表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【6万PV感謝!】ドラゴンLOVER  作者: eXciter
第三章:鋼鉄剣武-Super sonic samurai-
51/386

第四十八話


 「じゃあ、ヒナさんとクロガネがきちんと決めるまで、頑張らないとね…!」

 「とにかく、ヒナの方に向かわせればいいんだね!」


 ガ=ヴェイジが周囲に群がった兵士達を、頭突きや尻尾の一撃で吹き飛ばした。

分解しないのは、すぐには同じ魔術を使えないからか、アニィ達を殺すために魔力を節約しているのか。

一通り周りを払い終えると、ガ=ヴェイジはアニィ達の方を向いた。


 『クク…コノ"物質分解"ノ…魔術ヲ…斬ル、ダト……ハハ、笑ワセル…!

  今見タダロウ、コノ魔術ノ、破壊力ヲ…!』


 いかにも余裕ぶって嗤うガ=ヴェイジ。

だが、彼の嘲笑が恐怖と警戒の裏返しであることは、既にアニィ達には知れている。

分解の魔術が破られれば、最早成す術がないからこそ、彼は無理に笑っているのである。


 《あの物質分解魔術の防壁、多分奥の手です。空間ごと斬るなら、あれも斬っておしまいなさい》

 「うむ。頼むぞ、皆」


 うなずき、プリスが走り出す。その頭上でアニィが拳を掲げ、頭上に大きな結晶の球体を生み出した。


 「―――まかせて!」


 そのまま拳を振り下ろすと、殴打の動きに合わせて球体がガ=ヴェイジの頭部に叩きつけられる。

質量があり見た目も結晶体だが、あくまでも非物質たる光の魔術のため、分解の魔術では破壊できない。

直撃した瞬間、パルが矢を数本まとめて放った。パッフが魔術の水で束ね、数本の矢を一本の巨大な水の矢に変える。

光球を頭部に食らうのとほぼ同時に当たったため、矢は分解されずにガ=ヴェイジの鼻の孔を直撃。

痛みを感じている時などは、どうやら分解魔術の防壁を維持できないらしい。


 『GGXEEEE!!』


 挑発とも取れかねないその攻撃に、ガ=ヴェイジは途端に怒り、手近なところにいるプリスに噛みつこうとした。

だがその顎をプリスがよけて真横から蹴飛ばし、更に真上からパッフが踏みつけた。口中の乱杭歯が折れ、地面に飛び散る。

プリスとパッフはすぐさま後方に跳んだ。その背の上からアニィが光のくさびを、パルが矢を連射する。

どちらもガ=ヴェイジの眼前の地面を抉り、小さな穴をいくつも空けた。


 『オノレラ…ァアアGHAAA!!』


 敢えて外されたと知ったガ=ヴェイジは怒り狂い、ついに自ら言語をかなぐり捨てた。

激怒したままに角と背中に分解魔術を発動し、アニィ達に向かって高速で走る。

着地したプリスとパッフが左右に分かれると、ガ=ヴェイジの突撃する先ではヒナが待ち受けていた。

刀を鞘に納め、腰をかがめた低い姿勢で柄に手を掛ける。居合いの構えだ。

最早上っ面の知性を失ったガ=ヴェイジは、分解魔術を発動したままヒナとクロガネに向かって突進していた。

ヒナは落ち着いて、間合いに入るまでを待っている。そして、両者の間の距離が1ドラゼンまで縮まった瞬間。


 「先ほどの唐竹割で、角の硬度は確かめた。

  叩き込むべきは最も脆い場所、角の付け根だ。

  …―――クロガネ!!」

 「ゴゥ……!」


 アニィ達が見守る中、ヒナとクロガネの姿が突如消えた。

 銀色の閃光が走る。大地が―――否、空間そのものがわずかに震動し、突進していたガ=ヴェイジが足を止める。

同時に刀を振り抜いた姿勢のヒナ、彼女を乗せたクロガネが、ガ=ヴェイジのやや斜め後方に姿を現した。

周辺の喧騒が一瞬だけ途絶えた錯覚。アニィ達は固唾をのんで状況を見守った。


 『ガッ………!!』


 ガ=ヴェイジが呻き声を上げた。真横から見たその姿が、角の付けねから尾まで、上下半分ずつ、左右にずれていく。


 『アッ、ガ、オボァ、ハガ……!』

 「―――手応え、あり…!」

 「ゴォウ!」


 カキン…と硬質な金属音を立て、ヒナは刀を納めた。


 『ボァアハ、ゲェ―――BHAAAAA!!! ……』


 醜い絶叫と共に、ガ=ヴェイジは上下真っ二つに両断され、塵と化して消えた。

まさしく宣言通り空間ごと、すなわちバリア状に展開した物質分解魔術ごと、真っ二つにしたのであった。


 ガ=ヴェイジが消滅したのを周辺が理解するまで、僅かに時間があった。

その勘、騎士団どころか邪星獣まで足を止めていた。

最初に声を挙げたのは誰だったのか、小さな歓声が一度聞こえると、やがてそれはたちまちのうちに伝染していった。

そして、大歓声へと変わった。


 「「「「「うおおおおおお―――ッ!!」」」」」


 ヒナの勝利を知った兵隊たちは、たちまちのうちに士気を上げて目の前の邪星獣を打ち倒していった。

次々に補充されるのも何のその、とばかりに蹴散らしていく。

周囲を見回し、一見すると戦況を逆転させたかのような光景に、しかしアニィ達だけは喜ばなかった。

邪星獣が消えていないのだ。ヒナも邪星獣の詳しい生態を知らぬため、状況をよく理解できていないようだ。


 《やはり奴は指揮官ではなかったようですね。周りの連中が消えていない》

 「…どういうことだ、プリス殿?」

 《邪星獣の群れには指揮を担当する個体がいるのですが、そいつがザコ共の生命維持も兼ねているんです》

 「つまり、生命を維持している奴がどこかにいる…ということだな」


 プリスの一言でヒナも理解した。

パルとパッフが指揮官個体を斃し、群を消滅させたのを、ヒナも1度見ていた。

広場にいないのであれば、街の中のどこか、あるいは外に指揮官個体がいる筈なのだ。

そこへダディフの小隊がやってきた。彼らはアニィ達とオーサーを1か所に集め、避難が終了したことを伝えた。


 「街の安全は確保できた。アニィ君達、あとはあいつらを片づければ終わりだね?」

 「そうなんですけど、あの群れの指揮と生命維持をしてるのがいる筈なんです…

  隊長さん、街の中はもう安全なんですよね?」


 切羽詰まった表情のアニィに、ダディフとオーサーも意味を理解する。


 「ならば、海や空にいるということか?」

 「だと思います。でも空には影が無いから、多分―――」


 アニィが推測を口にしようとした時、突如要塞が揺れた。

地震かと思ったが、何かが連続で激突する音が、城壁の外から聞こえた。

直後、城壁の一部が崩壊。崩された個所から大量の邪星獣が乗り込んできたのである。


 『GXHOOAAA!!』


 群れの中央で大型の邪星獣が咆える。サイズはガ=ヴェイジとほぼ同等、大型の指揮官個体である。

手足にはヒレが生えて、海中の移動と陸上・空中での戦闘の両方に対応している。

周囲の兵隊も似たような物だ。半魚型と言ったところか。新しい種類だ。

この指揮官が連れてきた新たな群れは、海上を泳いできたようだ。


 兵士達はうろたえたが、目の前の敵を倒すと、新たに現れた群れへと立ち向かっていった。

ヒナの勝利により、今の彼らは高い士気を持って闘っている。

一人ひとりが自身のできること以上の技能を発揮し、精神の高揚ゆえか魔術の威力や規模も上昇していた。


 《―――みなさん、周りのをおねがいします!

  1頭斃せばすぐ補充されますから、無理しすぎない程度に!》


 その真っ只中で、プリスが周囲に思念の声を伝えた。

怒りを爆発させたアニィが群れる邪星獣を攻撃し、魔力を無駄に消費するのを防ぐためだ。

幸い、騎士団は誰が喋ったかを察知していないらしい。


 指揮官個体は兵隊の邪星獣と比べ、高い戦闘能力を持っている。

ドラゴンラヴァー、それも優れた魔術と技能を持つ彼女達でなければ、そうそう対抗できる相手ではない。

プライドの高い騎士団がその事実を許容できるのかと、アニィには不安であったが…

真っ先にそれに応じたのがダディフであった。


 「よし! 我ら第一小隊、3人ずつの組を作って戦え! 防御1人攻撃2人!」

 「「「了解!」」」


 ダディフが率いる小隊、およそ20人程度の部隊が、3人1組のチームを作って邪星獣の群れに向かっていった。

ダディフはそれを見送ると、オーサーの肩に手を置いて助言する。


 「団長殿、ここは彼女たちに任せましょうぞ」

 「むっ…」

 「…オーサー、アニィ君達の実力は見ただろう。

  彼女達は強い。あのデカブツは彼女たちでなければ斃せんぞ」


 年上の友人である彼のアドバイスは、現実的かつ理想的である。

現状を頭の中で整理し終えたらしく、オーサーはすぐさま騎士団全体に指示を出した。


 「全隊、第一小隊と同じく3人組で展開!」

 「「「「「了解!」」」」」


 一度指示が出ると、騎士団全体がキビキビと動き、徐々に群れを押していく。

オーサーとダディフも、二人で組んで群れの中に飛び込み、相棒のドラゴンと共に蹴散らしていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ