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【6万PV感謝!】ドラゴンLOVER  作者: eXciter
第二章:邪星討つ光-The Crystal savior-
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第二十二話


 巨大な怪物(モンスター)の狩りのあたりから少しずつ竜の目のマークが増え始める、つまり危険度が高くなる。

それぞれの怪物の絵、そして特徴などの特記事項がリストに書かれていた。


 全長半ドラゼン(7.5m前後)の巨大地上鮫ダイノシャークは15。

曰く「海を泳ぐのに飽きて地上に出た」水棲の怪物である。

何を考えてそんな行動に出たのかは理解できないが、生物の進化における重要な転換点らしい。


 5ドラヴァイク(秒速225m)で跳んで首を嚙みちぎりにくる恐怖の殺人ウサギ、ギロチンラビットは26。

この依頼に限り、聖なる手りゅう弾セイント・ダイナマイトなる武器を依頼主から貰う必要がある。

洞窟の奥の聖杯を護っているという噂だ。果たして爆弾一つで倒せるのだろうか。


 サイクロホークから進化した巨大怪鳥、あらゆる物体を切り裂く風を纏うガストホークは34。

飛ぶだけで危険極まる怪物である。当然立ち向かうこと自体が不可能とも言われている。

ヘクティ村のドラゴン乗り程度では、到底狩ることもできないだろう。


 村では聞いたことの無い名前、見たことも無い姿ばかりだった。それが日常的に現れている。

そしてリストの一番上…ドラゴン擬態種という仮の名前があった。

危険度のマークは無い。安全なのではなく、未知数だと書いてあった。

 アニィはプリスと顔を見合わせ、邪星獣であることを確認した。

うなずくプリス。その首肯の意味はパルとパッフ、そしてモフミーヌにも伝わった。


 「あの…それはオススメしませんよ。この依頼を受理して、帰ってきた会員の方は一人もいないんです」


 モフミーヌはおずおずと言う。にもかかわらず、定期依頼リストにあるということは…

協会は世界各地に支部を置いている。すなわち、既に世界各地で邪星獣が目撃されていることを意味する。

恐らくヘクティ村が襲撃される以前から、少しずつ各地の小さな村を破壊してきたのだろう。

 ヘクティ村での彼らの行動から、何かを探している…というより、危険を排除しようとしているように、アニィは感じている。

一方で僻地の村ばかり狙うのは、破壊するのが簡単だからだ。手を付けやすい所から、というわけだ。


 邪星皇には知能がある。邪星獣にはそれが伝わっている。指揮を担当する個体がいることからも明らかだ。

単純に邪星獣の相手をするだけなら、ここの会員の中でも荒事を得意とする者が集まれば、不可能ではなさそうだ。

だが、邪星獣の知能のことを知っているのはプリス、そしてプリスから聞いたアニィ達くらいだ。

知能を持たぬ獣と誤解したままでは、対策をとっても効力は失せていき、いずれ人類は壊滅する。

退治、収入、それに加えて情報の提供という目的が挙がり、アニィとプリスはうなずき合った。


 「受けます。この、怪物退治」


 アニィの返答を聞き、モフミーヌの顔が青くなった。

年若い二人を死地に蹴落とすような物と、彼女にも分っているようだ。

だが、目の前の2人…そしてその相棒のドラゴンの表情も見て、しばし逡巡し、目を泳がせ、ため息をつく。

それを何度か繰り返し、やっと了承した。


 「…………わかりました。では会員証に達成記録保存の魔術押印を押しますので、少々お待ちください」

 「わふっ」


 モフミーヌの返答を聞き、チャウネンが一旦受付テーブルにもどり、スタンプを持って戻ってきた。

受け取ったスタンプを会員証の裏面に押すと、紋章が残った。


 「これがドラゴン擬態種退治依頼の受理の証明となります。

  ……先ほども申し上げた通り、オススメできるものでは無いのですけれど。

  差し支えなければ、事情を伺っても?」


 小さくうなずき、パルが答える。


 「あたしたち、この怪物…邪星獣の親玉を退治しに、旅に出たんです。

  邪星皇っていう、何だかすごいバケモノらしいんですけど」

 「邪星獣…邪星皇…それが本当の名前ですか。聞いたことが無いですね」

 《まあ数千億ネブリスも前にお目覚めしたらしいですから。そりゃ伝わっちゃいませんよね》

 「そうなんです……… か…  かぁッ!?」


 突如聞こえたプリスの声に、モフミーヌは驚愕し、椅子から転げ落ちてしまった。

慌ててパルが助け起こし、再び椅子に座らせる。プリスと呆然とするモフミーヌの視線が合った。

チャウネンは特に慌てず、「わふ?」と首をかしげるだけであった。


 「ど、どら、どらご、ドラゴンが喋ったぁ!?」

 「すいません、お気持ちは分かりますけど、でも落ち着いてください…」


 パニックになりかけるモフミーヌを、アニィがどうにかなだめる。

モフミーヌは何度か深呼吸し、どうにか落ち着いて、アニィたち4人を順番に見比べた。


 「わ…わ…わかりまし…た…? あ、はい、わかりました。

  ではつまり、その邪星皇というのはプリス様がご存じで…」

 《ええ。私はそいつを斃す宿命を持っています》

 「う~~~~~~~ん…なる…ほど…

  わかりました。正式名称への変更は後にするとして…依頼内容を説明させていただいても?」

 《どうぞどうぞ》


 ドラゴンが会話するという異常な状況を半ば無視して、モフミーヌは気を取り直した。


 「依頼主は政権都市オーダム、国家保安維持機構です。つまり国、このフェデルガイア連邦の依頼ですね。

  記載にあります通り、邪星獣退治の危険度は未知数です。

  ですので、報酬は撃破した種類と数、それから新種を発見した時に支払うこととしました」


 続けてモフミーヌが二人の前に出したのは、依頼完了時の詳細な金額表だった。

小型がドライズ貨幣50枚。中型が170枚、大型が300枚。指揮官担当個体が450枚。

新型発見で250枚、発見時点で新型を斃せばその3倍…つまり750枚が口座に振り込まれる。

一頭に付き、現代日本で言うと最高額750万円相当の報酬が手に入るわけだ。その辺の怪物の10~30倍である。


 また、指揮官担当個体を複数斃せば、定期依頼分の報酬が斃した数だけ倍になるという。

大型1体と指揮官担当2体を斃せば、各種類ごとの報酬は合わせて300+450+450で1200枚。斃した指揮官担当が2体なので2倍にして、2400枚になるという計算だ。

すさまじい金額に驚愕し、眼球が飛びださないよう、アニィとパルとパッフは自分の両目を押さえた。

手を放し、もう一度金額表を見直す。やはりすさまじい金額だ。


 「……金額がこれだけ吊り上げられたのは、それだけ依頼が完了出来ていないことの証明でもあります」


 モフミーヌが暗い顔で言う。

依頼リストをよく見ると、対処法も、邪星獣の詳細も書かれていない。

それはつまり、情報を持ち帰った者…生存者が殆どいないことを意味している。

ドラゴンに擬態していること、何種類かのサイズと指揮担当がいること。

それ以外は一切未知なのだ。ヘクティ村に現れた邪星獣も、これらと似たようなものだった。

改めて尋ねるべき情報は全く無い。


 「ドラゴンを伴ってもこの有様です。遺骨や遺品すら返らず、僻地で亡くなったという報告ばかり帰ってきます。

  ヴァン=グァドでは生還された方もいらっしゃるようですが、会話できる状態ではないとか…」

 「それは…集団で向かっても、ですか?」

 「はい。それまでたくさんの怪物(モンスター)狩りに成功された方たちでしたが…

  もう一度伺います。そんな怪物を相手に、ドラゴンを伴っているとはいえ、お二人で本当に大丈夫ですか?」


 不安に満ちたモフミーヌの視線に、アニィ達に代わって答えたのはプリスだった。


 《その邪星獣を斃して来たんですよ、私達。というか主にアニィが》

 「………は?」

 「ちょ、ちょっとプリス…」

 《村に来た分だけですけどね。詳しくはヘクティっていう村の事をテキトーに調べてください》


 アニィは照れてプリスの言葉を否定しようとしたが、プリスは悪びれもせず説明を続けた。


 《邪星皇に近づくには、邪星獣を斃す必要があります。私は知識でしか邪星皇の事を知りませんからね。

  目的、姿、知能程度や意思、自我の有無。対処するには小さな情報でも必要です》

 「そうそう。ほら、指揮官担当がいるのは分かってるわけでしょ? この貴重な情報」


 パルが金額表を差す。


 「こいつら邪星皇の手下なんだけど、言語らしい言語なしでの指揮をまかせられてるわけ。

  で、村に出た奴らの中で、指揮担当が他の個体の生命維持も兼ねていた。いつもそうなのかは知らないけど」

 「な、なるほど…そう考えると、確かに少なくとも『指揮をさせる知能』はありますね」

 「そういうこと。もし高い知能があるなら、あっちがこっちの闘い方を憶える可能性がある」

 《邪星獣からしてそうなんです。それを紐解くためにも、我々はその依頼を受ける必要があるわけです。

  と、あとは生活費のための定期収入》


 モフミーヌは2人の説明を聞き、なるほどなるほどと依頼リストを見ながらうなずいた。

ごくわずかながら、邪星獣(『ドラゴン擬態種』から書き直した)を斃せる人間とドラゴンがいる。

彼女達の発言が事実であるとすれば…だが、それでもいたずらに会員とドラゴンの命を捨てるだけのことは防げるかも知れない。

ヘクティ村とやらのことは後で実態調査するとして、依頼内容について精査する必要が出てきた。


 「…よし、判りました。ではまず、お二人にこの定期依頼をお願いします。

  その後の成果から、この定期依頼の内容を少しずつ改訂していきます」

 「改訂内容はわたし達につたわるんですか?」


 アニィが尋ねると、モフミーヌは裏側に押した魔術印を示しながら説明する。


 「はい。これも先ほどの、魔術工学博士の方の魔術で。

  当協会の各支部には質量転移魔術ゲートという物がありまして、支部間で物資などを移送できます。

  その応用で、改訂お知らせの音声もこのプレートに転送されます。この依頼の押印がゲートの役割を持っています。

  規約の閲覧は、各地の協会支部でいつでも可能です」

 「そうなんですか…」


 つまり、手紙さえも必要が無いわけだ。天才もいるものだとアニィは感心した。

その間もモフミーヌはパルとプリスに邪星獣の詳細を聞きつつ、リストにメモを書き込んでいる。

書き終わったところでリストを見直し、改めて4人に尋ねた。


 「内容の改訂については、協会での精査が必要になりますので、情報入手から少し遅れる場合もございます。

  依頼に関しての説明は以上となりますが、これでよろしいですか?」


 4人ともにうなずく。これによって協会との間に依頼受理の契約が成立した。


 「では、ドラゴン擬態種改め邪星獣の退治。よろしくお願いいたします」

 「は、はい…!」


 緊張しながらアニィは了承する。二人が首から下げた会員証の裏で、魔術の印が輝いた。

この時点で会員証にも完全に魔術が認識され、邪星獣の撃破による報酬が入ることになったわけである。

改めてアニィとパルは会員証に触れ、それを確認した。

そこでモフミーヌが尋ねた。


 「それで、皆さまはこれからどうなさるんですか?」

 「これから宿で荷物をまとめて、すぐヴァン=グァドに行きます。

  アニィに必要な武器を作らないといけないし」


 答えたパルの手には、先ほどまで買い集めた荷物が抱えられていた。

そこでアニィはふと思い出し、荷物の中から鉛筆と小さめの画用紙を一枚取り出した。

座り直し、アニィは正面からモフミーヌを見る。


 「どうかなさいましたか、アニィ様?」

 「……似顔絵、描かせてもらえませんか。

  村に残して来た子達に、この街のこと、絵手紙で送りたいので…」

 「えっ……」



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