだ」


 アニィは腕輪にはめ込まれた宝石を見た。村の付近で採掘された、思考を魔術に投影する効果があるという鉱石だ。

怪物たちは円形の盾を警戒し、一旦動きを止める。その隙に地上の怪物たちが背中に翼を広げて飛び立った。

小型ではあるが、その戦闘能力は大型の怪物にも充分匹敵するほどだ。

だがアニィはすぐに気づき、再び左の掌に巨大な盾を発生させた。

そして飛び掛かってきた地上の小型怪物の群れに叩きつける。

真上から降ってきた巨大な円形に激突し、小型の怪物たちはたちまち砕け散り、押しつぶされ、消滅した。


 『GHEEEAAA!!』


 空中の一頭が咆哮した。他の怪物と比べて大型で、どうやら指揮権を持っているようだ。

咆哮に合わせて、指揮を受けた怪物どもが、口から何かを吐き出した。魔力の塊を球状にした物だ。

プリスは魔力弾の軌道を読み、上へ、下へ、左右へと空中で僅かずつ移動しながら回避する。

その隙を見て、別の怪物の群れが真下から襲い掛かってきた。

プリスは迫る牙を回避し、上空へと逃れる。怪物の群れがそれを追う。


 《アニィ!》

 「わかった!」


 アニィは追いすがる怪物たちに向け、右の掌を突き出した。空中に白い巨大なオーロラが出現する。

アニィが右手を裏返すと、オーロラが渦を巻いてはためき、怪物の群れに突っ込む。

螺旋を描く巨大な回転円錐(ドリル)となり、白い光が怪物どもの肉体をミンチにしていった。

さらにプリスが空中で真下を向き、翼を再び輝かせる。

白い光に照らされた怪物たちは空中で動きを止めた。

アニィの目には、翼から発した光が極細の糸に変化し、空中で怪物の体にまとわりついているのがはっきり見えた。


 《アニィ、今です!》

 「うん!」


 アニィは大きく開いた左右の手を正面に突き出した。直後、プリスが怪物の群れに真正面から突撃する。

体当たりで怪物を破壊する気か…パルがそう思った途端、プリスの周囲に白い光が発生した。

全身を覆うバリアが変形し、分離して、球形状の列に並ぶ無数の刃に変化した。

アニィが両手の指先を揃えて前方に向けると、刃の列が回転を始める。

回る刃に囲まれた状態で怪物の群れへと突っ込むプリス。襲い掛かる怪物は、全身をことごとく切り裂かれた。

群れの中を突っ切り、ほぼ全ての怪物を切り刻むと、最後尾に残る一頭だけとなった。

指揮を担当している大型個体だ。


 『GHOOOAAAA!!』


大型個体が一声吠えると、周囲からはまたも怪物の群れが集まってきた。

いちいち倒していてはキリが無い。地上や周辺は回復したドラゴン達に任せ、アニィとプリスは親玉をしとめることに専念した。


 《残りは奴だけです》

 「わかった!」


 アニィは指先を上空に向けて伸ばす。空中に出現した球体から、大型個体に向けて白い光線が連射された。

だが光線は怪物の表皮に当たるも、煙と火花を上げるのみで致命傷にはならない。

魔術に対する防御を肉体に施しているようだ。


 「防がれた!」

 《アニィ、奴は他の怪物からアニィの魔術を学習したのかも知れません》

 「だとしたら、何をしても防がれる!?」

 《むしろ私が訊きたいんですがね。あなたのそれ、お決まりの型なんてあります?》


 意地悪く笑いながら、しかしプリスの言葉はアニィの魔術の核心を突いていた。

アニィは自らの手を見た。今しがたまで無意識に使っていたが、アニィは発生させた白い光を、自らの意志で自在に操っている。

形を変えるだけでなく、硬度、軌道、サイズ、そして殺傷力の全てが思いのままだ。

即ちアニィの発想力こそが、この魔術の鍵となる。アニィが限界だと思わぬ限り、無尽蔵に変化する。


 アニィは思い出す。自身の中に根付くのは、ドラゴンに乗れず魔術も使えなかったゆえのコンプレックス。

だが湖畔で絵を描いていた時、彼女は想像の中でドラゴンに乗り、きらきら輝く魔術を行使していた。

夢想の中ではどんな魔術も自由だ。ならば、今使える魔術もまた自由なのだ。


 「…そうか。うん」

 《奴の攻撃は全部私が防ぎます。接近しますから、一番効きそうなのをぶちこんで差し上げなさい》

 「わかった!」


 アニィが大型個体に向き直ったところで、プリスは突撃を開始した。

大型個体は真上へと上昇し、口から無数の金属塊を吐き出した。鋼鉄の散弾がアニィとプリスに浴びせられる。

プリスは翼を開き、再び先刻の輝きを放った。散弾はプリスに当たらず、一見何もない空間で周囲に散らばっていく。

アニィ、そして地上にいるパルとドラゴン達の目には、プリスの眼前に張り巡らされた無数の糸がはっきり見えた。

プリスは光の糸を操る。時に敵を拘束し、時にこのようにバリアとして扱うのだ。

 今度はプリスが口を開き、純白の閃光を吐き出した。光は大型個体の頭部の付け根を掠め、切り裂く。

魔術防御によって致命傷と言うほどにはならず、しかし一撃で致命の箇所を狙われたことで、大型個体は怯む。

怪物どもの活動を完全に止めるには、頭部を粉々に破壊する必要がある。

しかし魔術防御が施された怪物相手では、ドラゴンの閃光も完全には通らないようだ。

即ち、防御を無視しうるアニィの発想力が必要なのである。


 そして当のアニィは、プリスの背で目を閉じ両手を合わせていた。

魔術防御を貫通するには、プリスの閃光を遥かに上回る破壊力が必要だ。

鋭く、分厚く、重く、何でも問答無用で切り裂く武器。頭の中に浮かんだのは、剣だ。


 「プリス、お願い!」

 《任せなさい!》


 プリスが加速し、怪物と距離を詰める。怪物は上昇をやめ、軌道を変えて真横にそれ、追尾から逃れようとした。

が、アニィが左手をかざすと、巨大な円形の光が怪物の眼前に出現した。激突し、怪物が空中で吹き飛ぶ。

空中に投げ出された怪物に、更にプリスの翼の輝きが浴びせられ、空中で動きを止めた。

眼前に迫るプリスとアニィに対し、怪物は悪あがきとばかりに鉄の散弾を再び吐き出す。

だがアニィが光の盾をプリスの前に出現させると、散弾は全てその威力を保ったまま跳ね返り、怪物の体に突き刺さった。


 『GHOOOOAAAAAH!!』


 自身の武器に肉体を抉られ、怪物が悲鳴を上げた。

その直後、アニィは掌を合わせて両手を真上に上げた。その上空、長く伸びた巨大な光の刃が出現する。

アニィが思い浮かべた必殺の武器であった。

鋭く、分厚く、重く、質量すら持つ、巨大な光の魔術で生み出した剣。

魔術防御を施していようが、アニィの想像力の前では何の助けにもならない。

アニィは怪物を見据え、そして両腕を振り下ろした。


 「―――喰らえっ!!」


 巨大な光の剣が、両腕の動きに合わせて弧を描き、怪物の頭部を直撃した。

全身に張った魔術防御のバリアがわずかに抵抗するが、刃はそれを容易く切り裂き、頭部にめり込む。

そして重量と勢いのまま、頭部、首、胴体、最後に尾までを真っ二つにしてしまった。


 『GHYAAAAA!!!』


 怪物の断末魔の叫びが響く。しかしそれすらも光の刃に飲み込まれ、消滅した。

光の刃が消えた空間には、怪物の肉体は一片も残らず、消滅時に上がったわずかな煙が漂うのみであった。そしてそれもすぐ消えた。



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