3月6日 辞める
昨日のプレゼンテーションが上手くいかなかった俺は、決心した。会社を辞めようと‥‥。辞める理由は、特に、なかったが、このタイミングを逃したら、またタイミングを待つことになる。2年目頃から、ずっとやめようと思ってたので、抵抗はなかった。ただ、お世話になった先輩方には、申し訳なかった。
今日の仕事終わりに、会社の先輩であった中村、深山に電話しようとしていた。ただ、いざ電話すると、手が思い通り動かない。だが、必死に勇気をふりしぼり、スマホからかけた。忙しくて出ないかと思いきや、意外にもすぐに電話にでてくれた。
中村「お疲れー」
私 「お疲れ様です。今、時間いいですか?」
中村「えぇー。ないって言ったら?」
中村さんは、いつもの冗談で話かけてくれた。
私 「きります笑」
中村「きるなよ」
私 「ハハハ」
中村「今日も疲れるわ」
私 「お疲れ様です。忙しい中申し訳ないんですけど‥‥」
中村「うん、どうした?」
中村さんの、声がワントーン低くなる。
私 「ホント申し訳ないんですけど‥‥」
中村「‥‥」
私 「やめようと思ってまして」
中村「ん?」
私 「仕事やめようと思います」
中村「そうなん?」
電話ごしだが、動揺しているのがわかった。
私 「はい」
中村「次の仕事決まってるの?」
私 「いや、全く」
中村「決まってないんやったら、やめて何するの?」
何が原因で、私が辞めようとしているのか考えているように感じた。
私 「決まってないんで、ちょっと、旅でもしようかなって思います」
中村「旅出るの?」
私 「はい」
中村「やめるんやったら、次決まってからしいや」
私 「いやー、もういいかなって」
中村「3月でやめるの?」
私 「いや、もう今日でやめようかと」
中村「えっ?今日?」
私 「はい。本当に申し訳ないんですけど」
お世話になった先輩方のことを考えると、胸がいたくなった。
中村「今日でやめるのは、さすがに早いやろ。今、やめても後悔するよ」
私 「そうかもしれないですね」
中村「やめる理由は?」
私 「うーん。特にないですね」
中村「上司?」
私 「それはないですよ。イラッとはしますけど」
中村「ハハハ。じゃあ、なんでやめるん?」
私 「燃え尽きたというか、疲れたというか」
私たちは、早くも30分喋っていた。




