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【6万PV感謝!】ドラゴンLOVER  作者: eXciter
第二章:邪星討つ光-The Crystal savior-
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第十三話


 フェデルガイア連邦に属する大陸の一つ、ランドコースト大陸上空を、北方へとアニィ達は飛んでいた。

ヘクティ村は大陸の外れ、隔絶された山奥にある。既に村ははるか後方だ。


 朱色の太陽の輝きが空を満たし、海と大地を照らしていた。

ドラゴンの背に乗って天高く飛びながら、アニィは初めて目にする光景に見とれた。

狭苦しい村にへばりつくような生活の中では、到底見られなかった光景だ。

センティと子供達が縫ってくれた、厚手のマントが風にたなびく。


 そして目の前には、夕日に照らされて美しく輝くドラゴンがいる。

邪悪な怪物に立ち向かい、悪意に満ちた村人を蹴散らす力をくれた存在。

白いドラゴン、プリス。

そのプリスが軽く首を上げ、アニィ達の方を向く。


 《よし。それじゃあ、今回はドラゴンとドラゴンラヴァーについて説明しましょう。

  まずはドラゴン…それは、星が自らを守るために生み出した超生物です。

  あらゆる生物の系譜に一切属さない…そうですね、人類で言うと私設の騎士団みたいなものですか》


 空中を飛びながら、プリスが講義を始める。アニィ、パル、パッフはそれを真剣に聞いた。

最初に飛び出た言葉の意味を飲み込み切れず、アニィが手を上げて質問する。


 「超生物…は知ってたけど。星が生み出したって、どういうこと?」

 《そのままです。私達が住んでいるこの星が、自らの命の危機を察知した時に生み出すんです》

 「…その、星っていうのがこう、ピンと来ないっていうか…」


 アニィ達が村にいた頃、センティの学校で『星』の概念を習ってはいる。

しかし自身の住む場所がその一部であるという説明では、スケールの大きさに理解が追い付かない。


 《簡単に言えば、大陸、海、空および空気、それら全部ひとまとめにしたものが一つの星です。

  で、邪星皇はそれを全部滅ぼそうとしているわけです》

 「あ、うん。何となくわかった…とすると、星って生きているの?」

 《正確にはちょいと違うんですがが、そこら辺はもう少し後で説明します。

  ドラゴンは星を守る超生物ですが、万能というわけではありません。

  村のドラゴン達を見たでしょう。彼らはパッフほどの能力を発揮できなかった》


 アニィとパル、パッフは当時の状況を思い出す。

パッフが水の弾丸を吐き、プリスは翼から光を発するなどして怪物を斃した。

しかし他のドラゴンは、全てが己の肉体でのみ闘っていた。

プリスとパッフが見せたのが本来の能力なら、村のドラゴン達は能力を制限された状態ということになる。


 《真の能力を発揮するのに、ドラゴンの半身となる人間…『竜愛づる者(ドラゴンラヴァー)』が必要になるわけです》

 「なるほどぉ。……ん? じゃ、あたしはパッフの『ドラゴンラヴァー』ってこと?」


 プリスの説明でパルは気づいた。

パッフが既に真の能力とやらを発揮しているのならば、自分も『ドラゴンラヴァー』に当てはまるのではないか…

プリスは首をかしげながら、パルとパッフを見比べて尋ねた。


 《そうですよ。え、まさか気づかなかったんですか?》

 「そもそも知らないよ! 学校でも聞いたことなかったもん。でもなるほどなあ、何か判る気がする。

  あたし、パッフとは会った時から仲が良かったもんね」

 「クルル!」


 パルの回想にパッフもうなずいた。が、プリスはといえばしかめっ面気味だ。


 《ドラゴンラヴァーのことが現在まで伝わってなかったんですねえ。

  で、ドラゴンラヴァーに選ばれる人間ってのはですね、素質があるんですが。見分けるポイントがありまして》

 「ポイント?」

 《魔術が使えません》


 プリスの説明に、アニィとパルは顔を見合わせた。

アニィが魔術を使えなかったのは、つまり『ドラゴンラヴァー』の素質を持っていたから、ということのようだ。

ならば、魔術が今使えるのは何なのか…アニィが尋ねようとすると、プリスがそれを先読みして話を続けた。


 《正確には、あくまで『あるけど使えない』状態だったんです》

 「どうして? 村の人たちは自由に使えたのに…」


 首をかしげるアニィに、プリスは説明する。


 《『ドラゴンラヴァー』の素質を持つ人間は、いずれも強大な魔力を持っています。

  しかし人間の体は魔力の出口として小さすぎます。目詰まりを起こす、と言えば判るでしょう。

  ドラゴンと二身一体の関係となることで、お互い肩代わりする形で魔力の出口が広がります》

 「わたしが魔術を使えなかったのって、そういう…つまり『目詰まり』を起こしてたんだ…」

 《逆に『ドラゴンラヴァー』でもないのに魔術が出せるってことは、人間の体ごときで出せる程度の魔力しか無いということです》


 得心の行ったアニィに対し、プリスがうなずく。


 《あなたの母が言ってた通り、あなたは私がいないと魔術が使えなかったんですよ。魔力が強過ぎるから。

  逆に彼らの場合は魔力が弱すぎて、外界の影響を受けてすぐ変質するんです。

  火とか風とか水みたいな、その辺にある物…まあ元素とでもいえばいいですか、そんなのにね。

  ドラゴンラヴァーはそんな影響をほとんど受けない、独自の魔術を使えるんです》


 村ではゲイスとジャスタが特に優れた魔術を使うと言われていた。

だが実際は、ドラゴンと共に闘いうる存在が既におり、それに彼らは気づかなかったのだ。

しかも彼ら自身は素質を持っているどころか、アニィ達と比べて惰弱も良いところだ、とプリスは言う。

人類など所詮非力で脆弱な存在であると、改めて考えさせられる話である。


 「ゲイスの魔術がアニィに効かなかったのもそういうことか。

  ンじゃあたしが、パッフと会った7つの頃には身体強化の魔術が使えてたのは…」

 「クルル?」

 《そりゃあなた、『ドラゴンラヴァー』になったのは会ったすぐ後ってことでしょうよ》


 プリスはパルとパッフの疑問にも答える。

パルはしばし考え込み、当時の事を思い出して納得したようだ。


 「言われてみればそうだ。会って1マブリス(約1カ月)くらいで使えてたよね」

 「クルル!」

 《わかってもらえたようで。ンで、強大な魔力の副次効果で、体も人間とは思えないほど頑丈になるんです》


 頑丈と聞いてアニィが思い出したのは、最初に怪物と遭遇した時のことだ。

超高速の頭突きを真正面から受けたが、骨折どころか痣一つできていなかった。

小屋に突っ込んでも激突の痛みがあっただけだ。

早朝、ドラゴンに乗ろうとしてゲイスに蹴られた時…それ以前に子供の頃から、殴られ蹴られても大した痛みは無かった。

つまるところ、子供の頃にはその素質が芽生えていたということだろう。

アニィが思い出している最中も、プリスの説明は続いた。


 《そしてそういう素質のある人間を観察し、ドラゴンが『ドラゴンラヴァー』に選ぶわけです。

  人格、内在する魔力、技能、ドラゴンへの畏敬の念。そして自身の本当の望みを託す信頼と誠実さ。

  そう言った基準で、この人間はふさわしいと判断するわけです》

 「人間の方からお願いすることはできないの? ドラゴンラヴァーにしてくれ、って」


 疑問を呈したアニィに対し、答えたプリスの言い方は非常にドライだった。


 《人間ごときにそんな資格あると思います?》


 その一言が、ある意味でプリスの人格あるいは()格、そしてドラゴンと人間の本当の関係を現わしていた。

パッフのように人間と友達として接する者は例外で、本来ならプリスや村のドラゴン達のように、簡単に人間を見捨てるのだ。

ドラゴンにとっての人間など、人間にとっての地を這う虫と同程度の存在でしかないのだろう。


 「……『ドラゴンラヴァー』になれなかった人間は、どうなるの?」


 アニィは恐る恐る尋ねた。プリスの回答は、やはり冷酷だった。


 《いえ、知りません。我々ドラゴンの知るところではありません》

 「そう…そうだよね」


 種族の違いとは、えてしてこのような物である。

自分からなろうとしてなれるものではない。ドラゴンに選ばれてこそのドラゴンラヴァーである、という。

もしプリスに選ばれていなかったら、村で虐められ続けていたか、ネイヴァ姉妹と村を出ても役に立てずいじけていたか、どちらかだろう…

アニィは己の幸運に感謝した。


 「じゃ、ドラゴンと『ドラゴンラヴァー』のことが大体わかったところで。

  そろそろ港町が見えてきたから、一回あそこで降りようよ」

 「クルル!」


 横から掛けられたパルとパッフの声に、アニィはハッと我に帰った。


 《それはいいですけど、何するんです? 我々は邪星皇を斃さにゃならんのですよ》

 「そのための準備だよ、色んな意味で。まず降りよう」


 パッフが少しずつ降下するのに合わせ、プリスも高度を下げていった。

荒涼とした大地を抜けた先に、港町の巨大な門があった。

怪物(モンスター)や野良ドラゴンの侵入を防ぐためのものだ。高さにして2ドラゼン(約30メートル)はあろうか。

当然、屈強な門番の男たちが巨体のドラゴンと共に門を守っている。



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