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【6万PV感謝!】ドラゴンLOVER  作者: eXciter
第二章:邪星討つ光-The Crystal savior-
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第二十三話


 その直後のモフミーヌの挙動は実に不審だった。

突如頬を赤らめ何かに陶酔したかと思えば、自分がモデルになると知らされてあわあわと慌てる。

かと思えば突如鏡を取り出して髪や服を整え、更に受付待ちのバンダルを突如連れてくるという謎の行動。

要するに、アニィの行動に何やら胸が高鳴ったらしいが、モデルになると知って照れまくってしまった、ということらしい。


 「なんだモフミちゃん。俺まだ依頼受けてないんだけど」

 「あやややや、じじじ実はですね、アニィ様がモフモフネコネコで」

 「なるほどそう言うことか、俺なんかで良けりゃ手伝うぜ」

 「わふっ」


 どうやらモフミーヌは、一緒に似顔絵のモデルになってほしいと伝えたらしい。

モフモフネコネコだけで伝わるのだから、二人はよほど仲の良い友人なのだろう。

さらにチャウネンもそばに寄ってきた。似顔絵に興味がわいたのか、画用紙を覗き込んでいる。


 では描きますね、とアニィは二人と一匹の似顔絵を描き始めた。

一見山賊の顔をしたバンダルは、気のいいナイスガイ。ふわっとした毛玉のごときチャウネンはまるでパンケーキ。

そしてモフミーヌは、愛らしくもキリリとした仕事のできるお姉さん。

村にいた頃とは一転して、楽しそうに絵を描くアニィを、パルとパッフが笑顔で見守る。

そんな特徴を見事にとらえたアニィの筆致で、瞬く間に似顔絵が完成した。


 「できました…!」


 会心の出来らしいそれを、アニィは2人と一匹に見せた。

すっかり照れてしまったモフミーヌとバンダルに、手を叩いて喜んでいるチャウネン。


 「おいおい、俺らこんなイイ顔かよ!?」

 「わふっ」

 「だと…思います。最初にここでお会いした時も、親切にしてもらいましたし」

 「そっかぁ? いや、照れちまうなあ。見ろよモフミちゃんも、可愛く描けてるぜ」

 「いいいいえ、遠慮しますぅっふ…」


 照れまくったせいか、モフミーヌは妙な息を吐きだした。この場の全員が思わず笑いだす。


 「よし、じゃ行こっかアニィ。スミスさん達も鏃を作ってくれてると思うし」

 「うん…」


 似顔絵と色鉛筆を郵便物の中に戻すと、二人は立ち上がった。


 「それじゃあ、お世話になりました。旅が終わったら…また、来ます」

 「いえ。こちらこそ、各地の協会を通じて、またお願いすることもあると思いますから。

  今後ともよろしくお願いしますね」


 両者は今後の協力を互いに約束し、別れた。

プリスとパッフの背に乗り、アニィとパルはスミス兄妹の工房に向かう。

と言っても、依頼をしてからあまり時間は経っていない。

まずできている所まで受け取り、その後はヴァン=グァドで続きを頼むつもりだった。


 「ヴァン=グァドにも良い武器職人がいるらしいし、そこで何か買い足すのもいいかもね」

 「うん…」

 《…にしても、何か急に積極的になってきたんじゃありませんか、アニィ?》


 プリスが尋ねたのは、先ほどの似顔絵の事だった。パルとパッフもうなずいている。

手紙に絵を描くとは言っていたが、人に似顔絵のモデルを頼むという行為に出たのは、意外であったらしい。

アニィは照れながら答えた。


 「うん…チャムとの約束だし…それに、素敵な人達だったし…

  手紙で伝えられたらって思ったら、何だか…」

 《良いですね。他の人にもお願いしてみなさいよ》

 「う、うん…!」


 アニィはプリスの言葉にうなずきながら、街に並ぶ店を見回していた。

邪星獣のおぼろげな存在感に怯えながらも、この街の人々は幸福そうに生きている。

ヘクティ村にいた頃からは考えられない笑顔が、この街には満ちていた。

閉ざされた村の外にはこんな世界がある。こんな人たちがいる…チャム達に、伝えたかった。


 「あっ、さっきのドラゴンさんたち!」

 「あら本当。こんにちは!」

 「ぷぎゅ!」

 「クルル~!」


 不意に聞こえた声に振り返ると、先ほど公園でパッフと遊んでいた親子連れとドラゴンだった。

パッフが手を振って答え、アニィ達はそれぞれ頭を下げたり手を挙げたりして答えた。

プリスが振り返り、背中に乗ったアニィに視線を送る。


 《また遊びに来ます? 今度はただの観光で。村のちびっ子たちも連れて》


 名残惜し気なアニィの気配を感じていたようだ。見透かされたアニィは苦笑して答えた。


 「うん…ねえ、ここに移住してもらうのはどうかな?」

 「あの村に子供達や先生を置いとくわけにはいかないしね。ただ、ここって商業中心の街でさ。学校が無いんだよ」


 アニィはこのシーベイ街への移住を考えていたが、パルが言うには学校も必要だという。

様々な店が並び海が近いこのシーベイ街、一見利便性は高いが、意外にも学校は無かったのである。

正確に言えば、この街の商工会会長が自宅の大部屋を教室代わりにしているらしいのだが。


 「…そうだね。子供達が暮らしやすい場所か…」

 《まあまあ、今は後回しにして。旅の方を優先しましょう》

 「…うん」


 プリスが言う通り、今は邪星皇の打倒の方が大事である。

邪星皇の情報は、厄介事引受人協会にある程度渡して来た。協会から街に、改めて発布されるだろう。

スミス兄妹の工房の近くまで来たところで、アニィ達は一旦分かれた。

アニィとプリスは先に宿に戻り、パルとパッフは兄妹が作った鏃を受け取りに工房へ。


 宿の前まで来たところで、アニィとプリスは空を見上げた。僅かに日差しが翳ったように感じたのである。

そして、ヘクティ村でも感じた悪寒がアニィの背に走った。


 空から見下ろす邪悪な視線。


 「……プリス」

 《ええ。荷物、置いてきてください》


 アニィはドアを開け、店主のヤードに荷物を押し付けると、いざとなったら逃げてとだけ言ってまた外に出た。

プリスの背に乗り、街の中心部へと飛んで戻る。

すぐにパルとパッフが追い付いた。矢筒には50本ほど矢が入っている。


 「アニィ、あいつらだね!?」

 「うん…!」

 「グルル…!!」


 その姿は見えない。だが気配が極めて近い。中心街に向かって四人は急いだ。

人々の頭上、僅か1ドラーム(約3m)も無い高度で一度空中に停止。当然人々は驚き、アニィ達を見上げた。

避難を促さなければ―――


 だがこの時、人々の視線にアニィは一瞬ためらってしまった。

何事かと集まる無数の視線…幼少期の記憶が、突如脳裏によみがえる。


 ドラゴンに乗れず、周囲の好奇の視線に晒された瞬間の記憶。

 魔術を使えないことが判明し、同年代の子供達の冷ややかな視線を集めた時の記憶。


 逃げて、と叫ぼうとしてアニィは息を呑んだ。

体が硬直し、喉が引きつる。何が起こったのか、パルにはすぐ判った。

―――フラッシュバック。

何気ない視線がアニィの心の傷を鮮明に抉り出し、その瞬間の不安、恐怖、焦燥、混乱がよみがえったのだ。

苦痛の日々が始まった瞬間のことを、アニィは心の底まで刻み付けてしまっていた。


 《―――アニィ?》


 疑問に思ったプリスが振り向くと、アニィと視線が合う。

プリスと目が合った瞬間、何とか我を取り戻し、アニィは声を絞り出した。


 「にっ…―――にげ、てっ…みんな、にげてっ…!!」


 かすれ気味の、しかし確かな危機を知らせる叫びに、全員が動き出した。

その直後であった―――黒い不気味な影が、中心街に突如落下してきたのは。

ドラゴンに似た体形とサイズ。着地の衝撃で何人かの住民が吹き飛ばされた。

鱗の無い黒くぬるりとした表皮、左右に伸びた顔に並ぶ3対の目。

涎とうめき声を漏らす乱杭歯、なによりも邪悪な視線が、ドラゴンとの決定的な違いを現わしていた。


 『GHHOOOOAAAAA!!!』


 名状しがたい不気味な咆哮。直後、上空に無数の黒い影が出現した。

何体もの邪星獣が、上空から襲い掛かる。住民たちは必死に逃げた。

アニィの警告、そしてある程度邪星獣の存在が認知されていたおかげで、ヘクティ村の住民よりは早く動けたのだ。

だが邪星獣の動きは住人達より早かった。次々に襲い掛かり、強靭な手足で殴り飛ばされ、人々が蹴散らされる。



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