3月7日 理由
昨日のことが脳裏から離れなかった。今日は、先週プレゼンテーションの資料作成のため、振替出勤を行っていた関係で明日まで休みだった。しかし、仕事を辞めることで頭がいっぱいになっていた。
ー3月6日ー
30分が経ったが、中村は電話を切る様子はなかった。
中村「で、辞める理由はなんなん?」
私 「だから、なんもないですって」
中村「ホントー?」
中村は、必死に私が辞める理由を探していた。
私 「嘘つかないですよ」
中村「プレゼン気にしてるとか?」
一昨日行われたプレゼンテーションが理由ではないかと考えられていた。
私 「それは、ないですよ」
中村「絶対、気にしてるでしょ?」
私 「気にしてないですよ」
中村「じゃあ、なんで辞めるの?」
私 「だから、燃え尽きたって言ってるじゃないですか」
燃え尽きたという理由では、納得してもらえない。
中村「その理由では納得できないな」
私 「もうー」
中村「私が納得行くまでは、辞められないよ」
私 「いやいや、勝手に辞めますから」
中村「なんでや」
中村は、優しくて厳しい人。誰よりも私のしんどさを理解してくれていた。
私 「社長に電話していいですかぁ?」
中村「とりあえず、辞める理由だけちゃんと教えてや」
私 「いや、ホントにないんですって」
中村「ホント?」
私 「ホントですよ。あったら、言いますよ」
どこか、辞めたいという一時の感情なのかもしれないと思うこともあった。
中村「だから、言ってよ」
私 「ないですよ。もう、社長に電話しますよ」
中村は、納得するまで電話を切ってくれなさそうだった。
中村「社長に言うのはいいけど、言ってもとめられるだけやで」
私 「まぁ、適当になんとかしますよ」
中村「いや、社長は、ちゃんとした理由ないと、無理やと思うで」
私 「それは、そうですけど。とりあえず、もう辞めるって言って諦めてもらいます」
中村「そんなんで、おれてくれる人じゃないけどなぁ」
中村は、最後まで、粘り強く私と向き合ってくれた。
私 「しょうがないですね」
中村「で、辞める理由は何にするの?」
私 「どうしましょうかね?」
中村「どうするの?」
私 「嘘ついてもしょうがないですし、そのまま言いますよ」
中村「そのまま言っても返されるだけやから、別の理由考えや」
私 「他の理由って言ってもなぁ」
中村「なんか理由を探してからかけや」
私 「うーん。なんとかします」
中村に電話をかけてから、1時間が経過していた。




