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5月12日 会話

 スマホ越しの会話は、いつもより大きく聞こえた。


 中村「へぇー、そんな感じなんだ」

 俺 「そうなんですよ」

 中村「まぁ、これからじゃない?」


 何がこれからかよくわからない。


 俺 「他は、どんな感じ?」

 中村「まぁ、どこもバタバタしてるよ」


 ふと、檜のデスクを見るとそこには、書類やペンが散らかり、アイツの性格を物語っていた。


 俺 「でも、今市のところはやっぱりいいよな?」

 中村「あそこは人が揃ってるから。比較する必要はないよ」


 いつもなら、ここでスマホを使うことはない。この部屋から出て、スマホで電話をする。今日は、早く終わったこともあり薄暗いデスクの前に座り電話をしていたのだった。


 俺 「比較はしてないですけど、負けるのは嫌じゃないですか?」

 中村「別に負けてるわけじゃないでしょ」


 静かな部屋の中で俺の声だけが響きわたっている。


 俺 「アイツは営業成績もトップじゃないですかぁ」

 中村「今市くんは、先輩のおかげもあるしね」


 俺と今市では、営業の取引先が少し異なることが多かった。俺は新規開拓で今市は引き継ぎ先が多いというのはあった。


 俺 「それでもアイツはスゴイよ」

 中村「まぁね、イケイケではあるよね」


 気がつけば、パソコンの画面にはたくさんの通知が来ていることに気がついた。全部で10件ほどだろうか。今月の会議のメッセージと、返信を待つメールが並んでいた。


 俺 「今、俺たちよりヤバいところはあるんですか?」

 中村「四課よりヤバいところはないかな」

 俺 「ないのかよ」

 中村「まぁ、人が辞めたばっかりだしね」

 俺 「誰かさんのせいで辞めたんですけどね」


 俺たちは、笑い合った。スマホの声に対して応じながら、素早くタイピングをしていく。


 中村「今日は、いつまでかかるの?」

 俺 「きてるメッセージ返したら終わりますよ」

 中村「早く終わらせろよ」


 中村は、俺たちが残業をしていると厳しく追求される。このメールはどうでもいいな。「了解しました」か「急ぎ対応します」でいいかな?時折スマホの画面を覗き込みながら対応していく。


 俺 「早く来年なってほしいな」

 中村「まだ、始まったばかりじゃないか」

 俺 「いやいや、もう2ヶ月ですよ」

 中村「あと、10ヶ月あるんだから、頑張れよ」


 まだ、10ヶ月かぁ。そう思うだけで憂鬱な気持ちになってしまったのだ。

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